※2017年4月にアップした2017年3月の旅行記です。
■2017.03 成田国際・広島・岡南・神戸・関西国際の旅行後
今回の旅では、成田国際(成田)と関西国際(関空)の深夜野宿の状況を見てきました。
利用したのは、3月2日(木)〜4日(土)にかけてなので、大学生や卒業生がお休みに入りはじめた時期に当たります。社会人は旅行に行っていられない年度末の忙しい時期といった感じでしょうか。
曜日や時期によって混雑度は異なるのでしょうが、見た限りでの実態を簡単に比較してみます。
今度泊まろうと思っている人は是非ご参考に、、、。
■成田は北ウェイティングエリアに野宿客が多い
今回、成田に入り込んだのは初日(木曜日の夜)の23時頃〜6時頃と、三日目(土曜日の夜)の22時頃です。
23時頃は、成田空港行きのバスが既に終了し、飛行機の到着便も都心からの鉄道到着も終了するなど、空港に流入しにくくなる一方で、まだ都心へ出るバスや鉄道は運行していて、空港外へ流出可能な時間帯です。
翌日便利用者ばかりなのかと思いきや、飛行機からの到着客の中にも野宿客がいるようでした。
初日に見た23時頃も三日目に見た22時頃も、第3は似たような混雑状況でした。
MUJIのフラットソファ(数はそれほど多くない)はほぼ埋まっている一方、フードコートの椅子は、コンセント周辺に若干人が群がっていた程度で、利用者が皆無に近い状況でした。第3にある椅子は、大半がフードコートの一人用椅子で、寝るのには適していません。コンセントのある場所も限られていて人気がないようでした。
しかし、朝4時に第3へ戻ったときには、どこから湧いて出てきたのか、フードコートの椅子がほぼ埋まるほどの大盛況となっていました。ジェットスター・ジャパンの手続きが4時には始まるので、その時間に合わせて来る人も多かったとみられます。店舗も4時から開店です。
MUJIソファに寝続ける人もいましたが、4時以降、人の行き来がかなり増えて来るので、朝遅い時間までぐっすり眠りたい人には向いていないように思います。
ちなみに、このターミナルはSKYTRAXの「Best Low-Cost Airline Terminals 2016」で世界一に輝いていますが、(評価項目には絶対に入れてほしくないですが)野宿という点では、あまりレベルが高くないように感じました。
23時頃の第3の様子。この時間、フードコートの椅子にはほとんど人はいないが、4時にはこの椅子がほぼ埋まっていた。フードコートの店舗は深夜時間帯は閉店。
第2北端の外にできた北ウェイティングエリアは、初日の23時半頃と4時頃に見ています。このエリアは、旧・北側国内線施設を野宿客向けに改修したところです。
野宿客向けスペースとして再整備しただけあって、第3や第2本館に比べて、コンセントも数多く準備されています(ほとんどが急造タップ)。トイレや畳スペースもあり、専用エリアのように宣伝されていることもあってか、ほとんどのベンチが占領されている状況でした(三席一人の割合だったので、詰めればまだまだ座れます)。
このエリアは、他の場所と違い、一日通して、滞在目的以外の客は一切来ません。特に、航空便の動きがない夜間は人の出入りが少なく、滞在・睡眠と言う点に関しては、快適な場所となっています。昼間も開いているので、長く滞在したい人にはオススメですが、その分競争率も高いです。自販機はありますが、店はありません。
第2に掲げられていた24時間営業店舗の案内。深夜のお店は第3はローソン、第2は吉野家とセブンイレブンの2店舗のみとなっています。いつの間にかセブンイレブンは5階から地下1階に移転していました。地下1階は滞在禁止なのに、店舗が開店しているのは、5階のときと同じですが、5階よりは警備が容易でしょうか。
初日の24時前には第2ターミナルに突入しました。第2は、深夜滞在は1階と2階に制限されています。
第2は24時間営業の吉野家もオープンしたので、利用者が多いことを覚悟していましたが、24時頃、野宿客は意外と少ない状況でした。
1階北端にあるフラットソファと、コンセント机が多数ある2階中央はベンチがほぼ占領されていましたが、1階中央は半分くらいしか埋まっておらず、到着ロビーのベンチは利用者がほとんどいませんでした。
