2015年02月03日

潰れる空から九州へ(旅行後)

※2015年4月にアップした旅行記です。


■2015.02 東京国際・福岡・宮崎・鹿児島・熊本・佐賀の旅行後

今回の旅は、リンクが就航するまで訪問を遅らせていたのに潰れたことで訪問を決意、さらにスカイマークの経営破綻に巻き込まれ、機材が変更になるという事態に遭遇しました。なんとなく、空港業界の難しさや潰れる空(SKY)のつながり(Link)を感じさせる空港見学となりました。
今回はそんなSKYの破綻を軽く取り上げてみます。


■羽田発着枠の影響がこんなところにも
破綻の経緯や今後の動きについての詳細は、専門家の皆さんにお任せするとして、今回の破綻はSKYの自滅という印象が非常に強かったものだった。LCCが次々に設立されるなか、エアバス330(A330)を大量導入し、さらにA380を購入しようとしたのだから、お金が足りなくなるのも頷ける。A330については、これまで展開していなかったテレビCMなども行っていて、出ていくお金は結構多かったのではないかと思えていた。

A380は論外としても、SKYがなぜA330を導入したのか、理由を記した報道は少ない。今回はそこにスポットを当ててみたい。

いきなりの結論となるが、SKYのA330は、元々羽田発着枠対策で導入していた。こんなところにも羽田の問題が波及しているのだ。
SKYは三年ほど前、多くの羽田発着路線が搭乗率九割ほどを記録し、さらなる輸送力増強が求められていた。
しかし、SKYが持っている羽田発着枠はわずかに36(当時は32)しかない。羽田は、自己都合で勝手に増便はできないので、機材大型化で対応しようとした。そこでA330導入となった。
三、四十年ほど前に、日本航空や全日本空輸がB747を大量導入したように、一便当たりの輸送力を増やす作戦に出たというわけ。A330が適当だったかは不明だが、機材大型化は、会社を成長させていく上では必要不可欠だった。

SKYについては、よく大手ほどの便数がないから使いづらいし、幹線(新千歳、大阪三空港、福岡)だけを大手と同じくらい設定すればいくらでも勝負できるだろうという人もいる。しかし、新千歳、大阪、福岡だけで見ても、JALは51往復、ANAは58往復だから、36枠では到底及ばない。そもそも配分の時点で勝負になっていないのだ。
しかもこの36枠のなかには、地方路線しか開設できない枠もある。さらに、SKY運航便の発着時間帯を見てみると、恐らく配分されていない時間帯もあるようだ。自由自在に発着便を設定はできず、例えば、一時間に一便といったフリークエントサービスをしたくてもできない。
その他の新興航空会社は、ANA傘下で地域限定であるので、少ない枠数でもなんとかなっているが、SKYの場合は全国展開で、路線数は増えるから、必然的にひとつの路線で設定できる便数は限定される。
機材を大型化し、一度に運べる人数を増やすしか方法がなかったというわけだ。

※ちなみに、この36枠という数字、報道などでは、新規航空を優遇し、多く確保しているとの論調が多いけれど、実際には違う。
SKYが参入した平成9年以降、新規航空に割り振られたのは、四社にわずか106枠+到着2枠。それに対し、大手は二社しかないのに102枠+出発4枠+到着2枠が割り振られている。JALから34枠、ANAから18枠が回収されているので、新規を優遇したと言っているのかもしれないが、JAL、ANAは元々多くの枠を持っているのに、配分数にはほとんど差がないのだ。日本航空(JAL)やANAは160枠前後を持っている(座席数ベースならANAは実質200枠以上)のを考えれば、SKYへの配分は「著しく」少ないと言わざるを得ない。


201502l.jpg
つぶれてしまったSKY。この先はどうなってしまうのか、、、。

■残念な結果になった
結果は見ての通り「失敗」。小型化による多頻度化+格安化が進む国内線で需要はついてこなかった

SKYはA330を導入するにあたり、座席の快適性を大幅に向上させる戦略をプラスしていた。今回予約したとき、自分も、広い座席だったから興味を持ち、是非乗りたいと即決した。
単に座席数を増やすだけでなく、導入にあたり色々考えたことはなんとなく理解できるし、考え方自体もそれほどの失敗ではなかっただろう。

