※本旅行記は本旅行記は2023年9月に訪問したものを2024年2月に公開したものです。
■2023.09 東京国際・天草・熊本の旅行後
今回の旅では、久々に天草へ行きました。
天草は空港造成とともに就航した天草エアラインが飛んでいます。たった一機で頑張っているということで最近はメディア露出も増えてきていて、コア〜なファンが付いていることでも知られています。
今回は、この飛行機を写すために、バタバタ行程になりました。そこで、この振り回された天草エアラインのダイヤを少し考察してみます。
■意外と天草に人を呼びにくいダイヤ
天草エアラインは、天草を拠点に、
朝 天草→福岡→天草
午前 天草→熊本→大阪国際(伊丹)
昼 大阪国際→熊本→天草
夕方 天草→福岡→天草
夜 天草→福岡→天草
と回るダイヤが組まれています。
このダイヤは、天草の人からすると、福岡にも熊本にも伊丹にも出やすい設定です(伊丹、熊本からの帰りは少し早い時間帯)。そして、朝晩の福岡線は、福岡から医者を呼ぶためのダイヤにもなっています。
一方で、10時頃〜15時頃に天草に飛行機が戻ってこないので、本土から天草観光に来るには使いづらいものになっています。天草に人を呼ぶという点ではあまり良いダイヤとは言えません。
特に熊本線は、東京や大阪から乗り継いで行こうとすると、行きは天草に夕方着、帰りは朝発なので、全く使えねえ〜〜ダイヤです。
福岡乗り継ぎなら羽田朝一発・夜着でまだ行きやすいですが、そちらはそちらで朝の乗り継ぎはギリギリです。
朝一の福岡→天草便は、福岡08:50発。乗り継ぎできる便として羽田発3便、小牧発1便、伊丹発2便、宮崎発1便ありますが、接続時間は30分〜15分ほどしかなく、遅延したら即アウトです。しかも羽田は6時台前半、小牧や伊丹は7時頃の出発で、利用は限られてきます。
この乗り継ぎを逃すと、次に天草入りできるのは熊本線で、なんとおやつの時刻です。こんな時刻では天草を半日すら楽しむことができません。
※東京から天草にアイドルが来る際に、福岡での乗り継ぎが間に合わず、福岡から陸路になって、天草到着が大幅に遅れたみたいな番組がちょうどやっていたぐらいです。
全国各地から天草に利用者を集めたいなら、朝一の福岡便をもう一時間程度は遅くするとか、午前中に天草2往復(福岡2でも、福岡1+熊本1でも)してほしいところです。
しかし、朝一の福岡便を遅くすると、機材運用の効率が悪くなりますし、医者利用の多い福岡から天草への到着が遅くなってしまうので、非現実的と言えます。
■熊本線を2往復化するハードルが高すぎる
どこの空港も、双方向の流動を考えると、最低ラインで朝晩に2往復確保、可能なら朝昼晩の三往復するのが理想的です(能登が良い例)。天草-熊本線も2往復はしてほしいところです。
しかし、天草の場合、熊本便の2往復化には大きな壁が立ちはだかります。
多くの離島便(北海道、新潟、東京、島根、福岡、長崎、鹿児島、沖縄)は、県庁所在地との間を行き来する流動があるため、それなりの利用があります。
一方の天草は、九州本土と繋がった島々。本土の熊本市内から天草本渡まではバスで二時間半程度(天草松島とかに行くならより短時間)で行けます。船便ではなく陸路で、かつそのルートもそこまで不便ではありません。
そして、熊本空港から天草飛行場まではたった25分ですが、熊本市内-熊本空港間は小一時間かかります。陸路が便利なのと合わせて、熊本空港と天草を飛行機で行き来する需要は、通常の離島便に比べると著しく少ないと言わざるを得ません。
単独利用をほとんど期待できないので、天草-熊本線は乗り継ぎで利用維持を図る位しか利用を維持する方法がありません(だからこそ、伊丹線は天草からの直行ではなく熊本経由にしています)。もっともっーとくまもっとと乗り継ぎを意識すべきです。
2000年に運航を始めた当初、天草飛行場には福岡線と熊本線しかありませんでした。それで上手くいかず、熊本経由で松山線、神戸線を経て伊丹線が開設されています。伊丹路線はドル箱+知名度獲得に有効な路線なので、そう簡単に止めるわけにもいかないでしょう。悩ましいところです。
仮に伊丹就航にこだわらず、天草→熊本のあと天草に戻るダイヤとし、夕方にも熊本線をもう1往復した場合、
朝 天草0740→0820福岡0850→0925天草
午前 天草0955→1015熊本1045*→1110*天草
昼 天草→福岡→天草+近隣路線あと一往復
夕方 天草1615*→1635*熊本1705*→1730*天草
夜 天草1800→1840福岡1910→1945天草
とできます。
この場合、熊本発は10:45頃発を設定できます。このダイヤなら、朝一の福岡線と異なり、多くの関東人が利用しやすい8時台羽田発から乗り継ぎできますし、一日二〜三便の成田発や小牧発、中部発は朝便、伊丹発からも乗り継ぎで午前中の天草入りが可能になります。入国審査にどのくらい時間がかかるか分かりませんが、韓国仁川からの乗り継ぎもダイヤ上は可能です。
早く着きたきゃ福岡朝一便、ゆっくりだけど午前に着きたい需要は熊本経由で天草へ行けるようになります。
復路も、夕方に天草-熊本往復、夜天草-福岡往復なら、比較的ゆったりなら熊本経由、ギリギリまで天草滞在したいなら福岡経由という選択が可能になります。
2往復にする場合、午前と夕方に運行するのがミソで、朝10時台、夕方17時台の偏りない運航なら、今ダイヤが偏っているせいで利用しづらい天草-那覇間の利用も確保できます。
熊本線の生き残り策は、この乗り継ぎがポイントなのですが、実はよくよく考えてみると、これ、別に熊本線にこだわらなくても、福岡線でも実現が可能です。福岡線なら単区間利用の需要もそれなりにありますし、福岡で乗り継げる路線数が格段に違います。
天草-熊本間の単区間利用は一日一往復分も需要を期待できないので、熊本便を2往復にするぐらいなら、福岡便を4往復にすれば良いだけじゃんという意見も出てきてしまうでしょう。
熊本線2往復化のハードルはかなり高いと言わざるを得ません。
■天草-熊本線こそが乗り継ぎ仕様になった熊本空港を活かすポイント
そこで活きてくるのが、今回見学した熊本空港との連携です。
比率は低いものの、熊本空港の運営を委託された熊本国際空港は天草エアラインに出資しています。何よりAMXは熊本県出資の航空会社。忖度で熊本線を充実させるべきとでも言えるでしょうか。
ただ、単なる忖度ではなく、天草-熊本線の利用を増やすカギが熊本空港にあります。
今回見学した熊本空港の新ターミナルは、保安検査後エリアの店舗を充実させました。これ、地元民には買い物ができないとかなり不評らしく、完全に乗り継ぎ空港仕様の店舗配置です。
しかし、福岡や長崎、鹿児島と異なり、熊本には乗り継ぎを期待できる離島便がほぼありません。熊本で乗り継いで行くとこなんて、天草くらいしかないわけです。熊本から新たに設定できるとすれば、せいぜい大分県央くらいでしょうか。あとは、新千歳-熊本や仙台-熊本と熊本-那覇で乗り継ぎを設定するくらいしか乗り継ぎ拡大は難しいです。
熊本空港の乗り継ぎ利用を増やす策として、天草-熊本線は結構重要な立ち位置になってきます。
AMXは熊本から先の路線(松山、神戸、伊丹)にこだわっていますが、今運航している熊本-伊丹間は、AMX便がなくても、ANAや日本航空(JAL)でも行けます。マイラーは、伊丹-熊本-天草を通しでANAかJAL便名で購入するでしょうから、わざわざ伊丹に自社便を差し出す絶対的な必要性はないでしょう。
AMXの利用維持のため、JALやANAが協力し、AMX便に両者のコードシェアをしています。それができるなら、熊本から先、ANA便やJAL便の羽田、中部、伊丹、那覇へ乗り継ぎしやすいダイヤや運賃を設定するなどで協力する方法を取れないんでしょうか。(この辺は、ANAやJALより、フジドリームエアラインズ(FDA)やスカイマーク(SKY)の方が積極的ですが)
復路便が乗り継げないからという理由もありますが、現状は天草から那覇便へのツアーなどはほぼ設定されていません。乗り継ぎしやすいダイヤ・運賃になれば、そういった利用も喚起しやすくなります。
JALやANAにあまりメリットがないですし、卸価格が高いでしょうから実現は難しいのでしょうが、AMXが独自に安めの通し運賃などを設定する方法などもあり得ます。
似たような会社であるオリエンタルエアブリッジの最近の動きを見ていると、離島だけで収めずに、様々な本土就航先に就航した方が採算はとりやすいのかもしれませんが、、、。熊本-伊丹線を自社便運航にこだわらないといけないのかは疑問なところです。
なお、伊丹便をなくして天草-熊本線を朝夕2往復にした場合、福岡-天草線が3往復のままなら昼間に1時間50分程度時間が余ります。福岡便をもう1往復増やしても良いですし、天草は長崎や鹿児島とも流動があるので、利用がどれだけ確保できるか分かりませんが、長崎線や鹿児島線を就航するのも一つの手かもしれません。(長崎は世界遺産でも天草と繋がりがありますから、周遊みたいな提案もしやすいですね。)
※伊丹就航にこだわるなら、少し天草の運用時間拡大が必要になるものの、昼に天草-伊丹の直行便就航という方法もとれます。その場合、朝福岡往復→午前熊本往復→昼伊丹往復→夕方熊本往復→夜福岡往復といった回りが可能です。でも、これだと福岡線が2往復しかなくなってしまうので、朝福岡往復→午前熊本往復→昼伊丹往復→夕方福岡往復→夜福岡往復が妥当でしょう。
天草- 熊本線の2往復化はやはりハードルが高そうです。
■実はハブアンドスポークの相性抜群で乗り継ぎ設定しやすい熊本
あまり気付かれてはいませんが、実は、熊本は乗り継ぎを非常に設定しやすい空港です。
熊本就航路線は、各社ともにそれなりに需要があると踏んでいるのか、成田線も羽田線も中部線も名古屋線も伊丹線も、2往復なら朝晩、3往復以上なら朝昼晩運航で設定されています。那覇線も1往復ながら11時頃那覇行、17時頃熊本着で、時間帯の偏りがありません。他の空港だと2往復あるけど午後に偏っているみたいな所が多く、こういう朝晩運航がきっちりしている空港は意外と無いです。(静岡線だけ偏りあり)
そんな空港なので、天草-熊本線の朝便が10時頃、夕方便が17時頃に設定できるなら、これらの便へ繋げることが容易になります。熊本空港はハブアンドスポークの相性が抜群の空港と言えます。本土各路線が今のダイヤのままなら、熊本での乗り継ぎ先として、羽田や伊丹だけでなく、成田、名古屋、中部はもちろん、那覇(天草からの需要のみ)も活用できるようになります。
既存路線に加えて、この乗り継ぎを意識したダイヤで、静岡の時間ずらしや、FDAと相性の良い神戸、JJPやPeach Aviationが期待できそうな関空、どれだけ需要があるかは分かりませんが新千歳や仙台あたりの路線開設に繋げられると面白いですね。
ちなみに、この考え方は、スカイマークが鹿児島乗り継ぎの奄美便で実践しています。鹿児島-奄美線を朝晩往復させ、そこに、羽田、中部、神戸からの便を接続させて人を集めています。熊本にはSKYは就航していないので、熊本人にはこの発想は難しいのかもしれませんが、、、。
※熊本は、半導体繋がりでの流動増に期待して、新千歳-熊本線就航を目指していますが、新千歳-九州間は福岡線が便数は充実しています。しかし、新千歳ベースでの運航なので、九州側からの行き来はあまり便利ではありません。(この冬にやっと福岡朝発、福岡夜着が1往復できたばかり)
熊本も、仮に新千歳線が出来てもどうせ新千歳ベースでの一往復でしょうから、昼便設定となって福岡との競争になってしまいます。
熊本が福岡に負けない方法を考えるなら、朝熊本発、夜熊本着とするのがベスト。機材の送り込みが難しいですが、新千歳線が那覇線のような時間帯の運航なら、天草-熊本線が2往復化されていると乗り継ぎ利用しやすくなります。
■熊本線2往復の方が伊丹線より稼げる?
伊丹乗り入れを諦めて天草-熊本線を2往復化するのは、運賃収入で見ても、より稼げる可能性もあります。
熊本-伊丹線は片道20,400円。天草-福岡線は14,500円、天草-熊本線は8,600円です。熊本-伊丹線がなくなっても、福岡1往復と熊本1往復を足せれば、伊丹線より1割少ない搭乗率でも熊本-伊丹線の売上を達成できます。
離着陸が増えるので、人件費や燃料代などが上がり、耐用年数も減り、支出が増えますから、そう単純計算はできるものではないですが、、、。
また、SKYが長崎や奄美、下地島で扱っているような、乗り継ぎ運賃を設定できると、面白いですね。
燃料費などもあり、収支はそう単純に計算はできませんが、例えば熊本線(区間8,600円)が現在搭乗率50%(20人)だとして考えてみます。
乗り継ぎ運賃として5,000円を設定し、利用が25%(10人)増やせれば50,000円売上を増やせます。元々の利用者のうちの半数が乗り継ぎ運賃に切り替えたとしても、減るのは36,000円だけなので、トータルの売上は上がります。
なんとか熊本-天草線を利用しやすいダイヤや運賃設定をすることで、熊本空港をハブにした天草への乗り継ぎ客が増えてほしいものです。
かなり勝手な意見で妄想全開でしたが、、、。
乗り継ぎ仕様の店舗配置になってしまった熊本空港に感化され、撮影のためにAMXのダイヤが不便すぎると感じたことで、なんだか妄想モードに入ってしまいました。行きづらい天草と活かしづらい熊本(だから活きづらいと謎の題名にしてみました)といった感じでしょうか。
せっかくの実質県営エアライン。もっと天草に人を呼べるダイヤや乗り継ぎ運賃を考えてもらいたいと思いながら、今回の旅を〆たいと思います。
あと、乗り継ぎ需要の多い空港は、熊本の店舗展開を見習ってくださいね〜〜〜。