この記事は2010年6月に執筆した旅行記です。
■2006.03.16 新北九州・東京国際
白黒の衝撃
実家でゆっくり一週間を過ごし、今日は東京に帰宅する日だ。
実家から大分空港までは車で10分もかからない。当然そこから帰るのが順当な流れなのだが、今日は新北九州空港の開業日で、そこから新規就航するスターフライヤー(スタフラ)で羽田に戻ることにしていた。
今日は、朝から雨が降ったりやんだりのなんとも中途半端な天気。せっかく新空港の開業日なのになんとも残念な天気になってしまった。
最寄のJR駅である杵築駅まで車で送ってもらい、そこからは18きっぷを使って鈍行旅行だ。
杵築を10:27発に乗りまずは宇佐へ。宇佐では35分間と往路同様長時間待っての乗り換えだったが、この電車は下関行で、一気に朽網駅まで行くことができた。
昨日まで使われていた北九州空港は隣の下曽根駅下車だった。下曽根駅は駅前に西友を核としたショッピングセンターがあるまさに交通拠点だったのだが、朽網駅は駅前にコンビニすらない小さな駅で、新空港化によってかなり不便になった印象を受けた。それでも空港開業に向けて交通広場などの整備が行なわれ、きれいな駅に変わったようだ(工事は続いていたけど)。
ここからはバスで空港に向かう。この駅からのバスは30分に1本程度と高頻度に運行されており、12分待ちですぐに乗換ができた。見学者で混んでるかと覚悟して行ったのだが、乗車したのは10人ほどだった。航空便の本数からすれば、少し運行しすぎ感はあるものの、今日は初日だからまだましなのだろう。
北九州空港までは約20分。空港に着いたら、ターミナルの中は見学客でごった返していた。
新空港の開業日に来るのは初めてだったのだが、13時過ぎと朝一でもないこの時間にもこんなに人がいるとは思いもしなかったので、ちょっと驚いてしまった。
ターミナル内は、白と黒をメインとしたモノトーンの内装で、なんとも上品な印象。これから乗るスタフラも白黒を全面に出したカラーリングだから、ちょうどマッチした感じがした。
見学客でごった返す1階入り口付近。朝から開港式が行われていたようで、天井からくす玉が吊り下げられていた。(写真を一部加工しています)
飛行機は19時少し前発。まだまだ5時間以上あるが、まずはさっさとチェックインを済ませることにした。
スタフラは、2階出発ロビーの約半分を占め、JALに劣らぬ広いカウンターを有していた。白と黒を基調としたモノトーンのカウンターこれまでの航空会社にはないイメージだ。
スタフラはANAと業務提携していて、予約・発券などのシステムはANAと共通化されている。自動チェックイン機でチェックインを済ませたら、なんと「全日空航空券(SFJ) ANA PASSENGER TICKET(SFJ)」と印刷された航空券が出てきてしまった。航空券自体にはスタフラ仕様の紙を利用しているのだが、機械はうそをつけないようだ。就航していないANAしかも今はほとんど使っていない「全日空」という文字がこんなところで見られるとは夢にも思っていなかった。
※モノトーンは、一般的にはあまり目立たないと思われがちだ。だが、実際には全く逆で、白黒の使い方は結構難しい。なぜなら、自然界にはほとんどない色だからだそうで、白黒は色の中で最も強調色なのだそうだ。JALが使う赤なんかは注意を引く色としてよく用いられるが、白黒はそれ以上。スタフラのカラーリングは強調色をうまく使いこなす実践版といったところだろう。橋などの大型構造物で、色彩を無難に白にしようとする人もいたりするらしいのだが、白は逆に目立ってしまうので、灰色などを使ってごまかすのだそうな。白色は汚れが目立つし、黒は闇夜に沈む色。こんなに使いづらい色を使うとはスタフラもなかなかやるものだ。
スタフラの社長が到着出口で???
