■2009.01 成田国際・沖縄那覇・伊江島・宮古・多良間・下地島・東京国際(旅行後)
最終日に行った下地島空港は、日本唯一のパイロット訓練用飛行場でした。実はこの空港、以前に南西航空が那覇路線の旅客便を飛ばしていましたが、現在は廃止されてしまった過去を持っています。空港ファン的にはすべての空港に旅客便を飛ばしてほしいところなのですが、今回はそんな下地島空港への旅客便就航の可能性を掘り下げてみようと思います。
下地島定期便復活の可能性を探ってみると、、、
「旅客便就航の可能性を掘り下げる」と言ったのに、いきなり結論から言うと、国内旅客便の復活はあまり可能性はなさそうなのだ。
実はこの空港の利活用については平成20年3月に宮古島市が報告書(「宮古島市「下地島空港等利活用計画書」」)を公開していて、旅客便就航の可能性を探っている。
→まずは読んでみると、、、。
http://www.city.miyakojima.lg.jp/site/view/contview.jsp?cateid=24&id=955&page=1
読んでいただければわかるのですが、利活用はかなり難しそう。
計画書を読んでいくと、12ページで旅客数が減少した背景を「減少の原因は、利用客の低下に伴う採算性の問題、1日1便、不便な時間帯の設定、機材運用、故障等による欠航便が重なるなど不安定な運航にあったと思われる。」と冷静に分析。「なお、宮古−那覇間にはJTA・ANKの2社だけで1日11〜13便運航しており伊良部地区の住民にとっては不便ではあるが那覇への空の足は確保されている。また、伊良部大橋の完成により、那覇・下地島間の定期便のニーズは、今後更に下がることが想定される。」とはっきりブッタぎっていて、旅客便復活はまずあり得ない流れのようだ。
下地島空港には、平成19年にエアトランセがエアードルフィンと組んで那覇便を3か月だけ飛ばしていたのだが、小さい飛行機+予約あったとき運航であったにもかかわらず搭乗率は20%にも届かない数字だった模様(計画書13ページ)。ダイヤを提示できない不定期乗合という大きなマイナス点があったとは言っても、那覇-下地島間にそもそもの需要がないのは明白なのだ。(聞き取り調査結果では、理由をグダグダ書いているけど、この会社の場合は、運航していることの宣伝がなさすぎってのが一番の原因だろう。)
簡単にいえば、下地島空港を旅客化したいのであれば、宮古空港を閉鎖するぐらいしないと旅客は呼び込めないといった感じ。だが、市街地に近い宮古空港を閉鎖することなどありえない話だ。
興味深いのは、計画書でも触れられていた、国際チャーター便就航や国際拠点空港化の可能性だ。
宮古空港は国際線の受け入れ設備がないし(←それ言うと下地島空港には旅客便受け入れの設備がないけど(笑))、滑走路長から下地島が有利だろう。確かに有効な策のように見えるが、沖縄本島と石垣という巨大ブランドに挟まれた宮古みたいな小観光地(中ブランド?)に、3000メートル滑走路が必要なジャンボが飛ぶほどチャーター需要があるだろうか。それに宮古空港がまだまだスキスキの現状を見ると、宮古発着をわざわざ下地島発着にする意味が分からない。仮にジャンボチャーター便があったとして年数便あるかないかといったところだろう。
となると、旅客便としての活用は、何らかの原因で宮古に着陸出来ない場合の代替ぐらいしか思い浮かばない。これは効果がありそうだが、それとて伊良部大橋が渡れないような悪天候なら、宿の確保もおぼつかない下地島に下りるより、簡単にホテルをとれそうな那覇に行ってくれたほうが方が良い気がする。
また、1500m滑走路を持つ宮古空港の拡張が石垣のように困難であれば話は別だが、そんなことはなく、ターミナルだって新調したばかりでまだまだ使える。宮古と一体運用して大型機は下地島、それ以外は宮古と分ければ使い道もあろうが、宮古を強化すれば済む話。
はっきり言うと下地島空港を旅客用空港として活用する意味のある方法はあまりない見当たらないというのが正直なところだろう。
計画書でも書かれているとおり、航空大学校の誘致にも失敗していて、伊良部島・下地島自体の需要増は見込めない状況。
航空ファンが結構訪れる土地なので、航空博物館的なもの(この空港の場合はパイロット訓練飛行場だから訓練に関する展示を主にするとよいのかな?)を建てて、飛行機ツアーでGO!というのも一つの手のような気もする。が、周辺人口の多い成田国際空港そばの航空科学博物館みたいに、休日にちょちょっと気軽に行ける場所でもない。旭山動物園や美ら海水族館じゃないけど、それだけを目的に客が来る、ぐらいの展示ができなければ、閑古鳥が鳴いてしまうことになりかねない。
