2009年12月15日

過去と未来へ(旅行後)

■2009.12 鹿児島・種子島・屋久島・枕崎・宮崎・東京国際(旅行後)


過去を見て未来を考える
今回の旅行は、屋久島・種子島から過去と未来を訪ねる旅でしたが、空港についても過去と未来を考える旅となりました。
今回はそんな空港の過去を探ってみたいと思います。

様々な過去を持つ空港群
今回の旅行で訪ねた空港は、その過去が実に多彩だった。
鹿児島は30年前、種子島はつい数年前にそれぞれ郊外移転してきた新空港。宮崎は戦前の日本軍基地時代から続く歴史ある空港。枕崎は平成に入ってからの開業なのに今は廃止危機と、どれも興味深い過去を持っていた。


種子島:戦後新設→二度移転の過去
今回、この話題を取り上げようと思った直接のきっかけは、種子島空港に掲げられていた一枚の紙だった。
まずはその紙から。

tour091224.jpg

ご覧のとおり、種子島空港の沿革を書いた紙だ。目立つように飾っておらず、気が付かない人はまったく気が付かないようなものなのだが、沿革を掲げる空港は珍しく、自分はとても反応してしまった。しかも中身がさらに気を引く内容だった。
文章によると、旧空港も別の場所から移転してきたというのだ。しかも戦後の話。これにはさすがにビックリだった。
文章を読んでみる。

昭和29年(1954年)5月南日本航空(株)は、飛行機による離島交通対策に真剣に取り組む必要があるのではないかという趣旨で佐多直大南日本航空(株)支社長から、種子島の旧増田海軍飛行場跡地を調査するよう特命を受け、種子島へ船で渡り、さっそく旧増田海軍飛行場跡地を見に行った。
(中略)
中種子町は、島の中心で地の利を得ているので必ず種子島全島民の福祉に結びつくはずと説得した。議員全員一致の賛成が得られ競馬場跡地に450メートル滑走路建設が決まったのである。昭和29年12月南日本航空(株)の要望に応じて、高嶺競馬場跡地に町民各位の自主的な奉仕作業による3千百人の人々の誠意で長さ450メートル幅25メートルの滑走路の町営飛行場が完成したのである。
(以下略)


旧々空港と言える高嶺飛行場は町営飛行場だったせいか、鹿児島県や国交省が公表している空港沿革には載らないし、ネットでも全然ヒットしなかった。当然、掲示を見るまでまったく知らなかったのだ。

→帰ってからじっくりネットサーフィンしてみたら、鹿児島県のサイトなどでわずかに情報があった。だが肝心要の地図などの位置情報は皆無だった。実はこのネットサーフィン中に種子島の飛行場事情が判明。戦時中は中種子町増田地区、現在のコスモリゾート南側付近に日本軍基地があったという。戦後は高峯に対抗し、西之表市(当時は町)が安納(芋で有名な所)に飛行場を建設し2空港時代があったことが分かった。


種子島滞在時間が短く、現地で調べることは出来なかったものの、高嶺は町役場から見て南方、こり〜なという建物があるあたりの地名。グーグル等の航空写真を見てもそれらしいところは分からず、今となっては懐かしの飛行場となってしまっているようだった。
この高嶺飛行場で興味深いのは前回も滑走路延長が出来ずに移転したことだ。戦後二回も、しかも同じ理由で場所を移転するとは計画性のない設置と言わざるを得ないだろう。高嶺飛行場の建設には町民も参加したというからなんとももったいない話だ。
で、戦後60年ですでに三代目に突入してしまっている現空港で気掛かりなのは、西之表と中種子の間の中途半端な山中にあること。中種子へ抜群の利便性を誇っていた旧空港とは差がありすぎで利便性が落ちた感じは否めない。山中だから霧での欠航も多い。さらに滑走路延長の直接の原因であるジェット機運航の大阪線が平成21年に廃止。船便の高速化や値下げもあって、鹿児島便も安泰ではなく、前途多難な印象だけが残ってしまっている。

鹿児島:戦前開設→郊外移転
一方、同じ拡張の問題から郊外移転したものの、利用が堅調なのが鹿児島空港だ。鹿児島は奄美などの離島の玄関空港として九州第二の規模を誇る。
この空港の旧空港が鹿児島県庁などが建つ鴨池地区にあったのは、すでに旅行記にも書いたとおりだ。移転先は、市街地からの距離が、種子島空港の移転距離とは比べ物にならないほど離れている。かなり郊外へと移転となり、開業当初は集客の懸念もあっただろうが、今やバス便は多頻度運行で、広く熊本や宮崎からも客を集める空港になった。茶畑が広がるのんびりした風景も残るが、周辺開発もかなり進んでいて小さな郊外都市になっている。同じように郊外移転した空港は多数ある(九州だと大分や熊本など)が、その中でも成績が良い空港なのだ。
鹿児島空港については、もともと空港のすぐそばに日本軍基地(国分第二飛行場)があり、純粋に新空港とは言えないのだが、そういった点があるのも鹿児島ならでは。昔の飛行場を活用している点は過去を振り返るうえで面白い話だ。
そして忘れてならないのが、旧空港区域の鴨池地区だろう。移転から四半世紀が過ぎ、今では、県庁なども立地する一大居住区に変化した。鹿児島市内の再開発に一役買っており、移転効果を最大限活用した事例だ。
一見安泰に見える鹿児島空港だが、そう安心ばかりもしていられない。それは九州新幹線の全線開業で大きな影響を受けそうだからだ。福岡線は大打撃を受けること間違いなく、大阪線も利用が減りそう。離島路線などをどれだけ維持できるかが、今後も利用者を維持するカギを握っていそうだ。

