■2008年5月 東京国際・松山・高松・徳島・高知の旅行後
今回まわった四国の空港はどの空港にもお遍路さん休憩所(着替室)が設けられていました。この休憩所、四国八十八ヶ所を巡る人々のオアシスとして四国の空港だけにある珍しい施設です。
今回はそんな、地域ならではの珍しい施設に注目してみます。
地域色豊かな施設といえば、観光案内コーナーがあるが、パッと浮かぶのはそのぐらいだし、だいたいの空港にあって、あまり珍しいものではない。四国のお遍路さん休憩所はかなりレアなケースと言えそうだ。
そんな珍しい施設。よくよく探してみると実は結構見つかった。
■足湯・温泉
まず初めは、足湯・温泉を一例としてあげたい。
足湯や温泉は単体で存在するのが普通で、併設施設としては空港じゃなくても結構珍しい。湯の国日本ならではの施設だし、地域カラーが出やすいのが特徴だ。
国内空港で最も有名なのは、セントレアにある国内空港初の共同風呂で、足湯は北九州や鹿児島にある。
鹿児島は利用料が無料で、しかも近隣の天然温泉からお湯をひく本格派になっている。案内所ではオリジナルデザインのタオルまで売られていて、話題性は絶大。セントレアや北九州が面白みを前面に出しているのに対し、鹿児島は地元温泉のPRも兼ねた優れた施設なのだ。
足湯や温泉と似た施設としてラウンジなどにあるシャワー室は国内にいくつか見られるが、セントレアのように広い湯槽に浸かれるのは魅力のひとつだろう。
■博物館
次にあげたいのが博物館系のみどころだ。
航空博物館に類するものは多くの空港にあり、それほど珍しいものではない。三沢や成田国際、小松は空港内か周囲に本格的な博物館があって実機に触れられるし、空港内に飛行機や模型を置く例は多い。
そんな中で珍しいのが、博物館でもないのに実機に乗れる空港だ。但馬、高松、佐賀は引退したYS11が周囲の公園などに展示されていて、イベント時に限られるが一般公開されている。空港でなければなかなか思いつかない展示品だろう。
航空と関係ない博物館がある空港はさすがに見られないが、展示室程度であれば、造成の際に発掘された物を展示する函館、ロボットに関する展示スペースがあるセントレアなどいくつか見られる。中途半端になりやすい待ち時間にちょこっと寄れる注目すべき施設と言えるだろう。
■スポーツ施設
面白い施設としてよく出てくるのが、宮崎にあるパター練習場だ。
宮崎がレジャーのメッカであることを意識してできた施設で、実際に自分の持ってきたパターで練習ができる。ターミナルを出た目の前にあるので、飛行機降りてすぐパターの具合の調整ができるというわけ。存在がほとんど知られていないし、実際に使っている人は皆無に近いが、オモロイ施設としてPRしたいものだ。
スポーツと言えば、騒音対策などの関係で空港周辺に設けられることが多い緩衝帯には、スポーツ施設や公園が造成されることが多く、全国の空港でたくさんの施設が見られる。
宮崎はパター練習場だったが、広島や熊本、喜界などには空港に隣接してゴルフ場がある。松本は空港横にJリーグの試合ができる運動場があるほどだ。
ほとんどの空港では緩衝帯を公園にしており、その多くは地域色豊かな公園になっている。空港がその地域の玄関口であることを意識して造成されており、地域の特色を現すモニュメントがある例は多い。そして空港脇にあることから、必ずと言って良いほど展望スペースがある。
そんな数ある周辺公園のなかでも特徴的なのが、稚内空港脇にある稚内空港公園で、この公園は雪に覆われる冬場、犬ぞりの全国大会が開かれることで有名になっている。福島も、正面にある福島空港公園で空港と連動したイベントを頻繁に開催していて、イベント会場として使いやすいようだ。
■日本庭園
そんな緩衝帯を使った施設の中で特に珍しい存在のひとつが、広島の「三景園」だろう。本格派日本庭園が造成されていて、ターミナルから歩いて5分ほどで、ゆっくり落ち着ける空間に入り込めるものになっている。広島の空港公園にはホテルも立地していて、一日ゆっくりできるスポットとなっているのだ。
