2008年09月08日

鉄道で南東北へ(旅行後)

※この旅行記は2012年6月にアップした旅行記です。


■2008年9月 庄内・山形・仙台の旅行後

今年の夏は東北の空港を相次いで訪ねました。東北では、仙台が地域拠点の空港として発展し、山形から客を奪うほどだとか。
今回はそんな地域の拠点になっている空港、いわゆる地域ハブ空港を取り上げます。




各地方には地域ハブ空港があるのだが、よくよく見てみると各地方でその役割はかなり変化にとんでいた。

■東北地方
まずは今回訪ねた東北の地域ハブ空港から。
東北は、路線数、利用者数ともダントツだから誰がどう見ても地域ハブ空港は仙台空港だ。だが、実は仙台空港は東北の他県とは一切直結しておらず、東北地方の地域ハブ空港なのかどうかは微妙な位置付けになっている。

東北は各県に1〜2空港、仙台以外に8空港がある。しかし、仙台との間には空の便はおろか直行バスも運行されていないのだ(かつて山形行きバスはあったが今は廃止済)。
それだけ聞くと仙台へは他県からの利用はあまりないように見えるのだが、仙台空港は鉄道直結なので、鉄道を乗り継げば福島県の北部、山形県の東部、岩手県の南部くらいまでは容易にアクセスできる。このため、これらの地域からは仙台空港利用者は実際には増えているそうだ。例えば、山形駅を基準にすると、山形空港はバスで40分ほどの位置にある一方、仙台空港は、山形から仙台まで約1時間、乗り換えて仙台空港まで約20分で、アクセス条件はあまり変わらない、といった具合。加えて、山形や岩手、福島県から仙台空港利用者が増えたのは、高速道路整備で自家用車利用が便利になったことも一因だそうだ。

一方、青森や秋田、岩手北部、山形西部、福島南部の人は、一度仙台に出て国内各地へ移動するというのはあまり多くない印象だ。仙台駅前からは東北各地へ高速バスが頻発している。そこで、仙台駅までバス、仙台駅から仙台空港までは鉄道という動きで、仙台空港を地域ハブ空港として機能させる土壌は整っているが、まだそこまでは到達できていない状態のようだった。

■北海道地方
北に目を移そう。
北海道は新千歳空港がハブ化されており、航空路ネットワークという点では理想的な地域ハブ空港になっている。日本で最もわかりやすい地域ハブ空港と言えそうだ。
新千歳からは、距離が短く陸路で移動しやすい旭川や帯広便はないものの、利尻、稚内、女満別、中標津、釧路には航空便が飛んでいる。新千歳は道外便が多数飛んでいるが、北海道内の他の空港は道外便は東京国際と大阪(関西国際or大阪国際)便がほとんどだから、地方から新千歳へ飛び、そこから道内各地へ向かう乗り継ぎ需要が多い印象だ。
ちなみに航空便がない帯広へも新千歳からはバス便が開設されていて、地域ハブ空港から結ばれるスポークの役割を果たしている。

■関東地方
東京国際空港(羽田)成田国際空港の二枚看板。羽田は国内線のハブとして、成田は国際線のハブとして日本を代表する空港だ。
この二空港は、関東の拠点としてみると、ほとんど地域ハブ空港化されていない仙台とも、域内航空路が充実している新千歳とも様相が異なるものになっている。
関東には羽田、成田のほかに調布、それに伊豆諸島の島々の空港がある(百里が近年中に開港予定)。羽田や調布に島便があるにはあるが、過半数にあたる5県(群馬県、栃木県、茨城県、埼玉県、神奈川県)には空港がないので基本関東内の航空ネットワークはない。一方で、羽田も成田も地上交通が充実しており、鉄道は2路線が直結。バス便も関東全県との路線が多数設定されている。関東各県と結ばれたバス便に加えて羽田からだと山梨行、成田からだと福島行や仙台行もあるほどだ。
北海道が道内航空便を充実させた地域ハブ空港なら、羽田や成田は地方との移動は航空便、関東内移動はバス便によるハブ化がされている地域ハブ空港と言えるだろう。

■中部地方
中部国際空港が地域拠点だが、中部地方の南西端に位置していて、東北と同じ様にあまり強い地域ハブ空港になっていない。
中部は関東のように地上アクセスが充実しているわけではなく、バス便は愛知県内便が中心で、三重県北部、静岡県東部、岐阜県南部の便が多少ある程度だ。鉄道は名古屋鉄道が直結していて愛知県内と岐阜県南部は直行列車がカバーしているが、北陸や長野へは結構所要時間がかかるので利用にあまり結び付いていないようだ。北陸の場合は鉄道だと愛知に出るのも大阪に出るのも大きくは変わらないので、中部が拠点となるにはややハードルが高い。
中部地方内の航空便を見てみると、中部・新潟便、名古屋・新潟便があるだけだ。新潟は上越新幹線の影響で、中部がある愛知より東京とのつながりが強い。さらに富山と能登は羽田便しかなく、小松も羽田とのつながりが強いため、中部地方の各地と国内各地とをつなぐ地域ハブは、中部というより羽田・成田になってしまっている。

■近畿地方
近畿は、よく知られている大阪国際空港(伊丹)と関西国際空港(関空)、神戸空港に加え八尾、南紀白浜、但馬の6空港がある。北西側の3県(三重、京都、奈良)には空港がなく、域内移動は地上交通が中心だ。
伊丹関空の二つがメインの地域ハブ空港に当たる。伊丹と関空の関係は、関東の羽田と成田の関係に非常によく似ている。アクセス形態はそっくりで、域内移動は主にバスと鉄道が活用されている。
大阪は、梅田となんばに高速バス、鉄道ともに拠点がある。伊丹空港は梅田、関空はなんばに出やすいので、空港から乗り継ぎでの利用は多そうだ。

■中国地方
5県に10空港もあり、山口以外の各県は2空港以上が存在している。数が多くて利用が分散しているのか、地域ハブ空港がはっきり見られないのが最大の特徴だ。
10空港のうち隠岐は離島空港、岡南は定期便未就航。鳥取、美保(米子)、山口宇部の3空港は羽田便しかない。強いて挙げれば、国際線・国内線ともに複数路線の就航する広島空港が地域ハブ空港としての役割を持っていそうだが、域内便は就航していないし、他県へ直接行けるバス便もなく、使い勝手はあまりよくない。次に大きい岡山も似たような感じだ。
山陰からはバスや電車で広島に出るより、飛行機で東京に出るほうが容易な感じ。山陽は新幹線との競合もあり、新幹線で大阪へ出てしまう人も多いようだ。
格安航空も眼中にないのか就航していないので、気軽にどこかひとつの空港に集まって飛び出すといった感じではないようだ。

■四国地方
中国地方同様に地域ハブ空港に当たる空港が見当たらない。四国には各県に仲良く1つずつ計4空港がある。国際線が1日あたり複数便飛んでいる空港はなく、中国地方以上に各空港が似たり寄ったりな印象だ。完全に各県の特徴が出ている地域で、どこかひとつにハブを持ってまとめるような地方ではないようだ。
本四間の連絡橋が出来てからは、鉄道や車で本州に出る人も多く、飛行機で移動の際は、徳島なら大阪や神戸、香川なら岡山へ橋を渡って出てから搭乗する動きも見られる。各空港とも羽田便があり、松山や高知は伊丹便も多数運航されていることから、飛行機で大阪や羽田に出て、そこをハブとするパターンもあるようだ。

■九州地方
離島空港も多く存在する地方。各県に1つメイン空港がある。
最大の地域ハブ空港は福岡空港だ。福岡を発着する九州域内の航空便は宮崎、鹿児島、一部の離島便(対馬、福江、天草、奄美)がある。福岡は地上交通も充実しており、九州全県への高速バスが発着。博多駅まで地下鉄で5分で、そこから各県への特急も頻発しており、北海道以上に地域ハブ化した空港になっている。これらアクセス交通の充実で、福岡空港には大分や熊本などからも気軽に多くの利用者があるほどだ。
一方、九州は、各離島の拠点が複数存在するという、他の地方と大きく異なる特徴もある。長崎、鹿児島が各県の離島の玄関口として機能しているし、奄美は奄美群島のハブになっているのだ。
加えて、九州各県の代表空港はそれぞれに多くの路線が乗り入れており、福岡で乗り継がなくても各空港から多くの場所(少なくとも羽田、中部、伊丹位は)に直行できるというメリットもある。
九州は、各県から日本各地へ飛んでいける中で、長崎や鹿児島が離島とのつなぎ役を果たし、福岡が地域内を結び付けるという多重構造になっていた。福岡が強いハブのように見えて実際にはそればかりでない、理想的な地域となっているようだ。

■沖縄地方
本島にある那覇空港が地域ハブ空港で、定期便が就航する沖縄県内のほとんどの空港と結ばれている。
沖縄は、本島周辺と宮古諸島、八重山諸島と大きく3つのグループに分かれるものの、本州からの場合、那覇便しかない空港が多く、宮古、八重山(空港は石垣)へ直行できない。ANAは石垣直行便をやめて那覇経由を推奨しているぐらいで、那覇の完全な地域ハブ空港化がなされている。



こうして見てみると、地方によっても地域ハブ空港の位置付けがだいぶ異なっているようです。
日本の場合、航空利用者のほとんどは羽田便利用です。目的地が羽田(つまり東京)という人が多いようで、各地の空港もとりあえず東京とのつながりさえ確保できていれば問題ないと言った感じにみえます。乗継に利用するにもとりあえず羽田へ飛べれば問題がなく、東北、中部、中国、四国が明確な地域ハブ空港を持たないのは、近場の地域ハブに行くぐらいなら東京(羽田)へ行ってしまう流れができているからかもしれません。
北海道や九州が、新千歳や福岡のような地域ハブ空港をつくれるのは、羽田からある程度の距離があるから。そもそも新千歳や福岡も羽田便利用者は非常に多く、複数社の競争で価格の下落も顕著。格安化でさらに人を集めている背景もあり、東北や中部、中国、四国が簡単に真似できるわけではないようです。
地方ごとに空港活用の戦略を変えていく必要があることを実感したところで、今回の旅を〆たいと思います。

posted by johokotu at 18:00| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | ◆旅行記 | 更新情報をチェックする
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