※2016年5月にアップした旅行記です。
■2016.04 東京国際・奄美・喜界の旅行後
今回の旅行は、奄美の航空便のダイヤの不便さを実感する旅になりました。
そこで、旅の終わりは航空便のダイヤについて軽〜く考えてみます。
※東京目線で書いていますので、奄美側から見るとちょっと内容承服しがたい!ということもあるかもしれません。
■一日二往復は確保したい
今回利用した奄美便は、行きが羽田12時30分発奄美14時40分着、帰りが奄美15時20分発羽田17時20分着でした。
いわゆる昼便と呼ばれる時間帯の便です。
本文でも何度か触れていますが、羽田からアクセスする場合、移動初日の奄美での滞在時間は、夏至前後でも、日没ギリギリまでの時間はたった約4時間だけ。実質的に初日は奄美を楽しめる時間があまりありません(夜の酒飲みには充分間に合いますが、、、)。帰りの日も昼過ぎには空港近くに行かねばならないことを考えると、一泊二日ではちょっと現地滞在時間が少なすぎる印象です。
大阪発着の場合も同じ一日一往復です。こちらは昼便ではなく朝便ですので、行きの日は奄美滞在時間が羽田便に比べて長いですが、帰りの日は観光できる時間は無いに等しいダイヤになっています。どちらにせよ、せっかくのお休みをフルには現地で楽しめない運航時間帯になっています。
羽田から見ると、同じ離島でも、奄美なんかより、那覇はもちろん、宮古や石垣の方が現地滞在時間が全然長いのが実状です。奄美は一泊二日だと27時間程しか滞在できませんが、例えば、1.5倍も飛行距離が長い石垣だと一泊二日でも最大34時間滞在できます。
また、奄美は、喜界、徳之島、沖永良部、与論の4離島に路線があり、奄美群島のハブ空港に成り得る位置にあります。でも、現状は、羽田から奄美経由では沖永良部、与論にその日中に乗り継ぎできません(鹿児島経由なら可能)。
奄美は、航空運賃が高いから人が来ない、という意見をよく見かけ、実際に要因のひとつではあるのですが、それよりなにより問題なのは、航空路線のダイヤと言い切ってしまっても過言ではないでしょう。
とにかく行くのが不便。それが奄美群島なのです。
■確保したい一日二往復
では、なぜ、奄美線が昼便になってしまうのか。それは単純に一日一往復しか飛んでいないからに他なりません。
奄美に飛んだあと、その飛行機を別路線に充当できれば、例えば朝羽田から奄美へ飛び、その後は別路線へ、夜戻ってきて奄美から羽田に飛ばすことができます。しかし、奄美は機材が本土路線と離島路線で大きく異なり、往復せざるを得ません。そうなると、一日一往復だと、今のように昼に運航するか、あるいは朝に寄せるか、夜に寄せるかしか方法がなくなります。しかし、朝や夜に寄せると、一方向は利便性が高くても、その逆方向は利便性が低くなります。それだったら朝とか夜にずらすのではなく、昼でどちらも比較的使いやすいようにした方が良いという判断なのでしょう。
また、飛行機が余りやすいのは昼なので、一日一往復だと昼運航のことが多くなります。
羽田-奄美線は、まさにそれに当たっています。
朝晩に運航されていれば、どちら発着でも、行きは朝、帰りは夜とできるので、行きの日も帰りの日も現地滞在時間を長くできます。三往復になれば、更に昼便も設定でき、朝昼晩と利便性が大幅にあがります。
需要の多さもありますし、さすがに三往復は無理にしても、ダイヤという点だけから見ると、少なくとも一日二往復は確保したい、と言えそうです。
■一日二往復へのこだわりと証明されたその効果
この一日二往復にこだわった路線として、羽田-能登線が知られています。能登空港開港と同時に運航を始めた路線ですが、この路線は、航空専門家も含めた凡人の一般常識では、一日一往復程度しか需要がないとみられていました。そんななかで、石川県が一日二往復を強く要請。その代わりに搭乗率保証などを設定し、話題となりました。
現在のダイヤは、朝晩運航とまでいきませんが、朝夕運航で利便性を確保。搭乗率も比較的高く推移しています。
そもそもが一日一往復で運航したことがないので、果たして二往復確保がどの程度利用維持に好影響を及ぼしているのかは分かりませんが、他の一日一往復路線に比べれば、現地滞在時間が長くなるので、旅行プランは立てやすくなっているのは確かです。
そんな一日二往復化の効果を、昨年証明した路線が現れました。羽田-山形線です。
一昨年に昼一往復から朝晩の二往復に増便しているのですが、利用者がなんと三倍にも膨れ上がったのです。総利用数が元々少なすぎたということもありますが、利便性の向上が利用増に大きく寄与したのは誰の目にも明らかです。
奄美路線が朝晩運航になるだけで利用者がすぐに増えるかは未知数ですが、山形線と同じようなことが起きれば、大幅な利用増も期待できるかもしれません。
現在、関東からはバニラエア(VNL)と日本航空(JAL)で合わせて二往復飛んでいるわけですから、例えばVNLが朝便、JALが夜便となれば、関東から行きはVNL、帰りはJALというような需要も生まれるかもしれません。
■第一の問題は利用者数の少なさ
だったら、今すぐにでも二往復にすれば良いじゃないか。と言いたいところですが、二往復化するにしても、そもそもの需要がないと、採算割れしてしまいます。
実は奄美はこの点で大きな問題を抱えています。
そもそもの利用が少ないのです。
実は、奄美は、平成26年度の利用者数が羽田発着48路線(久米島線除く)のなかで、最下位となっています。
各路線の便数が異なりますので、一往復当たりで条件を横並びにして見て、一往復当たりの利用者数を比較してみても、奄美は羽田発着48路線中の下から十番以内に入ってしまっています。つまり、そもそも利用者数が少なすぎです。
南西諸島好きの自分には、この数値は意外でした。普通に考えると、奄美も、沖縄本島も、宮古も、石垣も、南西諸島の一離島であり、それほど大きくは変わらないと思っていました。かつ、奄美空港は奄美群島のハブ空港に成り得るだけに、宮古や石垣より利用意向が強いと思っていたのですが、実際にはあまり利用者はありませんでした。
ここまで数値が悪いと、やはりそもそもの需要が二往復化するほどないと言わざるを得ない状況です。
奄美空港の最大の強みは、奄美群島の玄関口であることのはず。これは宮古や石垣と違うところです。ダイヤさえ工夫されれば、羽田から奄美経由で沖永良部や与論にも行きやすくなります。利用者を増やしやすい土壌はあるはずで、運賃を下落させるのも、もちろん必要ですが、それ以上に利用しやすいダイヤの構築が重要で、そこに工夫が必要な気がします。
■最後の問題点は羽田発着枠
さて、二往復化すれば、奄美へのアクセス利便性が大幅に上がることは分かりました。しかし、需要が二往復化できるほど無いことも分かりました。
山形線のような例もありますから、便が増えれば、利用もその分以上に増やせる、と言えないことはありません。
ですが、仮に便を増やすとして、そのとき最後に問題となるのが、羽田の発着枠です。
現在の羽田発着枠はキツキツの状態で、他にも採算のとりやすい路線があり、増便希望があるなかで、奄美の増便は順番がずいぶん後ろである点は否めません。
いわゆる三便ルールがあるので、四往復以上を運航している路線の枠を持ってくるわけにはいかず、失敗すればすぐに枠を戻すというのも難しい。さらに、奄美線よりも利用者数(一往復当たりの利用者数も)が多い一日一往復路線、更には三便ルール適用路線がいくつもある現状では、奄美線を増便するわけにはいかないでしょう。
そう簡単には増便に踏み切れない事情があるように思えます。
■まずは増便以外の方法で利便性向上を
増便が実質できないなかで、明るい兆しもあります。
それは、VNLが就航して東京(成田+羽田)-奄美の利用者数が大幅に増加していることです。便が二倍に増えても、なかなか利用者増加に結び付かない路線もあるなかで、利用者がそれなりに増えたということは、奄美に充分な伸びしろがあることが示されたことになります。
増便ができないので、まずは増便以外の方法でいかに利用を増やしていけるかが、重要なポイントになりそうです。
例えば、まずは、一日一往復のままで、宮古や石垣のように、朝晩運航(昼間は県庁路線に充当)からやってみる、というのが一つの手かもしれません。
奄美はとにかく高くて行きづらいと思っていましたが、羽田線の状況を見ると、なかなか難しい状況のようです。もっと使いやすいダイヤにするか、もっと利用者を増やすか、ひと工夫行われることを期待しつつ、今回の旅を〆ようと思います。
■羽田路線一便当たりの利用者数 平成26年度
左から「一往復当たりの年間利用者数」、「年間利用者数(年間旅客数順位)」、「年間通じた一日の往復数」
(※年間通じた一日の往復数はだいたいの便数として計算しているので、実態とは若干異なります。「一往復当たりの年間利用者数」=「年間利用者数」/「年間通じた一日の往復数」の便数で算出しています)
01 那 覇 175,775人/往復 5,170,717人(04位) 29.4往復/日
02 新千歳 168,089人/往復 8,908,721人(01位) 53.0往復/日
03 伊 丹 167,007人/往復 5,274,627人(03位) 31.5往復/日
04 福 岡 151,823人/往復 8,223,757人(02位) 54.1往復/日
05 新石垣 149,141人/往復 410,139人(31位) 2.8往復/日
06 函 館 136,590人/往復 1,092,719人(16位) 8.0往復/日
07 小 松 136,513人/往復 1,638,157人(09位) 12.0往復/日
08 富 山 130,127人/往復 780,764人(22位) 6.0往復/日
09 長 崎 125,672人/往復 1,759,401人(08位) 14.0往復/日
10 松 山 118,197人/往復 1,418,358人(10位) 12.0往復/日
11 旭 川 116,093人/往復 812,653人(21位) 7.0往復/日
12 広 島 105,608人/往復 1,795,344人(07位) 17.0往復/日
13 熊 本 104,945人/往復 1,932,733人(06位) 18.4往復/日
14 出 雲 102,637人/往復 555,949人(25位) 5.4往復/日
15 鹿児島 97,681人/往復 2,246,655人(05位) 23.0往復/日
16 関 空 95,554人/往復 1,106,829人(15位) 11.6往復/日
17 高 松 90,936人/往復 1,182,164人(12位) 13.0往復/日
18 高 知 88,987人/往復 889,874人(19位) 10.0往復/日
19 庄 内 87,919人/往復 351,674人(33位) 4.0往復/日
20 岩 国 87,375人/往復 349,500人(34位) 4.0往復/日
21 山口宇部87,003人/往復 819,274人(20位) 9.4往復/日
22 秋 田 86,262人/往復 776,362人(23位) 9.0往復/日
23 中標津 85,671人/往復 85,671人(44位) 1.0往復/日
24 女満別 85,264人/往復 426,322人(30位) 5.0往復/日
25 岡 山 84,908人/往復 969,362人(17位) 11.4往復/日
26 稚 内 84,351人/往復 119,497人(40位) 1.4往復/日
27 佐 賀 84,084人/往復 371,370人(32位) 4.4往復/日
28 大 分 82,141人/往復 1,149,980人(14位) 14.0往復/日
29 青 森 80,166人/往復 480,997人(28位) 6.0往復/日
30 釧 路 77,646人/往復 465,877人(29位) 6.0往復/日
31 神 戸 77,545人/往復 730,212人(24位) 9.4往復/日
32 宮 古 76,767人/往復 76,767人(45位) 1.0往復/日
33 宮 崎 76,395人/往復 1,375,115人(11位) 18.0往復/日
34 帯 広 76,149人/往復 533,044人(27位) 7.0往復/日
35 徳 島 75,597人/往復 907,163人(18位) 12.0往復/日
36 美 保 71,978人/往復 551,831人(26位) 7.7往復/日
37 能 登 70,902人/往復 141,803人(39位) 2.0往復/日
38 中 部 65,482人/往復 158,248人(38位) 2.4往復/日
39 鳥 取 65,298人/往復 326,492人(35位) 5.0往復/日
40 北九州 65,270人/往復 1,174,864人(13位) 18.0往復/日
41 紋 別 65,176人/往復 65,176人(47位) 1.0往復/日
42 奄 美 64,664人/往復 64,664人(48位) 1.0往復/日
43 三 沢 58,982人/往復 176,946人(36位) 3.0往復/日
44 大館能代55,924人/往復 111,847人(41位) 2.0往復/日
45 八丈島 55,683人/往復 167,049人(37位) 3.0往復/日
46 石 見 52,600人/往復 105,199人(42位) 2.0往復/日
47 山 形 37,344人/往復 74,687人(46位) 2.0往復/日
48 南紀白浜32,340人/往復 97,020人(43位) 3.0往復/日
2016年04月05日
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバック