※この旅行記は2011年10月にアップした2007年11月の旅行記です。
■2007年11月 東京国際・広島・岡南・岡山・鳥取・美保・出雲・石見・広島西の旅行後
今回の旅では、車で一時間ほどしか離れていない近接した空港を多数まわりました。話の締めはそんな近接空港をとりあげます。
意外とない二空港県
今回の旅で訪れた各県はともに二空港ある県だった。日本の空港は約100か所なので、単純計算すれば一県二空港なのだけど、面積が広い北海道や離島もあるので空港がない県も存在している。本土四島内で二空港以上ある県は、中国地方の四県と、北海道、青森、秋田、山形、東京、石川、愛知、大阪、兵庫、福岡、大分、鹿児島の12県。本土四島内で二空港あるのは結構めずらしいことになっている。
加えて中国地方の四県は空港が近接していることでも知られている。広島と広島西、岡山と岡南、美保と出雲は、車で一時間程度しか離れていない。東北も二空港県は多いのだが、中国地方の場合、小さい県ばかりなのに二空港県ばかりだから近接しているようなのだ。
空港新設と移転がポイント
近接空港が出現するパターンは大きく2つある。
一つ目は旧空港の残存だ。一県二空港の県では、愛知(名古屋と中部国際)、大阪(大阪国際と関西国際、八尾)、岡山、広島の各県がそれに当たっている。いずれも新空港を使用開始後も旧空港を使用しているパターンで、旧空港のほうが県庁所在地中心部に近く、利用しやすいところばかりだ。唯一岡山だけは全旅客便が新空港に移行したが、残りは当初の想定通り完全移転ができなかった。国内には新空港へ移転した空港は結構数があり、移転後に旧空港を廃止できた県として、秋田、香川、大分、熊本、鹿児島などがある。前出の四県は、残念ながら残存してしまったというのが正直な印象で、本来なら二空港も必要ないはずの県だ。
二つ目は県内の主要地方が二つに分かれているなどから二空港あるパターン。
こちらは、青森(青森と三沢)、秋田(秋田と大館能代)、山形(山形と庄内)、石川(小松と能登)、兵庫(神戸と但馬)、鳥取(鳥取と美保)、島根(出雲と石見)、福岡(福岡と北九州)、大分(大分と大分県央)、鹿児島(鹿児島と枕崎)が当てはまる(熊本空港と、橋でつながった下島に天草空港がある熊本もこれに近い)。たとえば、青森は津軽地方に青森空港、下北地方に三沢飛行場があるといった具合だ。
これらの県で面白いのは、県庁所在地に近い空港が大きく、もう一方は小さい特徴があることだ。大分と鹿児島は小さい方は定期便が飛んでいないほどで、青森、秋田、石川、兵庫、島根も小さいほうは1日2、3便しか飛んでおらず、実質的にほとんど機能していない。これらの空港は平成に入ってから整備されたものが多いようだ。
山陰はやや特殊
このような中、特殊なのが今回訪れた鳥取で、二空港の規模が似たり寄ったりになっている。鳥取は県庁所在地が東寄りにあるので鳥取空港も東側にあるのだが、西側の境港や米子付近も経済的に発展しているので、利便性のため美保飛行場(米子空港)が整備されている。便数や結ばれている都市は実は米子の方が多い。
米子空港は鳥取県の西端に位置している。西隣の島根県は県庁所在地の松江が県の一番東方にあり、出雲空港は松江のやや西寄りにある。この結果、米子空港と出雲空港はすぐの近くに立地することになった。
これだけ近いとさすがに路線が維持できないのか、ANAは美保のみ、JALは出雲のみに就航。美保は山陰で唯一の国際化をはかり、出雲は隠岐路線を飛ばして島根の拠点とし、すみわけをしている。
両空港は実は松江からの距離はほとんど差が無い。鳥取県は鳥取空港があるから、県中心部の位置だけを見れば、どっちか片方になってもあまり問題はないはずだ。
両者を比べてみると、立地条件は境港や米子に近い米子空港の方が分があるが、同空港は自衛隊との共用で使い勝手はやや悪いデメリットがある。一方の出雲空港は島根県営で松江や隠岐、県西部への玄関としてはベストだ。
それぞれに一長一短があり、一つにまとめれば良いのに、なかなかできないようだ。
日本全国を見てみると、同じようなことは実は各地で見られている。県単位で見るとなかなか分からないのだが、山形と仙台、小松と福井、山口宇部と北九州、高松と徳島、佐賀と長崎なども県境を挟んで結構近い立地になっているのだ。
これらはいずれも老舗空港が多い面白い特徴がある。これは陸上交通機関が発達していなかった頃に各県で空港整備が進められたことも一因になっている。当時は空港までの足が不便で近接していてもあまり問題がなかった。ところが近年は高速道路などの発達で、両空港間の行き来が容易になった。特に空港は各地で高速延伸が重点的に行なわれ、より遠い空港に短時間で行けることが多くなった。結果、より便利で大きい空港に客がながれる事態も発生するようになった。滑走路延伸で明暗が分かれた例もあり、福井は、滑走路延伸と合わせたジェット化で便利になった小松に客を奪われる形で定期便がなくなったほどだ。
空港がありすぎると無駄が多くなりやすい傾向はありそうだ。
近接しているからこそのメリットも
一方で、近接しているからこそ利便性向上につながっている例もある。
近接空港間で急な予約変更などを利用できるマルチエアポートがその一例。成田と羽田、伊丹と関空と神戸で実施されている。複数空港に同じ航空会社が就航している場合に活用されており、利便性の向上に結び付いているという。
近いことを活用し、近接空港で手を組むところもある。石川県の能登、小松の2空港では、石川県が両空港を一体的に宣伝し、両空港を使い分けて周遊するツアープランなども用意されている。通常行きと帰りで空港が違うと、プランが高くなったり、レンタカーで乗捨料がかかったりするものだが、それらが解消されたものもある。
これとは逆に、競合することで空港が注目されることも。たとえば名古屋飛行場では中部国際空港との競合もあって、利便性向上やPRに工夫をこらす一因になっている。
こうやって考えると近隣空港があることが一概に悪いと言い難い側面も見えてくる。
だいたい、空港なんて、近くても利用しない場合もあるし、遠くても利用する場合もある。あるいは近いから利用するという需要もあるだろう。
結局は空港が100あろうが200あろうが、活用の仕方次第、そんな印象がした。
こうやってじっくり調べてみると、日本にはたくさんの近接空港があることが分かりました。
一般的に空港が近接していると無駄と思われがちですが、どうも悪いことばかりではない模様です。無駄空港が多いという議論もありますが、はて本当かいな?と思いつつ、薄い堀下げのまま、今回の旅を締め括りたいと思います。
2007年11月24日
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