宮崎:戦前開設→継続使用
拡張のために郊外移転、というところが多い中で、戦前から使われているのが宮崎空港だ。
戦前から飛行場としてずっと同じ位置にあるこの空港は宮崎市街地に程近い利便性の高い空港になっている。にもかかわらず、空港周辺には、掩体壕が多数見られるなどまだまだ軍港時代の名残が点在している。今回訪れた空港の中では、最も歴史を感じられる空港だった。
戦前から交差滑走路があって敷地が広い、滑走路延長が海側に展開できた、市街地に近いといってもまだまだ周囲は畑作地、周囲に工場地帯がないなどなどこの空港が移転を免れたのはいくつか理由が浮かぶ。なんにせよ、移転せずに脈々と飛行場として活用されたことは、すばらしいことだろう。
ただ、鹿児島のように離島便があるような地の利はない。現在は広島西などの地方間路線も飛んではいるものの、やはり羽田や伊丹頼みの印象は拭えない。鹿児島のように新幹線が延伸するわけではないからしばらくは問題ないだろうが、安閑とはしていられないだろう。

屋久島空港:戦後開設→継続使用
今回訪れた空港のなかで歴史がシンプルなのが屋久島空港だ。開設は戦後。その後、数回滑走路延長が行なわれている。よくある離島空港の雰囲気で建物はバスターミナルといった感じだ。
空港はたいしたことないのだが、近年の屋久島ブームに後押しされ、利用者が定着。鹿児島便は一日5便と離島にしては利便性が高く、平成21年秋から大阪直行便も就航している。対抗する船便にジェットフォイルが導入されても利用者が増えたぐらい。同じく離島の自然が注目されている北海道の利尻・礼文(前者は1日1便、後者は休止中)とは正反対で、離島空港活性化の参考になりそうだ。


枕崎:平成新設→廃止危機
最後に取り上げるのは枕崎飛行場だ。
この飛行場は、少し変わり種。数少ない平成生まれの飛行場だ。コミューター専用空港として開業し、その他の空港に分類されている。
鹿児島市谷山地区の国道に道案内の看板が出ているほどだが、存在感はあまりない。鹿児島県民で認識している人がどれほどいるのだろうか。定期便はおろかチャーター運航も休止中。そんなこんなで、日本がバブルでわいていた頃の遺物とまで揶揄される存在になってしまっている。
鹿児島空港が県北部の郊外にあることから、薩南の高速交通拠点になる期待もあったものの、まず空港へのアクセスが悪く使いづらい。鹿児島市内からは車でも一時間以上かかり、結果として、種子島や薩摩硫黄島などへの離島便は不振で定着はしなかった。逆に薩南から鹿児島市へ飛行機で行こうにも、鹿児島空港経由だと遠回りすぎで意味なし。どっちつかずの中途半端な存在になってしまった。
行政側も活用には消極的。廃止したうえで跡地に刑務所を誘致しようとする話も出たくらい(=結局は失敗)で、今は防災ヘリが飛ぶくらいで細々と運営が続いている。


結局使い方次第
静岡や茨城の空港開港、JALの経営不振、国交大臣の羽田ハブ化発言など、最近は航空業界に対する注目度は高い。
その中でも空港を造りすぎという議論は無駄遣いの象徴のように扱われている。
だが、空港の過去をよくよく見てみると、10年程度で廃止になるのは多々あるようだ。その点で見れば、最近の空港は長持ちといえる。逆に言うと赤字額が大きければ、無駄に延命しているとも言える。
また、10年、20年で廃止せざるをえない空港がある一方で、移転もできずに狭いままというところもある。旅客数で見ても、船便の充実などで減る空港があるのに対し、観光地として注目され急に利用者が増える所もある。同じように郊外移転しても悲喜交々だ。
だいたい新幹線や高速船、高速バスといった別の交通機関の充実が航空便の盛衰に影響していることが多く、空港の設置が無駄遣いかどうかそう簡単には言えないだろう。ひょんなことから利用が増える場合だってあるのだから。


利用されない無駄な空港を造ったと言うのではなく、新幹線があろうが高速船があろうが高速バスがあろうが、空港が利用されるようなパイの大きな魅力ある地域を造ることが重要なのだと実感したところで今回の旅を〆ようと思います。
posted by johokotu at 00:00| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | ◆旅行記 | 更新情報をチェックする
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