※本旅行記は2023年11月に訪問したものを2024年3月に公開したものです。
■2023.11 東京国際・熊本・大分県央・福岡の旅行後
今回の旅では、福岡空港を利用しました。
福岡では、ここのところ門限が話題に上っています。騒音被害が少なそうな福岡空港(奈多地区)でも厳しい門限があったので、今回は空港の門限を軽〜く考えてみます。
■福岡空港の門限は何時かご存知ですか?
2023年2月、東京国際(羽田)発福岡行の日本航空(JAL)331便が、22時を過ぎたため、福岡空港上空で着陸許可が下りず、引き返して関西国際空港にダイバート。その後羽田まで戻る事態が発生しました。同日同時間帯に福岡周辺を飛んでいた他の航空便が着陸出来たことや、近くの北九州空港に下りなかったことから、大きな話題になりました。
さらに、2023年9月には、福岡で着陸をやり直したセブパシフィック航空(CEB)が燃料ないからとグルグルしての福岡着陸を諦めて北九州にダイバート。北九州で給油等に時間がかかった結果22時を過ぎたため、福岡へ再運航できず、北九州で客を降ろせないまま深夜にマニラへ戻るという事象が発生。酷い対応だと大きく報じられました。
いずれも、福岡空港の門限のせいとされ、2023年になってから急にクローズアップされ始めました。
では、ここでちょっとしたクイズです。
そんなダイバートの原因になった福岡空港の門限。門限の根拠となる福岡空港の運用時間は何時〜何時か知っていますか?
■福岡空港は実は24時間空港
今回の旅行記3日目にも体験したように朝は7時から。そして夜は22時までですね。と言いたい所なのですが、実は福岡空港の運用時間は7時〜22時ではありません。
福岡空港の運用時間は、0時〜24時=24時間なんです。
24時間運用であるものの、騒音防止などの観点から、旅客便の運航時間を原則7時〜22時に制限。22時〜7時の離着陸は、天候不良などの理由での遅延時は認めているのですが、航空会社原因の理由の時は認めないことにしている、というちょっと特殊な運用をしています。
前者のJALは、整備理由で遅延したため着陸が許可されませんでした。
通常はこのような時は飛ぶ前に諦めて欠航にするのが鉄則なのですが、当該便は羽田からぶっ飛ばせばギリギリ間に合う時刻だったため、羽田を離陸してしまいます。そして、22時前に福岡上空まで飛んできていたのですが、着陸機の順番待ちでグルグルしている間に22時を越えてしまい、福岡に着陸できなくなったものでした。
かなり珍しい事例ではあります。
この福岡空港の門限設定は、実はかなり特殊な事例です。
例えば、世界的にもバカにされている成田国際空港の運用時間は、そもそもの設定が6時〜24時ときっちり決まっています。つまり、元々0時〜6時は原則航空便を飛ばせない時間です。
で、離着陸制限(カーフュー)の弾力的運用が24時半まで可能になっており、最大でその時刻までは離着陸を特別に許すという運用になっています。離着陸禁止時間帯に特別に離着陸を認めるという設定です。
■成田の公式サイトの解説→https://www.naa.jp/jp/csr/curfew/
こういった空港は、国内でいくつもあります。これらの空港では、30分なり1時間なり、特別に離着陸を認める時間帯があります。
この場合、普段は運用終了時刻までに離着陸しなければならないので、元々のダイヤを運用終了時刻の30分くらい前までに設定して余裕を持たせるのが普通です。それでも運用時間に間に合わない時に、特別に一定時刻までなら離着陸をOKとすることがあるというわけです。
一方、カーフューの弾力的運用がほぼない空港もあります。
代表例は騒音問題で地元の反発が激しかった大阪国際空港(伊丹空港)です。伊丹の運用時間は7時から21時です。
一応、時間外でも運航を認める場合があります、とはされていますが、実際の運用では、21時を過ぎる場合は、ほぼ離着陸が認められません。これはかなり徹底されているので、関西国際空港へ目的地変更することがしょっちゅうあります。
