静岡空港、茨城空港と立て続けに開港し、「無駄な空港造りすぎだ!」という議論が最近盛んです。「今、日本の空港はまさに大問題に瀕している!」
ということで、突然ですが、空港の小問題です!
問題1 日本にある飛行場の数は次のうちどれでしょう
(A)各都道府県1空港だから47か所!
(B)百里の道も一歩から百里飛行場に茨城空港が出来て98か所!
(C)岩国ってあったような100か所!
問題2 定期便が飛んでいない飛行場の数は次のうちどれでしょう
(A)そんなのあるわけないじゃん0か所!
(B)空の駅情報館読んだら15か所!
(C)こういうのはJAL・ANA・SKYの時刻表を見れば一目瞭然だよ、17か所!
問題3 関空から路線減便が相次ぎ大変です。では関西(滋賀・京都・奈良・大阪・和歌山・兵庫)にある空港数は次のうちどれ?
(A)関空建設は伊丹廃止前提だし、神戸の位置は反対されて断念したから関空1か所!
(B)私利用するのは伊丹だけなんだけど伊丹と関空のたしか2か所!
(C)大阪府知事が吠えているじゃないの3か所!
問題4 「赤字空港は廃止は無駄空港!即廃止せよ!」。そんなに言うならあなた、日本の赤字空港の数は次のうちどれ?
(A)そんなのあるわけないじゃん0か所!
(B)半分ぐらい?50か所!
(C)確か札幌、羽田、伊丹、福岡、沖縄は利用者多いから黒字だよね93空港!
さて、全部で4問、空港の小問題を出してみました。みなさん、正解は分かりましたか?
問題に入る前に、なぜこんな問題を出したのかというところから。
最近、空港に関する議論、本当に多彩になりました。新聞報道や雑誌の報道、そして便乗書籍もちらちら見られるようになってきました。これまでその実態が見向きもされなかった飛行場の経営にスポットが当たるようになってきたのです。
ただ、その議論、あまりにも遅々として進まず、かつ「この記者ホントにわかってんのか?」というものも散見されます。そこで今回、「イジワル問題」を出してみました。
なぜに「イジワル問題」?と思ったあなた、一問一問正解を探っていきましょう。
問題1 日本にある飛行場の数
この問題、簡単だ!と思った方、かなり多いのではないかと思います。先月茨城空港が開港した際、何度も何度もその数が出てきました。
正解は98。
と言いたいところなのですが、実は不正解です。
まさか、廃止になった弟子屈や建設中の岩国も入れて合計100とか?と思った方、まさかまさかで、実はそれが正解!
と言いたいところなのですが、これも実は不正解です。
この問題のイジワル部分は「飛行場」という問題の聞き方。実は、空港という場合は、国土交通省が公共用として認めた数字が通常使われます。つまり「空港」と聞けばすんなり98か所だったのですが、飛行場としてしまうと、公共用以外のものも含むことになってしまい、その数は激増します。
自衛隊基地や米軍基地などの飛行場がそのよい例で、石原都知事が民間でも使えるようにしろと吠えていた(吠えるだけで終わっちゃったけど、、、)横田基地や今話題の普天間基地なども含まれます。第二次世界大戦の激戦地硫黄島だって飛行場はあるのですよ。民間の飛行場もここに含まれてきますので、埼玉県荒川河川敷にあるホンダエアポートなんかもそう。ヘリポートは含まれるのでしょうか?さらにもっと広範にとらえれば、水天宮前駅上にある東京シティエアターミナル(TCAT)も空港機能の一部ですから含まれてしまうのでは?。
飛行場は?と聞くと、次から次へと飛行場が現れてきます。
つまり、結論から申しますと、正解は知りませんが正解でした。だって、そんな風にきちんと数えた人が一人もいないのですもん、、、。
この小問題で大問題にしたかったのは、TCATやヘリポートは極端な例としても、日本には98にとどまらずたくさんの飛行場があり、民間で利用できていないという事実です。そして、これを前提に話をしている人が一人もいないということでした。「98空港は多い多い。無駄無駄無駄。」という人は多いのですが、それを聞くたびにいつも「いやいやいや日本にはもっとたくさん飛行場あるから」とツッコミたくなってきてしまいます。
例えば、静岡空港を建設することになった時、静岡市に近い自衛隊静浜基地や浜松市郊外にある浜松基地と軍民共用化も検討されています。でも、最終的には静岡空港建設に至ったのです。「不便で誰も利用しない」と糾弾する新聞報道の中で、これらの基地を活用すれば便利になるという議論はほとんど見ることはできませんでした。「不便で利用しないと反対するのなら、便利なら利用するんですよね。」と新聞報道を見るたびに不思議に思っていました。
また、いちばんよくわからない部分は他の国との空港数の比較でした。
政治家が「航空先進国に比べると空港数が少ない」という議論をすることがあります。日本の場合、この対象は先にあげた98空港にほかなりません。でも日本にはもっと飛行場はあるんですよ!工夫すれば活用できる空港はたくさん!