広島ほどの本格派ではないが、お隣の岡山にはターミナル前に後楽園を模した庭園風広場がある。対馬も敷地内に対馬独特の建物である石屋根が移築されている。かなり簡易になるが、空港いただけで、地域の名所を擬似体感し行ったつもりになれるというすぐれもの。観光している時間がない旅行者にちょうどいいスポットだ。
■宗教施設(寺社仏閣)
緩衝帯には寺院がある空港もある。
まもなく開港の静岡は、造成にあわせて周辺を買い取った際、一緒に隣接する寺院「石雲院」を買取。寺院を空港が管理するという珍しいものになる予定だ。
この寺院、そこらによくある安っぽい寺院ではなく、今川家、武田家、徳川家の庇護を受け、日光の陽明門を模した山門を持つなど、地域を代表する寺院なのだ。名前も空港にピッタリ。空港側には展望台を設けるなど、人を集める工夫もしている。
宗教施設と言えば、羽田のターミナル内に神社があることは意外と知られていない。第一ターミナル内に、こぢんまりとあるのだが、新橋の航空神社から分霊した由緒正しき神社で、航空安全を祈る人が出発前に訪れている。平成初期まで使っていた旧ターミナル屋上にあったものを移設したもので、発想は百貨店屋上にあるのと似たような理由があるのだろう。
イスラム教徒に配慮して祈祷室を設ける例も。イスラム圏の空港には当たり前のようにあるらしいが、日本では関空にあるのだそうだ。
■行政施設
文化的施設だと、鳥取には小さな図書館が設けられていて、実際に貸し出しが可能。松本も、緩衝帯の公園内に市営の図書館がある。いずれも航空に関する書籍が豊富で、空港ファンも楽しめる施設になっている。
行政施設を設ける例も。能登は空港新設にあたり、人を呼び込むために土木事務所など県の事務所をいくつかターミナル内に入居させて話題となった。
図書室のある鳥取は、国際線ターミナルを活用するため、国際交流会館という鳥取県の渡航支援窓口が開設されている。また、但馬には旅券の発券窓口がある。街中にあるのが普通のこれらの施設、非常に珍しい存在ではあるものの、両空港とも国際定期便の就航がなく、そこから飛び立つことができないというなんとも残念なものになっている。できれば、成田や関空などの国際空港、周辺人口が多い羽田や伊丹なんかにあったほうが便利かもしれない。
■商業施設
能登と言えば、道の駅が併設されていることでも知られている。無料駐車場が完備されているものの、航空便数が少ないために大規模施設を持て余している空港の人寄せ施設としてはうってつけだろう。入居させた行政施設と合わせ、工夫がうまい能登は全国から視察者が絶えないという。
空港内商業施設としては、名古屋に今秋、国際線ターミナルビル跡地を利用してショッピングモールがオープンする予定となっている。
ただ、新千歳は旧ターミナル地区に商業施設を開設したものの、数年で撤退。広島西もゲームセンターを設置していたがすでに閉店しているなど、商業施設が常にうまくいくかというとそうでもないようだ。
国内空港の主な珍しい施設
稚 内 空港公園(犬ぞり全国大会)
三 沢 航空博物館
福 島 空港公園(空港連動イベント)
成田国際 航空博物館
東京国際 神社
能 登 県事務所、道の駅
小 松 航空博物館
松 本 隣接図書館、本格競技場
静 岡 寺院
名 古 屋 ショッピングモール
中部国際 共同風呂
関西国際 祈祷室
但 馬 YS11展示、旅券発券窓口
鳥 取 図書室、国際交流会館
岡 山 日本庭園
広 島 隣接ゴルフ場、日本庭園
高 松 YS11展示
北 九 州 足湯
対 馬 石屋根(地元特有の建造物)
佐 賀 YS11展示
熊 本 隣接ゴルフ場
宮 崎 パター練習場
鹿 児 島 足湯
喜 界 隣接ゴルフ場
こうして見ていくと、全国の空港には意外と様々な施設があることがわかりました。海外だと、映画館やショッピングモールを設けるのがトレンドとも聞いています。
人を呼びこめずに苦労している空港も多いようなので、ぜひこれらの事例を参考に、一人でも利用者が増えてほしいと願いつつ、今回の旅をしめたいと思います。
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