チェックインを済ませたらまずは到着ロビーへ出た。
ここも人だらけだった。館内では一番椅子が設置されているところであり、たくさんの人が着席して時間をつぶしていた。
ちょうど羽田10:45発のSFJ77便が一時間近くも遅れて到着したところらしく、出口から多くの乗客が出てくる時間帯だった。
しばらく見ていたら、スタフラの大きな袋を抱えた人がたくさん出てきはじめた。大多数が同じ袋を持っていたので、おそらく袋の中は搭乗記念品だろう。これから乗る自分にもあんなものをもらえるのかと思ったら、早く乗りたくなってしまった。
ちょうど北九州始発の07:00発SFJ72便に乗れば、羽田には08:35着。その後の折り返し搭乗の人も多いのか、着いてすぐに「朝はどうも」といった感じで迎える人も多く見られたのが印象的だった。
出てきている人の中に一人、見覚えのある顔の人が出てきた。
「なんだかどっかで見た顔だなあ」と、よくよく見てみたら、それはスタフラの社長だった。大分のテレビでもここのところ連日のように特集が組まれて出ていたのに加え、さっきもらった時刻表にも顔写真が載っていて、一目でそうと分かってしまった。
搭乗者にあいさつするために出てきたのだろうか、こんなところで社長を直に見られるなんてと半興奮していたのだが、、、。
この人、出口の扉を出たと思ったら、そのすぐ目の前、狭い空間の出口のど真ん中で、一緒に出てきた紳士と立ち話をはじめてしまったのだ。
!!!!!!!!!!!
こっちは目が点。
出口を出てきた一般客に挨拶など当然のように一切なし。出口扉前の狭い通路を塞いでいるだけでも驚きなのに、一般客が邪魔な二人を避けながら歩いているのにすら気が付いていないのには正直開いた口がふさがらなかった。
「結局この会社も大手の焼直しで高飛車な会社なのか。」
かなり期待をしていたのに、この様子を見ただけでげんなりしてしまった。
到着した機体を見ようと屋上へ上った。が、フェンスの側は人人人。雨が降っていて足湯に浸かる人もほとんどいない状態だったのだが、フェンス側は大人気だった。(写真を一部加工しています)
ワクワクのハイクオリティは、、、
それにしてもどこに行っても人だらけでとてもゆっくりできる状態にない。1000円払ってでもラウンジに逃げ込みたい感じだったが、この空港には一般利用者向けラウンジはなかった。そこで、一通りの調査と売店での買い物を済ませたあとは、人混みを避けるようにさっさとゲート内に入ってしまった。
ゲート内はさすがに空いていて、見学者の多さを逆に実感してしまった。ちょうど学生は春休みに入るころだし、平日とはいえ、見学に来られる人は結構いるのだろう。
このゲートラウンジの一番端に、センスの良いスタフラのラウンジがあるとのことだったので、入れないかと見にいったのだが、残念ながら今日は閉鎖されていた。
結局ゲートの中にさっさと入ったもののやることはなく、搭乗開始までグダグダ過ごす羽目になってしまった。
※スタフラのラウンジは、スタフラが開設した新興航空会社としてはめずらしいものだ。旧空港時代から運航しているJALを差し置いて開設するなど、かなり驚きの事実だろう。
で、この内装がかなり凝ったデザインで話題になっていた。入りたくてたまらなかったのだが、入室の条件は一切明かされず、一般客は実質利用不可能だった。(噂では関係者にのみ利用券が配られていたという)。
ちなみにこのラウンジ、開業数か月後にスターリンクカードができたあとは搭乗回数に制限をつけ、超高頻度利用者しか使えなくなってしまう事態に。最終的には、利用者が少なすぎたのか、維持できなくなったのか、いつのまにやら廃止になってしまっている。
ゲート内に入ってから約1時間待ってようやく搭乗が開始になった。約15分遅延だそうだ。
初日搭乗で記念品プレゼントの情報を得ていたし、さっき到着出口で出てきた乗客も大きな袋を抱えていて、いったいぜんたいどんな記念品がもらえるのかワクワクしていた。
ところが、、、
搭乗改札を通る際に記念品を配布している様子がない。通常、この手の記念品は搭乗改札で一人ひとりに手渡すのが普通なのだが、今回はどうも違うようだ。
搭乗橋を渡り、機内に入ったら、スッチーが何やら掲げている。「いよいよ記念品配布か?」と思いきや、スッチーは手を出してこず、こちらも受け取れずに通り過ぎてしまったので、どうも違うようだった(あとで知ったのだがイヤホンを配っていたようだ)。
どうも様子がおかしい。ならば、離陸までの間に配られるのかと待っていたが、そのような気配は一切無し。さっきみたスタフラの社長が挨拶に立っただけで、飛行機はすぐに動きだし、離陸となってしまった。
※北九州空港を離陸後は一度南進して大分空港近くを通ったあと東京へ向かった。昼に大分空港にいたのになんとももったいない話だ。実は、スターフライヤーは北九州ができるまで、羽田と大分を行き来し訓練を重ねていた。約半年ほどの間、大分には連日のように黒い機体が姿を現していたのだという。それが開業日以降はピタッと飛んでこなくなるんだから、大分人はバカらしいったらありゃしないといったとこだろう。ちなみに、スタフラの経営陣は旧JASの人が多いらしいのだが、JASの訓練所があった大分で訓練をする、というのも何かの縁だったのかもしれない。