到着ロビーのベンチは、座面が平らな生地タイプなので意外と寝やすいですが、天井が高い上、上から覗きこまれる位置。それなのに、照明がかなり明るくて眩しく、さらにコンセントがないところが嫌われているようでした(24時半〜3時半頃に照明が落とされます)。夜の間に人が増え、4時前には、到着ロビーのベンチも横になって眠る人たちでだいたい埋まってきますが、人は少なめ。第3と異なり、到着便も来なければ、チェックインも始まらないので、人の動き出しはあまりなく、5時位まではぐっすり寝ていても全く問題ありません(到着便は6時から一気に到着するので、それ以降は迎えの客が増え、寝ていられません)。
今回第1は調査しませんでした。
格安で造った第3も含め、全域で空調がよく効いており、滞在はしやすいです。
成田は、北ウェイティングエリアが、野宿客に人気エリアであるようでした。
24時近くの第2の到着ロビーのベンチの様子。使用している野宿客はほとんどいない状況でした。北ウェイティングエリアのPRはとても積極的。
■関空はエアロプラザに野宿客が多い
今回、関空には二日目(金曜日の夜)の23時頃から6時頃まで滞在しました。一番野宿客が多い曜日に泊まったものと思われます。
関空は23時台に、到着する鉄道が終了しますが、バスは、0時以降も梅田へのバスが1時間に1便運行されており、大阪中心部への流出は容易です。
LCC向けとして整備されたT2は、4時頃から6時頃まで調査しました。
4時の時点ではT2の滞在客は少なく、国内線側から国際線側まで全部合わせても野宿客は30人位しかいませんでした。
コンビニとカフェは24時間営業しており、利便性は低くはないのですが、ベンチが少ないのに加え、コンセントがベンチ回りにないため、人気が低いものとみられます。コンセントは国際線出発エリアにテーブル式がいくつかあった程度です。コンセント机の椅子は一人がけなので、コンセントを使いながら寝るには、突っ伏すしか方法がありません。
さらにアクセスが大きな問題。歩いてT1に行くのはほぼ無理で、1時間に1本連絡バスがあるだけなので、一度T2に来てからT1に戻るのはひと苦労です。このため、はじめからT2には来ないという人も多そうでした。その分、人の出入りは少ないので、よく眠りたい人には最適かもしれません。
お客さんが増えてくるのは、5時過ぎてから。3月1日から春秋航空(CQH)の国際線がT2発着となり、国際線出発エリアには朝一に中国人の団体客が殺到し、かなり騒がしくなっていました。
国内線は、徐々に増えてくる印象ですが、お客さんが来るより早い時間帯に職員の出入りが多くなる(恐らく出勤)のが意外と曲者。床の素材のせいか、ヒールで歩く際のカツカツ音がかなり響きます。さっさと調査が終わり、日の出までの間、国内線側のベンチで一休みしていましたが、この際、職員が次から次へと歩いてくる音がとても気になりました。隣のベンチで寝ていた人は、音に耐えきれなくなったようで、音が鳴り出しはじめてからすぐに、しかめっ面で起き出して次々にやってくる職員たちを睨み付けたあと、何処かへ行ってしまいました。野宿に音問題は付き物とは言え、航路真下の家の中で聞く飛行機音よりも気になるレベルです。
T2は、SKYTRAXの「Best Low-Cost Airline Terminals 2016」で成田に続く世界2位ですが、こちらも、野宿という点ではあまりレベルが高くないように感じます。
続いてT1。こちらも全域が24時間開放です。今回は24時頃から3時頃まで見学しました。
T1の野宿客は、ほとんどの人が2階に滞在しています。
2階は、南北端に、天井が低くベンチが集まるエリアが存在し、多くの人が集まっていました。北端はコンビニに加え、案内所や交番などもあり、安心感が大きいでしょうか。南北端とも照明も暗く、寝やすい環境となっています。
一方、国内線チェックインロビーの空間も、並んでいる4人がけのベンチを一人で占領できるので人気は高めです(これを見ると、二人がけか三人がけを配置した方が、多くの人が座れそう、、、)。一部の席は壁のコンセントが使えるので、それもポイントが高いようでした。
このほか、エスカレータ裏にもベンチがあり、2階は広い範囲に多くの人が野宿しています。
その他の階は野宿客が少なめ。
1階は、ベンチの座面が固いタイプで、横になるには不向き。ベンチ回りにコンセントもないため、滞在客は皆無です。
1階は滞在者が皆無でした。ベンチが固いのが一番の原因?