比較対象の他の国の空港数が、実は日本で言う飛行場に当たる数かもしれませんし、その辺がよくわからないなあというのが実感でした。
議論するのは大いに結構だけれでも、飛行場は98以上にあることをもっと議論してほしいし、自分自身も何飛行場あるのか知りたいなあと思い、そういう専門家が一人でも出てきてくれないかなあと願いつつ、イジワル問題を出してみました。
問題2 定期便が飛んでいない飛行場の数
これも問題1と同じ理由で「正解なし」が正解。「定期便が飛ばないなんて無駄」という乱暴な意見の人が意外と多いですが、「いやいやいや定期便の飛んでいない飛行場なんて日本にはゴマンとあるから」とツッコミたくなってきてしまいます。上記意見の人は自衛隊や米軍の基地、民間飛行場なんかも否定されるのでしょうか。一度聞いてみたいものです。
(C)の様に考えた人もいるのかもしれないですが、日本にはJAL・ANA(+共同運航各社)・SKY以外にも独立系の航空会社がいくつかあります。是非そういう会社も無視せず空港利用を検討してほしいですね。
ちなみに空港というくくりで見た場合、定期便の飛んでいない飛行場は以下の通りです。
礼文、千歳(注:新千歳とは別の空港)、佐渡、福井、八尾、岡南、小値賀、上五島、大分県央、枕崎、伊江島、慶良間、粟国、下地島、波照間
問題3 関西にある空港数
この問題からは飛行場ではなく、空港として質問をしてみました。滋賀・京都・奈良・大阪・和歌山・兵庫と限定したのに違和感を持った方も多いのではないでしょうか。
これまでの流れの通り、正解は「正解なし」です。
そうなんですよ、いわゆる関西圏(上記府県)には、大阪国際(伊丹)、関西国際、八尾、南紀白浜、神戸、但馬と実に6つも空港が存在しています。よく「関西三空港」という表現をしていますが、「いやいやいや関西は6空港だから」とツッコミたくなってきてしまいます。
但馬なんかは伊丹との間に路線があるし、南紀白浜は和歌山の南のほうだから、大阪人や神戸人が使うわけねえだろボケ、と言われそうですし、いわゆる関西三空港問題に含めるのは確かに迷うところではあります。でも、ミナミに一番近く大阪中心部から大阪市営地下鉄で行けてしまう八尾空港が議論に入らないことには違和感を感じます。しかも八尾空港って国管理空港ですよ、、、。
大阪府知事も含めなぜ、三空港で議論を進めているのか、そこがいつまでたっても疑問・疑問であえてここで小問題に出してみました。
ちなみに、、、
(A)の文章は騒音対策費をブン取るだけブン取って最後は存続を声高に叫ぶゴネ得の伊丹周辺住民と自分勝手に設置を願った神戸周辺住民への完全なクレーム。
(B)は神戸があることを知らない人がいるのでは?という考えから出てきた答え。
(C)は普通の人が考える答えです。
問題4 日本の赤字空港の数
今回、聞いてみたかった質問はこれでした。
今回の記事の表題は「空港の大問題とは?」でした。それに引っ掛けて小問題を出してみたのですが、この表題にしたのは、3月下旬に出た一冊の書籍がきっかけです。
それは、先月下旬光文社新書から発刊された「空港の大問題がよくわかる」という本です。
ここ数年議論が高まっている空港に関して、便乗発刊がここのところ相次いでいるのですが、それらの本の中で一番冷静に空港問題をとらえているように感じたのがこの本でした。(やや論文調で退屈な本だと感じる方もいるのかと思うのですが、、、)
その第1章で「赤字空港の実態」を記述しているのですが、そこで分かったことは全空港赤字らしいという話でした。「らしい」としたのは、収支実態がいまだ推計でしか出ていない点と費用をどう収支に含めるか統一されていないせいで、きちんとしたものが出せないから。
なので、やっぱりこれも「正解はなし」が正解でした。
(C)のように利用者の多い空港が黒字だと思っている人は多いと思うのですが、これらの空港も赤字であることはぜひ覚えておいてほしく思います。
さて、上記の本では、空港に対する意見を
「(1)空港が赤字だなんて、許すことができない。そんな空港は廃港だ。
(2)ある程度の赤字は仕方ないが、巨額の赤字は問題だ。
(3)空港は赤字になって当然なので、問題ではない。」
と大きく三つあることを論じたうえで、それぞれの意見に一理あることを説明しています。
これまでの本は、だいたい(1)に近い意見ばかりで、不思議に思っていました。しかし、(3)もありだとするこの本はよく研究しているなという印象でした。ちなみに(3)が一理あることを述べる部分で道路についての話を持ち出し、次のように書いています。
「 私たちは、何ら利用料金を支払うことなく一般道路を利用することができる。江戸時代なら関所で通行料を取られたが、現代の一般道路は収入がないので完全に赤字である。しかし、一般道路が赤字であることに誰も文句を言わない。ところが、高速道路が赤字であれば、それはおかしいと指摘する人が多く出てくる。実際、それが道路公団の民営化につながった。
道路も空港も税金も投入して建設しているのに、空港は赤字だと批判され、一般道路は赤字でも批判されない。道路も空港も社会資本であるから、もともと黒字になるように造られておらず、そのために国や地方自治体が関与する。であれば、(3)のように、空港は赤字になって当然だという意見も、全く変な主張ではない。」
(「空港の大問題がよくわかる」光文社新書65ページより抜粋)
自分の場合は、国なり地方自治体なりが運営している以上、空港の運営に税金を投入するのは当然と思っている節があり(3)に近い意見であったので、その意見には妙に納得してしまいまいた。
高速道路の場合は利用料を取られるから文句言うのは当たり前、という部分はあるのかもしれないですが、空港ファンとしては、いつも「いやいやいや赤字だからダメというのは乱暴すぎる」ツッコミたくなっていたところで、このような書籍が出たことにやや共感した部分がありました。
(ちなみにこの筆者は「(2)の見解が最も妥当だろう」として、赤字が巨額にならないようにすることが必要だと説明しています。)
以上、四つの小問題を通して、現在の空港の大問題を少しですが考えてみました。
これを機に、皆さんも日本の飛行場(空港じゃないっす!)が置かれている状況に関心を持っていただけたなら幸いです。
ラベル:空港