座席は初日だけに満席を覚悟していたのだが、なぜか隣の席は空いていて、満席よりも何人か少ないようだった。
ハイクオリティをうたう航空会社。どんなもんかと思って搭乗はしたのだが、、、。
目の前のモニターは使い方が分からず撃沈。期待していたコンセントはまずなかなか見つからず、やっと見つけて使用しようとしてもコンセントを指しても電気が通じていない状態。売りのタリーズコーヒーは体が受け付けない(珈琲飲むと下痢るんですよ、トホホ)ので楽しめずと、ハイクオリティを体感することがほとんどできなかった。
それにしてもいつまでたっても記念品を配りに来る気配がない。いったいいつになったら記念品が配られるのかイライラしていたが、ドリンクサービスが終わっても配る気配は一切なく、気が付いたら着陸態勢に入っていた。
※スターフライヤーのハイクオリティの中身については、ネット上でも賛否両論ある印象だ。大部分はエコノミー料金で少しクオリティの高いものを利用できるという意見なのだが、中には良くないといった意見も見られる。(たとえば「アンチスタフラ」などとググってみれば良くない印象の理由なども分かるだろう)
クオリティが低い!とする意見をよく見てみると、まず「思ったほど」良くないという意見が多い。開業時にかなり快適性を宣伝していたので、これは期待の裏返しといったところだろうか。自分と同じように使い勝手が悪いだとか、使い方が分からんといった意見だ。
次に多いのが「JALのクラスJやANAのスーパーシートプレミアムに比べると劣る」といった意見のように思える。まあ、クオリティが高いが売りだからこれらと比べるのは良く分かるのだが、このような意見を持つ人には「エコノミー料金で」という視点が完全に抜けている。羽田-北九州線を運航するJALとの比較で考えれば、そもそも通常運賃が違ううえ、クラスJは1000円プラスが必要だ。ちなみにコストパフォーマンスで考えれば自分なんかは明らかにスタフラの方が上だと考えている(クラスJが大したことないなと思ってしまった記事はこちら)。
三つ目は客室乗務員の対応。最近質の低下が著しいJAL・ANAの乗務員と比較してそれほど劣っているとも思えない。新規就航による経験のなさは散見されるものの、これについては、ソフト面ですぐにでも改善可能であるから何とも評価しがたい内容だろう。
四つ目はデザイナーへの批判かなといった感じ。これらの意見はデザイナーへ嫌悪感丸出しで初めからアラさがししている人がほとんどなので、これについては反対意見に乗せること自体お笑いだろう。
ただ、スターフライヤーの場合、期待させておいて大したことないというサービスが多い(ANAのスーパーシートプレミアム導入時みたい、、、)ので、この点は騙されないように気をつけなければならない。今回、記念品配布でいきなりそれに遭遇してしまった形になった。
搭乗した飛行機。北九州空港2番搭乗橋に接続している。スタフラ第一便となるSFJ71便に使われた機体のようで、2番機だった模様だ。雨が降り、日が落ちた状態でガラス越し撮影。なんだかうまく撮れてないなー、、、。
はじめて感じた「落ちるかも」、、
羽田での着陸は北側からだった。
北九州の動き出しは18分遅れの19:03(離陸は19:10頃)だったので、到着時刻も約20分遅れ程度の着陸になっていた。
それにしても、風が結構強いようで、かなり揺れる。時折フワッ、フワッとした腹にくる揺れがあり、集中力を維持しないと吐いてしまいそうだ。エンジンを噴かす不気味な音が断続的につづくイヤな感じだった。
正面のモニターに写る映像を見ていると、東京湾岸を反時計まわりでまわりこみ、いよいよC滑走路も正面、あと少しで着陸、、、という段階のようだ。あと少しあと少し、と吐き気をぐっと我慢していたら、機体がいきなり右に傾き、ぐぐっとカーブしてB滑走路に着地となった。
まさかのフェイント着陸。
このフェイント着陸には正直ビックリで、急な旋回に、吐き気は一気に吹き飛んで、これまで体験したことがない墜落するかもという恐怖を味わってしまった。
※羽田の着陸が大揺れだったのは、新興航空会社にありがちな未熟さに起因するものではなく、本当に風が強かったせいだった。着陸時間帯にあたる20時台・21時台の風速は14.5mと14.1mいずれも南南西の風だった。ちょうど雨も降り始めた時間帯で、条件がかなり悪かったようだ。この日最終便として運航する予定だった北九州23:30発のSFJ92便は天候不良のため運休となってしまったのだそうだ(北九州空港は10m弱の風だったのだが横風でそちらも条件が厳しかった模様)。
結局20:43、定刻よりも23分遅れでB滑走路に着陸した。移動にとにかく時間がかかり、最終的には20:57頃に到着した。
で、降機時に記念品が配られるのかと思いきや、なんと結局機内をおりても記念品の類が出てこない。ならば到着出口でもらえるのかと思ったら何もなしだった。
!!!!!!!!!!!
