■2015.08 仙台の旅行後
今回は空港鉄道で空港へアクセスしました。
多くの空港は、公共交通機関がバスしかないところも多いですが、仙台のように鉄道でアクセスできるところもいくつかあります。
空港へのアクセスは、タクシーやレンタカーを使う比率は高いでしょうし、近隣の主要都市へは直結バスがあるのがほとんどですから、鉄道にこだわる必要はありません。しかし、自動車交通は、渋滞遅延の不安と隣り合わせです。例えば、広島空港では、広島市内からの空港バスが中国道での渋滞にはまることが多くて注意喚起しているほど。百里(茨城)では、東京駅発着のバスが、都心の渋滞を見越して、空港行と空港発の所要時間を大きくずらしています。
日本ならではとなりますが、世界一時間に正確と言われる鉄道があれば、安心してアクセスできるメリットがあるわけです。日本だからこそ、鉄道アクセスがより重視されると言えるかもしれません。
今回は、そんな、鉄道をはじめとする、バス以外の地上交通でアクセスできそうな空港を取り上げてみます。
■鉄軌道直結は13空港
まずは、日本で鉄軌道直結の空港を見てみましょう。( )内は主な行き先
千歳 JR千歳空港線(千歳、札幌、小樽)
仙台 仙台空港鉄道線(名取、仙台)
成田 JR成田線(成田、千葉、東京)、京成成田線(成田、津田沼、上野)、京成東成田線・芝山鉄道線(成田、芝山千代田)、成田スカイアクセス線(上野、日本橋、羽田空港)
羽田 東京モノレール線(天王洲アイル、浜松町)、京急空港線(蒲田、品川、横浜)
中部 名鉄常滑線(常滑、名古屋、岐阜)
伊丹 大阪モノレール線(千里中央、万博記念公園、門真市)
八尾 大阪市営地下鉄谷町線(天王寺、東梅田、守口)
関空 JR関西空港線(天王寺、大阪、京都)、南海空港線(岸和田、堺、なんば)
美保 JR境港線(境港、米子)
宇部 JR宇部線(宇部新川、宇部、新山口)
福岡 市営地下鉄空港線(博多、天神、唐津)
宮崎 JR宮崎空港線(宮崎、延岡、大分)
那覇 沖縄モノレール(県庁前、牧志、首里)
八尾(八尾南駅)と山口宇部(草江駅)は、空港区域のすぐそばに駅があるものの、ターミナルからは10分以上歩く位置にあるので、直結とは少し異なるかもしれませんが、それを含め全部で13空港があります。全空港のうち約一割強に鉄軌道が整備されていることが分かります。中四国を除き各地方の主要空港はほぼカバーされているのが分かります。
■鉄軌道が整備できそうな空港はまだある
鉄軌道直結空港の数を多いと見るか少ないと見るかは難しいところですが、これ以外にもまだバス以外の地上公共アクセスができそうな空港があります。
少し細かく見てみました。
女満別空港
空港のすぐそばに北海道旅客鉄道(JR北海道) 石北本線の西女満別駅があります。直線距離では1キロにも満たないのですが、歩くと少し遠回りで坂がきつく20分ほどかかってしまいます。
この駅からのアクセスは、連絡バスがあれば、公共交通利用者には便利に見えます。実際、JR北海道がこの駅と空港との間でデュアル・モード・ビークルの実験をしたことでも知られています。
しかし、西女満別駅は駅前が砂利道の無人駅。一日の運行本数も飛行機の便より少ないため、アクセスバスが走ったとしてもアクセスとして実質使えない状態です。
少なくとも一時間に一本程度は電車が走っていないと、アクセス駅としては無意味であることを気付かせてくれます。
中標津空港
周囲に鉄道はない空港ですが、中標津町内には平成元年までJR標津線が走っていました。空港の東側を通っていて、戦時中には飛行場区域への引込線もあったそうです。
中標津空港は戦後しばらくは未使用となっていましたが、西春別から使用空港を変更する形で使用が再開されています。このとき変更となった理由の一つが標津線と言われています。空港に近い中標津駅が、標津線の分岐駅で、西春別よりも栄えていたことが重視されたようです。
いまは鉄道アクセスできる空港ではありませんが、鉄道とは切っても切れない空港なのかもしれません。
函館空港
最寄のJR駅である函館駅を結ぶバスが多数運行されています。それはそれで不便ではないのですが、市電が空港のすぐそばの湯の川まで来ており、空港まで延ばしやすいように見えます。
函館市は、かつて市民から市電の空港への延伸の要望を受けたことはあるようですが、設備投資がかかることを理由に門前払いしています。函館市は、中心部が分散していて必ずしも函館駅前が便利とは言えず、函館市内の観光地へも行きやすい市電の延伸は、市内各所への利便性向上にはある程度の効果はありそうですが、最寄鉄道駅までのアクセスという点では、バスより遠回りになるため、効果は限定的と言えそうです。
世界では、トラムを空港まで延伸する例も多いので、ぜひ実現を検討してほしいところです。
花巻空港
東日本旅客鉄道(JR東日本) 東北本線の花巻空港という駅がありながら、空港ターミナルの移転によりJR東日本 釜石線の似内駅の方が近くなってしまった、なんとも残念な空港です。
花巻空港駅は日中1時間に1本程度は運行があるため、ある程度便利ですが、似内は一日数本しか便がなく、アクセス駅としては条件はよくありません。
花巻空港駅は、旧ターミナル時代から、空港へ行く場合にタクシーを手配するか歩くしかなく、名ばかり駅として有名でした。現在は、盛岡からのバスが花巻空港駅を経由して運行されています。
盛岡のバスが空港駅を経由するようになったのと同時に花巻駅発着のバスが廃止されており、アクセス駅化が成功しているのか気になるところです。
山形空港
すぐそばをJR東日本 山形線(奥羽本線)が走り、神町駅がベターな位置にありながら、アクセス路線として活用しきれていない空港です。元々、山形線側にあったターミナル地区を反対側に移転したため、徒歩でアクセスすることはほぼ不可能になりました。
昨年からアクセス向上に取り組んでおり、道路を通った場合の最寄駅であるさくらんぼ東根駅との間にも完全予約制のタクシーが運行され、少し利便性が向上しています。
前回の旅行記でも取り上げた通り、さくらんぼ東根駅からはレンタサイクルもあるので、荷物が少なく雨でなければ鉄道アクセスも選択肢に入ってくるかもしれません。
新潟空港
新潟県などが、上越新幹線を空港まで延伸する構想を持っています。航空便と競合するJRの路線ですので、実現はほぼないと思われますが、県が鉄道アクセスを真剣に考えている点は注目です。
現状は既存路線の羽越本線からも離れていて、鉄道アクセスの利便性はよくありません。新潟駅からのバスがかなりの頻度で運行されていますが、一般道走行のため、かなり時間がかかります。
調布飛行場
調布駅行きのバスも運行されていますが、空港北西に西武 多摩川線の多磨駅、南側に京王線の飛田給駅があり、それぞれ徒歩30分ほどでアクセスできます。
利用するにはひと苦労な鉄道アクセスですが、実は、戦時中は西武多摩川線からの引込線が空港区域まで延びていました。いまは跡形もなく消えていますが、存続していればアクセス鉄道として活用できたかもしれず、残念な空港になっています。
静岡空港
鉄道アクセスの場合、東海旅客鉄道(JR東海) 東海道線の各駅まで出る必要があります。島田と藤枝からバスがあるものの、いずれも30分前後の時間がかかり、非常に不便です。
そんな静岡は、東海道新幹線が直下を走る空港で、静岡県が新駅設置を熱望しています。しかし、東海道新幹線は、航空便と競合するJR東海の路線です。そもそも空港周辺の人口がなく、安定した利用が見込めない立地(島田周辺の人が利用するかも???)。また、駅を新設すると、駅を設置するだけでなく、システムを見直す必要もありますし、当然ながら、JR東海は設置を全面否定しています。
大人な事情から、鉄道アクセスには、ひどく不便な空港となっています。
小松飛行場
西日本旅客鉄道(JR西日本) 北陸本線から比較的近い位置にある空港です。最寄駅の小松駅から高頻度のバスが10分強で結んでおり、それほど不便ではありませんが、鉄道直結ができればさらに便利になりそうです。そこまで鉄道に近いので、戦時中は引込線が設けられていました。それを活用することもできたかもしれないだけになんだか残念なことになっています。
現在、この空港の海岸側には、高速道路が整備され、ほぼ空港直結のインターが整備されています。石川、福井の両県から自動車やバスでのアクセスが容易です。近くても、直結しなければメインのアクセス手段にはなり得ないということを実感できる空港かもしれません。
福井空港
すぐそばをJR西日本 北陸本線が通っています。空港の南東側約2キロに春江駅があり、徒歩30分ほどで行けないことはないですが、山形空港と同様にターミナル地区は、路線と反対側にあるため、不便です。山形以上に線路と空港区域の間は狭いため、ターミナル地区が線路側にあれば大化けする可能性を秘めていた空港と言えるかもしれません。
この空港は定期便が就航していないため、大きな問題にはなりませんが、欧州だったらごくごく当たり前に空港駅ができる立地だけに残念でなりません。
名古屋飛行場
空港区域のすぐ東側を名古屋鉄道 小牧線が通っていて、複数の駅が設置されています。とは言っても、東側は自衛隊エリアで、ターミナル地区は西側中央にあるため、鉄道でのアクセスは不便です。空港の最寄りという点では、牛山駅や春日井駅の方が近いですが、アクセスする場合に利用できるのは南東側の味美駅です。味美駅からはバスがある他、南端の公園やエアポートウォークに寄りながら徒歩40分ほどでターミナルにアクセスできます。
この飛行場も小牧線から引込線が敷かれています。すでに運用を休止し、荒れ果てていますが、まだ線路なども残っています。空港東側に行くことしかできないのは残念なところ。また、仮にこの引込線を活用したとしても、小牧線から名古屋市中心部や名古屋駅などへ出るには途中乗り換えが必要で、利便性はあまりよくありません。
北九州空港
新空港への移転にあわせて連絡鉄道の構想が出てきた空港です。福岡空港の代替として、利用が増えることを想定し、多くの利用者を運べる鉄軌道整備の声が出ているようですが、実現はしていません。
小倉のほか、最寄の朽網駅から路線バスが結構な頻度で運行されており、鉄道はないものの、高いアクセス利便性があります。
旧空港時代は、JR日豊本線の下曽根駅から徒歩でも簡単にアクセスできていましたし、同じ県内の福岡空港が鉄道直結なだけに、新空港の不便さがクローズアップされているようです。
大分空港
最寄駅は九州旅客鉄道(JR九州) 日豊本線の杵築駅で、連絡バスだと30分以上かかります。はっきり言うと、鉄道アクセスは日本一といっても過言ではないほど悪すぎる空港です。
なぜここで紹介するのかというと、空港が開設される前、大分空港の場所に鉄道が通っていたからです。
昭和30年代まで、杵築から現在の大分空港区域を通って国東へ至る大分交通国東線という、小さな車両の鉄道がありました。しかも、大海田という駅が、現在のターミナルの位置にあったといいます。
廃止後の同線は大部分が国道213号線として活用されていて、空港発着の一般路線バスが使用するなど、鉄道が空港アクセスに間接的に寄与している珍しい存在と言えます。
ちなみに、国東線は昭和41年4月に全線廃止となっているのですが、その翌月に交通の便に問題があるとされつつも現空港が今の位置に決定、タッチの差で鉄道の活用ができませんでした。そこで、失われた交通の便のため、新たに超高速船(ホーバークラフト)が大分市内とを結びました。しかし、ホーバーも平成21年に廃止されてしまいました。この廃止が決まった際にも、直後にソラシドエアの就航やアクセス強化のためのバス路線新設が決まるなど、大分はチグハグなことになりやすいお国柄のようです。
熊本空港
最寄駅のJR九州 肥後大津駅まで車で15分ほどかかる空港です。鉄道アクセスとして活用するほど近くにありませんが、この駅と空港との間には無料バスが運行されています。
乗り換えの手間と時間がかかりますが、お財布への負担という点では、鉄道直結と言えるでしょうか。
空港からの路線バス的な無料バスは非常に珍しい存在です。かつて宮古で行うとしたものの、タクシー業界の猛反対にあって断念しているほどで、国内では他に与那国にしかありません。
肥後大津から熊本側は一時間に数便が運行されていて、地方にしてはアクセスは良い方。鉄道駅から離れていても、工夫次第では、鉄道アクセスを活用できることが分かる事例となっています。
鹿児島空港
鹿児島は、かつて鹿児島市内の鴨池に空港がありました。昭和40年代に現位置への移転が決定、交通アクセスが大きな議論になりました。そのなかで、空港東部を走る肥薩線を付け替えるといった案や鹿児島市内からモノレールを敷設するといった案が出されたことがあります。
結局、鉄軌道の直結は実現しませんでしたが、空港オープンからしばらくは、空港に近い加治木港からアクセス用のホーバークラフトが就航。海に面していないのに船便でもアクセスできる珍しい空港となっていました。
現在は、空港の目の前まで高速道路が開通し、自動車アクセスが向上。宮崎、熊本方面を結ぶ高速バスから空港にアクセスする人も多くいる交通拠点となっています。
近年の空港アクセスを見ると、高速道路の延伸などで車での比重が高まっているように思います。小松や鹿児島などが良い例で、必ずしも空港アクセスに鉄軌道を活用する必要は内容にも思えます。
ただ、今の空港を見ていくと、軍事的に使用されていたときは、鉄道があった(というか不可欠だった)のに、旅客利用になるとそれが廃止され使えなくなる、という日本特有?の残念な事態になっています。
地方空港ではよっぽどのことがない限り大丈夫でしょうが、前述の通り、バスは予想できない渋滞が怖い存在(実際、羽田や成田は空港発のバスより空港行のバスの方が利用者が少ないのだとか、、、)。安定的な鉄道アクセスがもう少し広がることを期待しつつ、今回の旅行を〆たいと思います。
ラベル:仙台空港