なんとも残念な結果となってしまった。

それにしても、LCCが赤字でも大量参入+景気上向き中という導入タイミングは最悪だった。とにかく値段の安さだけを追求する層はLCCに乗るし、会社から金が出る出張サラリーマンやマイルを貯めている客は多少高くても大手に乗る。
A330の導入を進めていた新千歳線や福岡線は、LCC参入で成田発着とはいえ、便数が大幅に増えており、旅客数が分散してしまった。サラリーマン向けであることを考えれば、まずは神戸線に導入するべきだったのかもしれないが、羽田発着枠対策で長崎線との兼ね合いもあってすぐには導入できなかった。
そして、最後は、大手より圧倒的に惹き付ける力があった直前運賃の値上げも実施したことで、自滅した感は否めなかった。

今回の自分のように、マイルにあまりこだわりがなく、かつ機内での飲み物やエンタメにこだわらない客で、値段を細かく確認して、羽田発と成田発を天秤にかけ、運航ダイヤを考えれば、SKYがコストパフォーマンスが結構高いことはよくわかる。しかし、一般旅客でそこまで複雑な調査をする人はあまりいない。安いと思い込んでLCCを買うか、快適座席だと思い込んで大手を買うか、あるいはマイルをためているから大手を、普通の人はそんな感覚だろう

個人的には、A330導入発表時やグリーンシートの話が出たときに、面白いことをすると思ったので、なぜ利用が増えなかったのかはとても不思議なのだが、利用がついてこなかったということは、結局、負けるべくして負けたということなのかもしれない。

201502m.jpg 201502n.jpg
今回搭乗した機材の座席比較。左が機材変更となったSKYのB737 。右は帰りに乗ったANAの最新型B787-8の座席。大手の方が快適かと思ったら、B737との比較ですら、狭さは似たようなものだし、ポケットはSKYの方が利用しやすい。こうやってみると、ANAは下のポケットを削って、なんとなく座席幅を広いように感じさせているのかな?(クリックすると拡大できます)
格安の波に乗って中四国へ(2日目)」に春秋航空日本、「そうだ那覇行こう(旅行後)」にPeach Aviation、ジェットスター・ジャパン、エアアジア・ジャパン(すでに運航終了)のLCCの座席状況写真があるので、それとも比較してみてはいかがだろうか。


大手に乗るほどお金持ちではなく、LCCに乗るためにいちいち成田まで行くことはあまりしたくないような面倒くさがりやの自分には、SKYはとても重宝していました。
SKYが独立系としてこのまま上手く再生しないなら、恐らく航空運賃は跳ね上がるでしょうし、航空の利用回数は激減しそうです。宮古のように航空運賃が急激に上がり、日本の空が潰れる、なんてことにならないよう願いながら、今回の旅を〆たいと思います。
posted by johokotu at 21:00| 東京 ☁| Comment(2) | TrackBack(0) | ◆旅行記 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
初めまして、何時も参考にさせて頂いております。
内容には概ね同意、付け加えるならA330導入時の就航延期・その煽りを受けて他の便の欠航が相次いだのが痛かったのではないかなぁと (実際、自分も搭乗予定の便が一週間前に欠航となって焦りました)
更に、やっとの就航も遅延連発。これで相当数の方から愛想を尽かされてしまったのでは。
もし成田路線に参入せず、A380導入・国際線計画無しでA330のみだったら。導入計画も無理のないもので予定期日通りの就航だったら。今頃どうなっていたでしょうね。

グリーンシートは二回体験しましたが、十分良いものだったと思います。クラスJと一長一短ぐらいかと。
導入前の発表で、ミニスカ制服ばかりが注目されて肝心のシートが蚊帳の外だったのも痛かったかも。
B787は一度だけ搭乗、ANA初号機の暫定仕様・横8列シートでしたが足元は広くなく余り良い印象はありません。
個人的には、今の787国内線仕様・横9列シートよりもSKYの現行レカロシートの方が良さそうに思えます。
Posted by JT9D at 2015年04月13日 02:12
こんばんは、管理人です。

>JT9Dさん
いらっしゃいませ。
残念ながらA330には乗れずじまいでした。
SKYは元々遅延が多かったので、自分はそれほど気にしていませんでしたが、実際利用されての感想がそうであるなら、A330導入の混乱がかなり影響していたのかもしれませんね。
うまく再生していけるのか気になるところです。

それでは失礼します。

Posted by johokotu at 2015年04月14日 22:23
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