やっぱり旅客化は可能性がかなり低いと言わざるを得ないのだ。
ほかにもあるある開店休業空港
実は下地島のように定期便が飛んでいない空港が、沖縄には北から伊江島、慶良間、下地島、波照間と4つ(場外離着陸場として伊是名も)ある。全国に目をやればそんな空港はゴマンとあって、利活用や廃止議論があることは日本人なら一度は耳にしているだろう。(「下地島のように」とは書いたが、下地島はそもそもがパイロット訓練用の飛行場。他の空港だって様々な事情があるから、簡単に並べてしまうのはナンセンスなのだけど。)
※全国には定期便が飛んでいない空港が14空港もある。北から礼文(休止)、千歳、佐渡、福井、八尾、岡南、小値賀、上五島、大分県央、枕崎と沖縄の4空港。千歳は自衛隊機が、八尾は小型機がブンブン飛行。福井のように大学の航空関連サークルが集積して結構訓練しており、比較的活用されている空港もあるものの、ほとんどの空港は閑古鳥が鳴いている。離島を中心に緊急出動用として残っている所が多いが、旅客化するにはあまりにハードルが高い。
ただ、今回と12月に沖縄の空港をまわりながら、あまりに使えない空港が多いことに改めて気付かされてしまった。
沖縄なんて米軍基地がありすぎで返還が叫ばれているくらいなのに、そもそも自国のものすら活用できないんだから、説得するのは難しいだろう。
ちなみに沖縄で定期便が飛んでいない空港を考えてみると、、、。
伊江島
沖縄本島の沖合にあり空港があるという立地条件は粟国や慶良間と似ているが、人口が5000人規模と多め(粟国の5〜6倍)。船は那覇発着ではなく本部発着だし、島自体も観光地として有名。対岸はあの有名な美ら海水族館があって周遊需要などを掘り起こせそうな場所だ。那覇からの場合、対岸の本部まで車だと1時間半はかかるから、島観光の場合は客を奪えそうだが、美ら海水族館へのアクセスは、島から船を使う必要があり乗り換え時間などを考えたら五分五分、やや車に利ありといった感じだろうか。
この空港の大きな問題は、米軍の管制領域であることで、旅客化されれば使う客はまずまずいそうだけど、運航の手間が多そうな空港なのだ。
慶良間
高速船の就航で対抗できなくなった過去を持つ。空港から直接行けるのは、阿嘉島、慶留間島と無人の外地島だけ。夏場はレジャー客がウジャウジャいるとはいえ、この3島は400人ほどしか住んでいない。なんでこんなところに空港が?という立地だ。
所属する座間味村のメインの島である座間味島(人口600人程度)や渡嘉敷島(人口700人程度)には船に乗り換えないといけないし、渡嘉敷への定期船はない。高速船なら那覇市内の泊港から2時間3000円程度で各島に直接行けるため、対抗できないようだ。
旅客化で活用するとすれば、夏場のレジャー需要を狙った季節運航くらいしか復活の道はなさそうだ。
波照間
競合として石垣から1時間半の高速船がある。船は太平洋を突っ切るルートで大揺れすることで知られており、船を嫌う人により需要はまだありそうだが、なにせ島の人口は500人程度しかいない。日本最南端の有人島と知られ、近年の離島ブームで観光客は増えているものの、復活条件は厳しそうだ。
問題なのは空港から集落まで時間がかかることで、船との競合では大きなマイナスになりうる。日本最南端空港だし、石垣・波照間間の飛行は美しい八重山各島の景色を遊覧飛行気分で楽しめるから、それを売りにして空港や飛行機便自体を観光地化するのもひとつの手だろう。(個人的には再就航したらまず行きたいのはこの空港。)
とまあ、各空港とも何らかの問題がありそうなのだ。
新聞報道などでは空港の数が多すぎるなんて、よく議論になるけれども、沖縄特有の離島空港の場合、こうやって考えてみると、船との競合も大きなキーワードになりそうだ。
とにもかくにも、旅客便復活は非常に高いハードルかもしれないですが、空港としてそこにある以上、ぜひとも定期路線の再開を目指してほしいなあと強く願いつつ、開店休業空港の利活用について何の解決策も示さぬまま、この項を〆たいと思います。
2009年01月14日
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバック