この記事は2010年6月に執筆した旅行記です。
■2006.03 山口宇部・新北九州・東京国際(旅行後)
今回は、新北九州空港開港と同時に就航したスターフライヤー(スタフラ)に搭乗しました。このスターフライヤー、これまでの航空会社とはひと味もふた味も違う戦略で参入してきた航空会社です。その背景を探ってみます。
新しいホスピタリティ
スタフラは、2002年に設立された新規航空会社である。設立当初は神戸空港を拠点にした戦略を練っていたようなのだが、最終的には北九州空港の海上移転に合わせて羽田-北九州線から新規参入した。この会社、これまでの航空会社とは一線を画した戦略で日本の空への参入を果たし、さまざまな方面から注目される中での船出となった。
開業当日にスタフラが新聞紙上に掲載した1面広告では、「新しいホスピタリティを乗せて。」と紹介している。
難しい横文字を使ってもっともらしく書いているが、要約すれば、スタフラの戦略は主に5つあげることができるだろう。
・深夜早朝運航
・多頻度運航
・高品質
・ハイセンス
・北九州拠点
深夜早朝運航
「運航時間を広げることで、お客様の時間の使い方をもっと自由にしたい。」
スタフラが初日に使った宣伝文句だ。スタフラの最大の特徴となっているのがなんといっても深夜早朝便の存在だ。
北九州は始発05:30発、終便23:30発。羽田も始発06:05発、終便23:50発と、実に20時間もの間運航が維持されている。この便があるおかげで夜遅くまで現地で過ごすという新しいスタイルが確立された。夕食をゆっくり食べてからでも飛行機に搭乗できる、出張の際前日に現地入りしなくても早朝便で行けば十分間に合う、弾丸ツアーが可能などといったメリットが浮かぶ。
昼間便なら他社も運航していて、特徴は出せないが、深夜早朝便はスタフラ独自のスタイルでかなり注目される。深夜早朝便がなくなりでもしたら、スタフラは何の特徴もない普通の航空会社と言っても言いすぎではないだろう。
多頻度運航
深夜早朝運航とともに注目されているのが、「多頻度シャトル運航」と称する便数の多さだ。
スタフラは就航と同時に羽田・北九州路線でいきなり12往復運航をはじめた。羽田の発着枠がない中、国交省がこれほどの配分をしたのも驚きだが、確保できた便数をすべて北九州に振り向けたのはさらに驚きだ。北九州は元々JALの5往復のみの運航だったが、スタフラの就航で一気に便数が増加。大幅な利用者増が期待されている。
もっとも、この運航便数、多頻度運航と言えば聞こえは良いが、実際には1時間半に1本程度の本数でしかない。羽田-福岡間ならJAL19往復・ANA17往復・SKY10往復と各社1時間に1本程度は飛ばしていて、実はあまり珍しいことではない。羽田-伊丹シャトル便のように毎時●●分と分かりやすいダイヤでもなく、定着するかは未知数だ。羽田の発着枠を確保できれば1時間に1本程度を飛ばしたいといった話もあり、今後の増便に期待したいところだ。
※毎時●●分とすると、覚えやすい以上に利用しやすくなるメリットがある。アクセスの鉄道やバスも一時間ごとならさらに覚えやすいし、●●分に家を出れば飛行機に乗れる、と一つの流れを確立できる。
高品質
「すべての席がゆったりとくつろげる、上質な心地よさにこだわりたい。」
「ビジネスの場で、お客様が存分に力を発揮できる移動体でありたい。」
これまでの新興航空会社は、安さで勝負を挑んでいたが、スタフラは安さより品質を重視するスタイルを全面に出している。当然ながら、売りとする品質も多い。
エコノミーの料金のままで足元の広いシートを採用し、座席にはコンセントや液晶モニターを設置。サービスドリンクにタリーズコーヒーや日田天領水を用意するなど低価格なままで高品質のサービスを提供する。
追加料金なしで比較的品質の高い物を提供するというもので、これまで日本の航空会社には見られなかった戦略だろう。
たとえば、JALにはクラスJ、ANAにはスーパーシートプレミアムといった高品質サービスは提供されているものの追加料金が必要で、乗った全員が高品質にありつけるというのは客にとって魅力的にうつりそうだ。
ハイセンス
新聞広告などではあまり宣伝されていないが、利用者以外でも注目の的となっているのがハイセンスである点だ。クリエイティブディレクターと称するデザインの専門家を迎えてデザインを戦略の一つに組み込んでいる。
最も目を引くのは「黒」をコーポレートカラーとして採用している点で、なんと飛行機自体も黒に着色。社員の制服からカウンター、配布物までも白と黒で統一した。
モノトーンであるものの、これが逆にハイセンスの特徴を出し、「乗りたい」衝動を感じさせるものになっている。
北九州拠点
これまで5便しかなかった北九州を拠点として参入したのも注目される点だ。多くの人が利用している福岡ではなく北九州。やや苦戦も予想されるが、かつての100万人都市北九州市とタッグを組んでおもろいことをやってきそうな予感だ。
北九州空港は九州でも珍しい24時間運用で、福岡空港の補完としても考えられ、スタフラの最大の特徴である深夜早朝便はまさにピッタリな存在だ。
新しく開業する北九州としたことで、まずは注目を集めることができた印象。今後は、北九州をハブとして、羽田以外の路線として例えば那覇や国際線への参入も考えられ、スタフラも近距離国際線への就航を視野に入れている。一番効率が良いのが羽田拠点であることは明らかなのだが、羽田は発着枠に限界があるから、北九州発着を増やすことで、乗継客の取り込みを図りたいところ。羽田-北九州-東アジア各地なんておもろい経路も開拓してほしいところだ。
これまでの航空会社にはなかなかなかった考え方で始まったスターフライヤー。
羽田の発着枠さえ確保できれば、羽田-北九州間で、5時から24時まで1時間に1本合計20往復、あるいは30分に1本合計40往復なんてことも夢ではない。今後どのように発展していくのか要注目で、日本の空にいよいよ飛び立った新しい風に注目しつつ、今回の旅を〆たいと思います。
2006年03月17日
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバック