2014年09月10日

格安の波に乗って中四国へ(旅行後)



■2014.09 成田国際・広島・松山・笠岡農道・岡山・美保・出雲・東京国際の旅行後

今回は久々の中国地方の空港訪問となりました。
新規航空会社がなかなか就航してこなかった中国・四国地方は、ここ数年で相次いで新規航空会社(新規社)や格安航空会社(LCC)が就航。ついに航空格安化の波が押し寄せています。


ぐっと増えた選択肢
まずは中国・四国地方に就航する新規社やLCCの状況を見てみよう(離島は除く)。

鳥取:なし
米子:SKY(2013.12〜、千歳・成田・羽田・神戸・那覇)
出雲:なし
石見:なし
岡山:ADO(2013.03〜、千歳)
広島:SJO(2014.08〜、成田)
岩国:なし
宇部:SFJ(2014.10〜予定、羽田)
徳島:なし(かつてSKY就航あり)
高松:JJP(2013.12〜、成田)、SJO(2014.08〜、成田)
松山:JJP(2013.06〜、成田)、APJ(2014.02〜、関空)
高知:なし

こうしてみると、中国・四国地方には、昨年から一気に新規社・LCCの就航が相次いだことが分かる。
競争がなかったためにこれまで九州より運賃が高いこともあった中国・四国地方に行きやすくなったのは嬉しい限り。利用者の選択肢がかなり広がった印象だ。

各社の就航地を見てみると、それぞれの戦略が見えてきて面白い。
AIRDO(ADO)はANAが維持できなくなった路線への付け替え参入となっている。似たような路線でより利用者が多そうな広島には就航しておらず、ANAの意向を強く受けていることが分かる。
ジェットスター・ジャパン(JJP)は四国北側2空港への就航。徳島には就航しておらず、新幹線ですでに開拓されている需要を奪いに来ている感じにも思えるものの、山陽には乗り入れておらず、新幹線との完全競合は避けた格好になっている。
Peach Aviation(APJ)は、関空からの距離も考えてか松山のみの就航だ。距離だけなら、出雲とか高知とかも候補に上がるのだろうが、就航先を決定するに当たっては、後背地人口や市街地への近さなども考慮しているように見える。
最後に参入した春秋航空日本(SJO)は広島と高松。元々SJOは親会社の春秋航空が高松に就航していて、初めから就航候補地だったのだろうが、JJPが先に参入してしまったことで最終的に一往復に減便するなど、計画が狂っているようにも見える。中国・四国地方に就航はしたいものの、他のLCCとの競合は避けたい意向が感じられる。
同じようにLCCとの競合を避けたのがスカイマーク(SKY)だ。SKYは美保(米子)に2013年12月に就航。元々高松等への就航も構想として発表していたものの、最終的に就航したのは米子のみで、LCCとの競合を嫌ったのがはっきり読み取れる。SKYが他のLCCと異なっているのは米子に複数路線を就航させた点で、羽田路線だけでは大手との値下げ合戦が目に見えているので、拠点化で定着を図る意図が感じられ、LCCとも一線を画しているようだ(ただ、すでに10月以降の路線縮小が決まっている)。

個人的に注目しているのは、新興社・LCCの就航が山陰では唯一の空港となっている米子で、SKYがいきなり拠点化したのはかなりの驚きだった。
新千歳や那覇、神戸線は独自路線で便利になったし、東京路線が大手と競合する主戦場となっているが、早速ANAが対抗値下げし、格安化が始まるなど効果抜群だったが、いまいち利用者が増えないのが残念なところだろう。

就航にはアクセスが重要
そんな風に、徐々に格安各社の就航が増えているものの、今回の旅行で感じたのは、航空の格安化に周りがついてきていない現実だった。

成田から広島までは今回1500円だった。そこまで安くなくても、SJOは通常時6000円弱で成田から広島まで飛ぶことができる。
ところが、その値段で広島に着いてしまうと、市内へ出るのにかなり金がかかる感じがしてしまう。リムジンバスだと広島駅までは1340円。白市経由でJRでアクセスしても1150円と結構高い。広島は山奥の空港だから、レンタカー需要も多いが、本文でも書いた通り、周囲に格安レンタカーはなく、ガソリンもボッタクリ価格で、空港からの足という点で二の足を踏む客は多そうだ。

LCCを利用する層は、元々深夜バスとか青春18きっぷとかを使っていた人が多いと思われるし、若者比率が高いので、免許を持たない客やレンタカーに慣れていない客も多そうだ。
現地に着いてから街までタクシーなんてリッチな感覚の人はほとんどいないだろうから、街までのアクセスの公共交通機関がしっかりしていないと、なかなか集客できない恐れがある。これは、安さはもちろん、気軽に乗れる運行頻度も大切かもしれない。

今回訪問した空港では、松山が、街・観光地まで近くて、格安ですぐにアクセスできるからLCC就航にはうってつけ。米子も、街・観光地へ定時に動ける鉄道にすぐ乗れる(ただし頻度は少ない=一時間に一本程度)。これらの空港では、アクセス交通でのハードルは低そうだ。

その点で見ると、全国的にはLCCに適した空港は結構限られてくるようにも思えてくる。

鉄道直結なら新千歳、仙台、成田国際、東京国際、中部国際、大阪国際、八尾、関西国際、神戸、米子、山口宇部、福岡、宮崎、那覇が当てはまる。このうち、米子と山口宇部は運行本数が1時間に1本程度と少ないものの、これらの空港は、公共交通機関でしか移動できない客にとっては、日本ならほぼ定時運行の鉄道で利用しやすいものだろう。

一方、比較的大きな都市や観光地に近い空港は、函館、東京国際、名古屋、大阪国際、神戸、松山、松山、福岡、那覇といった感じだろうか。これらの空港は、着いてほとんど移動せずに目的を済ませられるのが魅力だろう。LCC就航後、総合エンターテイメント施設のようになっている新千歳空港に行くのを目的にした日帰り客が激増したとも聞いており、空港が目的地に近ければ、アクセスに余計な費用もかからないから、安いLCCでふらり訪問という客も多く確保できそうだ。

アクセスバスの頻度という点では、新潟、岡山、広島、長崎、熊本、鹿児島辺りも候補に入るかもしれない。気軽に利用できる頻度なら、飛行機の時間を気にせずアクセスできる。市街地までかなり時間がかかる空港もあるものの、頻度で待ち時間短縮が図れれば、御の字だろう。

公共交通がなくても、佐賀のように到着便利用者を対象に2日間1000円レンタカーを展開するといったキャンペーンも、効果がある利用促進策かもしれない(費用対効果には?もあるけど、、、)。

こうやって考えてみると、LCCの誘致をするなら、安く早く短くといったアクセス交通は大事となってきそうだ。



今回は、LCCの効果を強く実感した旅になりました。

どうも日本人は安定志向が強いせいか、大手以外は航空会社にあらずとでも言わんばかりの人も多いですが、LCCは少しずつ定着してきているように感じます。
大手思考の利用者は、LCCを利用することで、安く乗ってる自分を安く見られることへの恥ずかしさとか、大手に乗れないのかよとバカにされる悔しさとか、安全面でなんか不安といった漠然とした抵抗感とか、なんか手続きが面倒といった先入観とか、なんだか色々ありそうですが、今LCC利用の中心である若者は、そんなことほとんど感じていないでしょうから、これらの若者が中年になる頃には、LCCなんて普通になっているような気がします。

LCCの就航で空港を利用する人が増え、それを求めて空港が便利になっていく。そうして航空移動がもっともっと盛り上がることを期待しつつ、今回の旅を〆たいと思います。

posted by johokotu at 18:00| 東京 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | ◆旅行記 | 更新情報をチェックする
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