※この旅行記は2011年11月にアップした旅行記です。
■2008年7月 東京国際・三沢・青森・函館・奥尻の旅行後
今回は初めての本格的な離島訪問として奥尻島へ渡りました。奥尻には北海道エアシステムが飛んでいましたが、1日1往復運航で制約が多いものでした。島によく行く友人に聞いてみると、離島にはこのように小さな航空会社がちょこっと飛んでいることが多いようです。そこで帰宅後、北海道の離島とそのアクセス事情を軽く調べてみました。
■北海道の離島は主に5島
実は、奥尻訪問を決めたあと、沖縄への渡航を本格的に検討しはじめ、離島にかなり興味が湧いてきていた。まずは北から攻めて北海道の離島から見てみるかと調べてみると、北海道は離島があまり多くないようだった。
北海道の離島として有名なのは北方四島だが、これらの島々に日本人は上陸できないし、人が住めないような小さな離島はいくつかあるものの、有人離島はとにかく少ない。今回行った奥尻以外は、天売島、焼尻島、礼文島、利尻島の4島ぐらいしかないようなのだ。しかも5島あるにはあるのだが、天売と焼尻、礼文と利尻はそれぞれ近接した群島になっていて、実質的に3か所にしか島がないような状況だった。
長崎みたいに離島だらけの県もあるぐらい島が多い島国日本にあり、だだっ広い面積を持ちながら、これだけしか離島がないのは、かなり珍しいことだろう。
■船が強い島々
そんな少数先鋭のこれら5島について、アクセスを中心に少し掘り下げていく。
奥尻島(おくしりとう)
まずは今回訪れた離島、奥尻島から。
奥尻島は北海道の南西部、渡島半島の西側にある、南北に長い水滴のような形をした島だ。渡島半島が最も西に突き出た岬の先にあり、まるで分裂したかのように存在している。人口は4000人弱、周囲も70キロ弱あり結構大きな島だ。島の名産はうにで、経済圏は函館との結びつきが強い。平成5年の北海道南西沖地震の際、大津波に襲われて日本全国に知られた島だ。
アクセスは空路か海路になる。
空路は毎日昼間時間帯にHAC函館線が1往復飛んでいる。この地方の中心都市である函館からの所要時間は30分で、離陸したと思ったらすぐ着陸なのだが、空港は島中心部の奥尻地区ではなく、南端の青苗地区に位置していて、空港から奥尻地区までは車で40分ほどかかってしまう。ビジネスにもレジャーにも使いづらい昼便のみの運航でもあり、不便と感じる人が多いのではないだろうか。
一方の海路は、江差と瀬棚から航路が開設されている。距離は瀬棚の方が近いが、瀬棚便は夏場の1日1往復のみで江差便が主流の運航になっている。江差-奥尻間は、夏場1日2往復、冬場1日1往復で、所要時間は2時間強だ。
便数だけの比較なら船の方が使いやすいように見えるのだが、単純に船が良いかというとそうでもない。というのも海路はアクセスの港に行くまでが大変というデメリットを抱えているからだ。函館からの場合、江差まで鉄道や車などで移動が必要になる。
江差は北前船の中継地として栄えた港街で、倉が多いことで知られている。だが、函館に比べると小さすぎ、島への拠点としては魅力はあまり高くない。瀬棚は江差と比べ札幌に若干近く、航行時間も短いものの、都市規模は江差よりもさらに小さいうえに鉄道もない場所で車でしかアクセスできない。
結局、海路でも空路でも、旅行にはなかなか行きづらい島、それが奥尻島の印象だった。
焼尻島(やぎしりとう)
少し北へと移り、留萌の北西に位置する焼尻島と天売島を見てみる。
まずは焼尻島。この島は、北海道の中西部に位置する離島だ。人口は400人ほどで周囲は10キロほどのごく小さな離島だ。
対岸の羽幌町に属している島で、経済圏は留萌の圏内なのだが、距離はかなり離れていて、あまりつながりの強い大都市は見られないのが特徴だ。自然が多く残る島で、羊が多数放牧されているそうだ。
島内に空港はなく、アクセスは海路のみになる。羽幌から沿海フェリーが就航していて、夏ダイヤで見るとフェリーが1日2往復、高速船が1日2往復、冬ダイヤではフェリーが1日1往復運航されている。高速船だと羽幌から約30分で行きやすい島になっているが、拠点の羽幌はごく小さな港町で最寄の鉄道駅までも車で数時間かかるような場所。奥尻島同様にアクセスしづらく、じっくり計画をたててから行く島といった感じだ。
天売島(てうりとう)
焼尻島の沖合に位置する島。焼尻とセットの島で、焼尻同様に羽幌町に属している。焼尻よりわずかに島民数は多く、高校も存在しているという。野鳥が非常に多いことで知られており、渡り鳥などを観察するには絶好スポットなのだそうだ。
焼尻同様に島内に空港はなく、アクセスは海路のみだ。焼尻経由で羽幌から沿海フェリーが就航しており、所要時間は高速船で約1時間となっている。全便焼尻経由だから、便数などの諸条件は焼尻と同じで、やはり羽幌までの足が最大の問題点となっている。最寄駅となる留萌からはバスかタクシー、自家用車で来る必要があり、羽幌の公式サイトでは札幌からは車で来るよう案内がでているほど。気軽にはなかなか行けない島という印象だ。
利尻島(りしりとう)
最後は一般日本人が行ける最北諸島を形成する利尻島と礼文島だ。
利尻島は北海道の最北端の都市である稚内の沖合いにある島で、周囲は70キロ弱ある。島は利尻町と利尻富士町の2町に分断されていて、車で1周するのも1時間は必要なほど比較的大きな島になっている。利尻富士と呼ばれる円錐形の山を中心にした真ん丸な島で、風光明媚なことから、雪がなくなる夏になると利尻富士目当てに登山者が殺到するのだそうだ。人口は7000人ほど。経済圏は稚内とのつながりが強く、稚内周辺からは晴れていれば利尻富士がきれいに見えるらしい。
アクセスは空路と海路がある。
空路はANA札幌便が就航しているのみだ。空港は島中心部の鴛泊に程近い場所にあるので利便性は良いのだが、便数は1日1往復と少ない。
一方の海路は、稚内便が夏場で1日4往復、冬場で1日2往復あるほか礼文便も運航されている。稚内から2時間弱かかるものの、便数だけ見れば船の圧勝だ。
空路は札幌発着だから、札幌からの移動なら飛行機が便利だ。だが、船がかなり使いやすく、稚内を拠点にすれば、気軽に日帰り観光もできてしまう。稚内には、鉄道や高速バスのほか、便数が少ないものの、羽田、札幌(夏場は名古屋と大阪からも)飛行機が飛んでいて、最北端とは言っても意外とアクセスしやすい。このため、利尻島は、天候さえ味方してくれれば、北海道の離島の中では最も行きやすい島になっている。
ただし、日本最北の土地なので、行くまでの交通費はかなり高額。都内で売られているツアーを見てみても普通に海外に行けてしまう値段が付いているので、お金の面で二の足を踏む人が多そうだ。
礼文島(れぶんとう)
最後に取り上げるのは礼文島だ。
利尻島の北に位置する島で、日本人が気軽に上陸できる日本最北の有人離島である。島の大部分は丘陵地帯で、特有の高山植物が見られる島として知られている。利尻と並んで語られることが多い島で、経済圏は利尻と同じく稚内との結びつきが強い。
利尻と異なるのはアクセスが海路のみである点。実はこの島は北部に空港があるにはあるのだが、旅客便は飛んでおらず、自家用機で来る場合しか利用できない状況になっている。この空港は稚内空港より緯度が高く、日本最北の空港なのだが、残念なことに、一般人は海路を利用するしかアクセス方法がないのだ。
ただ、船は稚内便が1日3往復あるうえ、利尻便が運航されている。利尻同様便数が確保されており、かなり利便性が高いアクセスが実現しており、あまり不便さを感じない。問題は利尻同様にアクセスのお値段の高さだろう。