(羽田-伊丹便などは常連さんも多いので、このダイバートが慣れっこになっている人も多いと思います。)
日本の空港はどこも、上記のいずれかか、24時間運用の三つのどれかに該当しています。
ところが、福岡だけはこのどれにも当てはまりません。
なぜならそもそも運用時間は24時間で、本来はいつでも離着陸できるのに、制限があるからです。
24時間運用しているけど、騒音に配慮して原則飛ばすのは7時〜22時に収めてくれとお願いし、航空会社もそれに応えている運用になっています。
前述の成田などは原則破りをして特別に延長している感じですが、福岡はその逆で普段から原則を短縮している感じです。当然、22時を多少超えたところで、運用時間中なので、本来は気にする必要はありません。
このため、福岡空港のダイヤは余裕を持たせることはせず、ミッチリ7時〜21時55分で組まれています。航空会社も一般常識はあるので、流石に22時を3時間も4時間も超えるような運航はしないですが、航空便は遅延が当たり前の世界なので、10分、20分位なら仕方がないよね、というような運用をしています。
福岡の7時〜22時は、運用時間でも、実際に運航できる時間でもなく、旅客便のダイヤを設定する時刻とでも言えるでしょうか。
これまでこの門限が問題にならなかったのは、福岡が24時間運用でそもそも多少時間が過ぎてもそれほど気にせず離着陸させていたことに加えて、JALやCEBのケースのような長時間待たされたうえでの出発地引き返しがめったに発生していなかったからでした。
伊丹から関空へのダイバートが月に数回起きるのに対して、福岡に下りられない事例は年数回あるかないかです。
※ちなみに、成田も伊丹も含め、この運用時間は、緊急事態等の際は当てはまらず、運用時間外でも離着陸が可能です。急患だとか、墜落しそうな航空機だとかの離着陸を断るわけにはいかないですもんね。
■福岡には近くに代替空港がない?
そんなユルイ門限の福岡空港ですが、JALのケースのような、航空会社原因の場合ぐらいは22時以降の離着陸を止めてけろ、という運用を取っています。
このため、時には、JALのケースのように強行突破をはかる運航をした際等に離着陸を断られることが起こります。
ここで課題となったのがダイバート先の代替空港が近隣にないことでした。
前述したとおり、伊丹の場合、門限で離着陸不可を食らうと、同じ大阪都市圏の関空にダイバートします。
しかし、福岡は近隣空港へ簡単にダイバートできません。
国内線の場合、福岡には、JAL、ANA、スカイマーク(SKY)、アイベックスエアラインズ、AIRDO、ソラシドエア(SNA)、スターフライヤー(SFJ)、フジドリームエアラインズ(FDA)、オリエンタルエアブリッジ(ORC)、天草エアライン、Peach Aviation(APJ)、ジェットスター・ジャパン(JJP)と、日本一航空会社が乗り入れています。
しかし、近隣の24時間空港のうち、北九州はJALとSFJだけ、佐賀はANAだけしか就航していません。
(SKY、ORC、APJ、JJPは長崎、SNA、FDA、JJP、AMXは熊本に就航していますが、運用時間は、長崎は07:00〜22:00、熊本は07:30〜21:30で福岡の門限には対応できません。)
滑走路はあるので、ダイバートして代替空港に下りられたとしても、
機体のハンドリング
ホテルや福岡空港までの地上交通の手配
(国際線の場合)入国等の手続き
の大きく三点ができなければ、動きが取れなくなってしまいます。
まず、機体ハンドリングが出来なければスポットインすら出来ず、ステップ車なども付けられないので客は降りられません。
地上交通などが手配できないと、降りた客は福岡空港に向かえません。
そして、入国等の手続きができなければ、不法入国になってしまいます。
北九州や佐賀に降りたとしても、現地で対応できる地上係員がいないので、スポットインすることさえも叶いません。
こういった場合は、地上係員に福岡から陸路で来てもらうしか方法がなく、最早でも一時間程度は機内で待たされることになります。
JALは北九州に就航しているから、ハンドリング可能なはずと疑問な方も多いと思います。当時331便に使われていたエアバス350は北九州に飛んでおらず、機材に対応する設備がなかったため、北九州にダイバートできませんでした。この場合、仮に人が対応していても、設備がないという状況です。
(で、エアバス350に対応している一番近いダイバート先である関空に降りたものの、そこで客を降ろしても客は路頭に迷うだけ。給油などで時間がかかったものの、福岡はおろか九州の空港で降りれるところがないため、出発地の羽田に戻ったわけです。(出発地に戻れば、自宅に戻ったりできる))
国内線ですらそんな状態なので、国際線のダイバート対応などほぼ不可能です。
CEBは北九州にダイバート後、すぐにハンドリングの対応ができず、福岡への再運航が間に合いませんでした。
でも、福岡から航空会社の地上係員が来てスポットインできれば、お客さん降ろせたじゃん、となりますが、北九州空港は、その時間帯に入国手続の受け入れ体制がなく、降ろすことが叶いませんでした。
今回のダイバート事例を受けて、福岡の運用時間を延ばすべきだ!という意見が多いのです。それを騒音配慮の定期便運航可能時間制約を延ばせと捉えても、それって何時まで?となってしまいます。24時間運用の中でわざわざ騒音配慮のためにやっているので、それをやらないわけにはいきません。福岡の場合、それがたまたま7時〜22時だっただけでこれを23時まで延ばしたところで、同じ問題は起こります。
それだったら、むしろ、
キッパリ騒音配慮を止めます、とするか、
伊丹みたいにダイバート先をしっかりして日の出〜日没までに短縮すべき
ではないでしょうか。
最近は夜活動的になる人も多いですが、本来は暗くなれば活動を止めるのが人間です。寝るときにうるせーと言うのですから、基準は太陽の出ている時間にするべき。夏場なら明るくなる5時〜18時位で飛ばせば良いんです。
そしたら、周辺の交通機関も福岡名物屋台村も3時〜20時くらいの健全な運行時刻になり、会社も7時〜16時とか日中だけの健全な勤務時間帯になります。深夜22時とか、働き方改革にひっかかるような夜の稼動がなくなって皆ウイン-ウインですよね〜〜。そうやって福岡が率先してサマーダイヤ的なことを示せば良いだけです。
しかも、福岡の運用時間が日没までになれば、日没ギリギリでのダイバート先として多くの航空会社が就航している長崎や熊本なども活用出来ます。夜になったばかりの時刻なら入国審査官だって残ってるでしょうから、今回のような事態はほぼ起きません。
極論に走り過ぎてしまいましたが、運用時間を延ばせという議論は、結局、そういうことです。
定期便運航可能時間が短すぎると言うなら、7時〜22時を、7時〜23時にしても、6時〜22時にしても同じこと。さて、それで解決しますかね??ただただ旅客便の飛ぶ時間が延びただけで、たぶん何も解決しません。
一つの解決策としては、21時55分着までの定刻ダイヤを20時55分までにするとかならまだいけるかもしれません。それでも、航空業界の場合、遅延は標準仕様ですから、21時過ぎても気にせず降りてきそうですし、利用者はどう思いますね、、、。
前回の旅行記でも課題になったように、福岡って、夜に空港着いてからレンタカーを借りるのすらできません。働き方改革の名のもとに、営業時間が短過ぎるからです。最近はこういった感じで働き方改革の名のもとで深夜勤務をなくす風潮にあり、出張族が多そうな大手企業ほどその傾向が強いです。ですので、深夜の最終便ダイヤが1時間早まるくらいの措置では、誰も文句言わないでしょう〜〜。それこそ、運航可能時間を6時からにするのとセットにできれば、実質延長ですから、利用者は誰も不便になりません。