気が付いたら羽田の到着ロビーにいて、記念品など一切もらうことなどできなかった。
さっき新北九州空港で下りてきた客は大多数が結構大きなスタフラの袋を持っていた。なぜ自分の搭乗便は記念品の配布がないのか、、、。まさか有人チェックインをしなければもらえないのか、、、。半分記念品目当てでもあったから、これは驚愕の事態で、残念な気持ちで帰るはめになった。
驚愕のプレミアム・アイテム
さて、結局記念品を手に入れることができなかった。
自分が「初便」利用者全員に記念品という宣伝を、「初日」利用者全員に記念品と読み間違えてしまったのか。それでもたしか「初日利用者には記念品」といった類の記載を見ていたと思っていたので、家に帰ってから再度状況を確認してみた。
やはり初日利用者向け(念のため強調しておくが初便搭乗者ではない、、、)だったうえ、今朝の新聞に載っていたスターフライヤーの1面広告では、3月に搭乗する人たちには「スターフライヤー・プレミアム・アイテムをプレゼント」ともっともらしく書いてある。
ここまで大々的に書いているのにどうもおかしい。
まさか、チェックインの際有人カウンターに寄らなかったからもらえなかったのだろうか。
あとから郵送されてくるのかと三日ほど待っていたのだが、何もなかったので、我慢できずにコールセンターに電話してしまった。
事情を話したら相手はあまり分かっていない様子。記念品をもらってないと強く言ったら向こうも観念したようで、後日郵送ということになった。
まったく宣伝はしてるのに困った話で、せっかく搭乗したのに記念品をもらえなかった客も多かっただろう。
数日後、スターフライヤーから封筒が届いた。北九州空港で見た、飛行機から下りてきた客が持っていた袋のサイズに比べるとかなり薄っぺらだ。
「あれれ」と思いながら、なんじゃらほいと見てみたら、中から出てきたのは、スタフラの白黒のクリアファイルが二枚だけだった。
期待させるだけ期待させておいて、この程度のものだったとはちょっと残念でならなかった。まさに驚愕のプレミアムだろう。
ちなみに、この「プレミアム・アイテム・プレゼント」については、後日驚愕の事実が判明した。
翌月発売された雑誌エアラインの記事を読んでいたら、なんと初便のプレゼントは大盤振舞だったそうなのだ(革製のノート、絵葉書セット、搭乗証明書、ダイキャストモデル3機セットとなんと4点セット)。
初便搭乗者にプレゼントとはまったく書いておらず、初日搭乗者あるいは3月中搭乗者にプレゼントとうたっていたのに、この差はいったいなんなのだろう。だいたいクリアファイルには初日の日付とか就航限定文字とかが入っているわけでもなく、プレミアムとはほど遠い代物だった。
しかもネットサーフィンをしていてさらなる驚愕の事実が判明。
なんと、3月17日以降に搭乗した他の客が同様に郵送してもらったら、開業数日後に搭乗したにもかかわらず、記念品として絵葉書セット、搭乗当日渡せなかったわびとしてクリアファイル二つをもらえたというのだ。ネットサーフィンをしていると、それが一人ではなく何人もヒットするのだ。(ワタシ、初日に乗ったのにクリアファイルしかもらっていないんですけど、、、。)
初日の日付とか就航限定文字とかが入った記念品でもくれるのかと思っていたのに、普通のクリアファイルがプレミアム・アイテム。それだけでも驚愕だったのに、初日に登場した自分が、数日後に搭乗した人よりも記念品が悪いとは、、、。というより他の人には詫び品として渡っているものが記念品とは、、、。初便ほどの大盤振舞はないにしても、これはないだろう。
北九州空港で見た社長の振る舞いとあわせ、なんとも後味の悪い空港訪問になってしまった。
■今日の教訓!
・新開港に曜日は関係なし←平日でも人は多い!
・初便でなければ乗る価値なし←初日に乗っても2便目以降では大したグッズはもらえません
■今回の旅程
03/16
実家(車)→杵築駅10:27(JR日豊本線)→10:55宇佐駅11:30(JR日豊本線)→12:43朽網駅12:55(西鉄バス)→13:15[新北九州空港]18:45(SFJ 86便)→20:20[東京国際空港]21:45(リムジンバス等)→自宅
2006年03月16日
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