礼文、利尻はともにハイカー憧れの離島として知られている。このため利便性が高い船便は、夏場、難破船のごとく大混雑になるのだそうだ。それを考えれば、飛行機が飛べばそれなりに利用を検討する人はいそうなのだが、仮に飛行機が飛んでいたとしても、空港は島北端の不便なところにあるので、使いづらい印象は拭えない。島の中心地は島南部の香深で、港はそこにあるから、空路は太刀打ちできないといった感じがする。
■特殊な条件の離島航路
こうして見てみると、いずれの島も船がメインアクセス交通のようだ。
普通、離島は海が荒れたときの代替として飛行機が重宝するらしいだが、北海道の場合は冬の気候が厳しく、船がダメなら飛行機もダメというパターンが多いのも船シフトの一因であるようだ。
加えて、北海道の場合は、航空事情がちょっと複雑なのも船メインとなっている要因になっている模様だ。
実は、今定期便が飛んでいない礼文を含め、空港がある奥尻、利尻、礼文の3島はつい最近までANA系列のエアー北海道(ADK)が旅客便を飛ばしていた。奥尻は函館線、利尻と礼文は稚内線があり、今より利便性が高かったのだという。
だが、各空港とも滑走路が短く、運航できる機種が小さいものしかなかった。小型機は一度に多くの輸送ができずツアーなどを組みにくいうえ、小型ゆえに天候に左右されやすく運航は不安定。利用者の絶対数が少ないので、定着させるのも一苦労なのだそうだ。そして、大量輸送が可能な中大型機に比べて輸送効率が悪く、航空会社も小型機ではなかなか定期便を飛ばしたがらない。そんな中でそれに唯一対応できたのがADKだったのだが、ADKの機材は古く、メンテナンスの問題が浮上、撤退してしまったのだ。
撤退されると、日本には他に小型機定期便を運航している受け皿はない。
結局、大きな機材に対応した滑走路が求められ、利尻と奥尻は延伸を実施。長年使い古した小型機材しか持たないADKは、非効率な3空港の輸送を他社に譲れたことで会社自体を畳んで撤退してしまった。
かわりに就航したのが、少し大きな機材を所有するエアーニッポン(ANK)と、北海道の出資を受けたHACだった。ANKは利尻、HACは奥尻に参入した。
以前の滑走路では2社の機材は飛ばせなかったが、滑走路が延びたことで運航が可能になったから就航したのだが、あくまでADKがこれまで飛ばしてきた空路を維持するための受け皿に過ぎない。2社の参入で利尻と奥尻は空路が残ったのだが、少し大きな機材になったことで、便数がそのままだと搭乗率は悪くなるから、いままで複数便飛んでいた利尻は減便されてしまった。結局、滑走路延伸ができなかった礼文は空路が途絶え、利尻と奥尻はかろうじて1日1往復が飛ぶだけの空港になってしまったのだ。
便数が少ないということは、行きたい時間帯の便が少なくなるということだから、気軽に利用することができなくなってしまう。結果として船主体のアクセスにならざるを得なくなったという流れがあったようだ。
北海道の島々は、冬に観光需要が極端に落ち込むデメリットもある。沖縄のようにビーチがあるわけでもないから、離島観光目的の需要喚起も難しく、空路も海路ももっぱら生活路線のような印象。生活路線だから、便数があるなど島への移動はまだ利用しやすいのだが、地元密着ゆえ、港や空港のアクセスが時間的あるいは金銭的に不便という欠点があり、よそから来る観光客には利用しづらいものだった。
とにかく行きづらい。
北海道の離島はそんな印象でした。なかでも空路は事業を成り立たたせるのがなかなか難しいようで、課題が多いように思えます。
初めて離島の旅を体験した今回は、離島航空の難しさを少し実感できました。
まだ離島訪問を始めたばかり。まだ日本にはたくさんの離島があり、離島の空港もまだまだある模様。次の離島がどうなのか、じっくり体感することを期待しつつ、今回の旅を締め括ります。
2008年07月22日
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