■福岡の民間委託には北九州と連携が求められている
JALは2月の事例が騒ぎになったことを受けて、その後、北九州にダイバートできる体制を構築しました。
6月には実際に福岡門限で下りれなかった便の北九州へのダイバートが発生しています。伊丹と関空のように、福岡が無理なら北九州へという流れができたので、羽田離陸時に運航に悩む事態が減り、欠航のリスクを大幅に減らしたわけです。
北九州は24時間空港ですし、福岡空港までは高速を使えば1時間位でアクセス可能です。
これを活用しない手はありませんが、福岡に比べると北九州は就航社数・便数が少なすぎ、急なダイバートには対応できないのが実状です。
そこで、空港管理者の役割が大切になってきます。
空港管理者がうまく立ち回り、ダイバートに必要な、ハンドリング体制、福岡までの輸送体制、入国体制を空港側が用意できれば、航空会社はダイバートしやすくなるからです。
実は、福岡空港を民間委託した際、受託者には北九州空港との連携を求めています。
元々この連携は、混雑している福岡から、就航先を北九州に変えてもらうことを意図しています。このため、ダイバート対応はほぼ考えられてきませんでした。しかも、2月のJAL便ダイバートが酷い事例だと騒がれるまで、この連携は放置されていた感があります。
福岡の場合、この連携がポイントになるでしょうか。
福岡空港は混雑空港で、国内線の場合、就航するときには国交省の審査があります。北九州へのダイバート対応できることを就航の条件にするのも一つの手でしょう。
機体のハンドリングは、例えば福岡から人員をよこすでも良いでしょう。その際にハンドリング機器を持ってこられないなら、それを北九州に用意しておくのを、福岡就航の条件にする、それができないなら福岡就航は認めないということだってできます。
地上交通は、空港管理者が、すぐ手配できる体制を提供できればより良いですね。
入国等の手続きについては、国の仕事なんだから、普段から24時間対応させておけば良いだけ。で、そういった人員を確保したいなら、例えば、国際線は北九州へ誘導し、伊丹と関空のような関係にすることも必要になってくるかもしれません。
こういったことは福岡に限らず、どこの空港でも起こり得ます。
各空港ごとにダイバート先を設定出来なければ、就航は認めないという方法も必要になってくるのではないでしょうか。
福岡は、たくさんの航空会社が集中し、それらの航空会社が就航するダイバート先の周辺空港よりも運用時間が長く、機材も福岡限定という運用だったからこそ、今回のような事態が発生してしまいました。
福岡と北九州の役割分担をもっと考える必要があるのかもしれません。
福岡の騒音対策門限が話題になっていたので、少し触れてみました。
早く、福岡と北九州のうまい連携を考えて欲しいところ。門限のせいやダイバート先がないせいで空の上でグルグルすることなく、うまいダイバート体制が築けると良いですね。
今回も、いつもの通り、かる〜く薄っぺらいまとめで、グルグルっと〆させていただきます。
2023年11月06日
伊丹_11月バス便時刻変更
■大阪国際空港(伊丹空港) アクセスバス便時刻変更(2023年11月)
11/06
×阪急バス [90] 大阪国際空港6番-宝塚駅 (空港発6・空港行7→0・0)
11月06日:
宝塚方面:路線が廃止されます。
■空港宝塚線 路線の廃止について(阪急バス公式サイト)
https://www.hankyubus.co.jp/news/images/20231006k.pdf
11/06
×阪急バス [90] 大阪国際空港6番-宝塚駅 (空港発6・空港行7→0・0)
11月06日:
宝塚方面:路線が廃止されます。
■空港宝塚線 路線の廃止について(阪急バス公式サイト)
https://www.hankyubus.co.jp/news/images/20231006k.pdf