ヴァージンアトランティック航空(VIR)が1日の運航をもって、成田国際(成田)-ロンドン ヒースロー線から撤退しましたが、共同運航していたANAが成田とイギリス間を結ぶ路線を開設せず、ついに「成田縛り」が崩壊しました。
「成田縛り」は、東京国際(羽田)発着国際線を開設するにあたり、成田発着の当該国便を運休できないルールです。成田を活用することを大前提に、成田発着から羽田発着へ移転するだけで増便しない、いわゆる「羽田シフト」を防ぐ目的があります。
ANAは昨年3月、羽田-ロンドン線開設に合わせて成田-ロンドン線を運休する「羽田シフト」を実施しています。これは、VIR運航便に共同運航して便名で成田-ロンドン線が存続していることから「成田縛り」の適用外となっていたために可能となっていました。
ところがVIR運休でこの前提が崩れてしまうことになりました。
「成田縛り」は、法的拘束力のないルールではありますが、外国航空会社も含め、これまで破られておらず、日系航空会社が初めてルールを無視したことになります。
今回、羽田の再国際化にごねていた地元の成田市や千葉県なども目立って指摘する動きはなく、国交省も黙認したことで、「羽田シフト」が加速する恐れも出てきました。
「成田縛り」は、成田発着便を維持することを求めているわけですから、大した需要もない国への路線の場合、航空会社に大きな負担となります。このため、これまで貴重な羽田発着便を配分されているにも関わらず、「羽田シフト」や羽田発着便を純増することを諦める動きも見られました。
VIRはまさにその一つで、当初「羽田シフト」を宣言していましたが、「成田縛り」に抵触するため、羽田発着便を開設していませんでした。
しかし、ロンドン線では、日本航空もANA同様の方法でブリティッシュ・エアウェイズ(BAW)との共同運航で成田-ロンドン線を運休する羽田シフトを敢行し、他社は全て羽田発着便を開設しました。VIRは日本をハブにはしておらず、成田での乗り継ぎ需要が見込めない中で、日本を目的地や出発地とする需要が多いロンドン線で成田発着便しかないことは致命傷でした。
「羽田シフト」せざるを得ない程度しか需要がない国への路線に羽田発着枠を与えることがナンセンスなのかもしれませんが、成田・羽田両空港の発着便を最大限活用する考えからすれば「成田縛り」も一つの良い方法でもあります。国交省は、今後「成田縛り」をどうするか難しい判断を迫られており、他国の航空会社が「成田縛り」を破って「羽田シフト」が加速するのか注目されます。
ラベル:成田