3階はエスカレータ裏にフラットソファがあります。確保できれば快適ですが、数はごく少数しかありません。
4階はランド側にベンチが並んでいます。一部の座席はカウンタ型のコンセントテーブルがベンチ近くにありますが、天井が高いせいかあまり人気はありません。関空は、一応、24時間出発便が設定できるので、場所によっては目の前のチェックインカウンタで手続きが行われ、終夜寝ていられない状況に陥る可能性があります。ベンチ配置もロビー側に向いているものが多く、人によってはかなり気になるかもしれません。
ただし、現状は、深夜早朝便がほとんどなく、拠点化して朝便が多いPeach Aviation(APJ)やCQHは発着がないため、深夜の人の往来は少ないです。
エアロプラザは、2階に、待合スペースとしてベンチを敷き詰めた場所を整備しています。このエリアは、仮設の机の上に複数の電源タップを設置。24時間案内人を配置して毛布の貸し出しも実施するなど、サービスが充実しています。本文でも触れたシャワールームも併設し、トイレもエリア内にあります。待合スペースから出たところの飲食店、コンビニも24時間営業で、利便性も抜群です。
このため、関空のなかでは恐らく一番快適に野宿できるのがこのエリアとなっており、昼間から寝ている人も見られるほど。当然、席が埋まるのも早く、競争率は高いです。
成田同様、全域で空調がよく効いていて、滞在はしやすいです。
関空は、エアロプラザが人気でした。
エアロプラザは待合スペース以外にもベンチが点在しています。こちらは、午前4時頃の、T2連絡バス出口付近ロビーの様子。
この辺りは昼間、滞在者はほとんどおらず、周囲の売店がやってけてるのか心配になるほどですが、この時間は、寝ている人で埋まっていました。
■野宿はコンセントと天井高が重要?
こうして見てみると、
・ベンチは、固くなく、横になれれば、何でもOK
・コンセントがある
・天井が低くて照明が暗め、区画されていればなお良し
といった点が、野宿客に好まれる場所と言えそうです。
上記の点をあまり気にしないのであれば、それ以外の場所を狙うのが、快適に眠るためのひとつの作戦と言えそうです。
スマフォがかなり普及したためか、コンセントがあるかないかは非常に大きいようです。WiFiを使いすぎても一週間くらい持つ携帯が開発されることを期待したいところでしょうか。最近元気のない電器メーカーに頑張ってもらいたいものです。
面白かったのは、これだけ多くの人がいて、椅子に横になる人が多いのに、床に横になっている人が、一人しかいなかったことです(成田の第3で一人だけ見かけました=恐らく日本人と思われる東アジア系の男性)。
野宿する(横になる)んだから、別にベンチでなくても良いし(そもそもベンチは座るためのもので横になるものではない)、横になって眠るのなら、自分で持ち込んだ寝袋で床で寝ても良いような気がします。成田や関空は清掃も行き届いていて全然汚くありません。
それでも床に寝る人がほぼ皆無なところを見ると、今の野宿客は、格安旅行のマスターであるバックパッカー等ではなく、お上品な客が多いと考えられそうです。できれば成田や関空に泊まりたくない、でも仕方なく成田や関空に前泊せざるを得ない、といった人も多いのではないでしょうか。
早朝便に間に合うアクセス利便性の向上(例えば、小田原22時発東海道線各駅経由で夜行で走り、早朝4時成田着のバス便みたいなものの運行。新橋発成田行の深夜急行バスが近い存在でしょうか)や、周囲への格安宿の整備がなされれば、もしかしたら、野宿客もぐんと減るかもしれないと感じてしまいました。
■そもそも空港に野宿はいかがなものか
で、ここまで話を展開してからで何なんですが、そもそもの問題として、空港内(特に成田)に野宿するというのはいかがなものかという議論がもう少しあっても良い気がします。
確かに世界では、空港で野宿できる場所は多いです。しかし、成田は離着陸出来る滑走路能力はあるのに地元対策で23時〜6時の間は原則離着陸できないという、欠陥国際空港ですから、飛行機の飛ばない夜間に閉館しても問題ないはずです(関空は24時間営業ですが、深夜早朝便がほとんどないので、条件は成田とほぼ一緒)。
日本の場合は、格安宿でもかなりの品質がありますし、格安で利用できる深夜営業のネットカフェ等も数多くあります。さらに、本当の青空野宿についても、世界に比べれば街中も安全な場所が多く、空港でなくても野宿はできます。空港でなくても、比較的格安に、快適に、一晩を過ごせるわけです。
しかし、いまの成田や関空は、深夜早朝時間帯も空調をしっかり効かせて、トイレも自販機も完備し、店舗の営業も始めています。街中にある格安だけどヘボな宿泊施設や、お高いホテルよりも、費用対効果で、はるかに効果的ですから、空港外で泊まる意味が薄れてしまっています。
また、空港野宿は、飛行機利用者の体調面で不安を残します。
空の上では体への負担が大きく、体調をくずしやすいですが、前日空港に野宿したことで寝不足になり、空の上で急病、そして緊急着陸等されてはたまったものではありません(よく、飛行機に乗るときに酔わないようにする方法として、前日よく寝るというのがあります)。
さらに、一番不安なのは、空港自体の安全面。
夜間もタダで快適となれば、住所不定の野宿者が住み着いてしまう恐れが出てきます。多くの空港は、これらの人とただの旅行者をどこで見分けているのでしょう。正直、一週間風呂に入っていないバックパッカーと、浮いた家賃分で毎日シャワールームを利用して服を着替えている住所不定の野宿者だったら、見分けがつかないのではないでしょうか。
野宿で寝込む客を狙ってスリも出てくるかもしれません。
テロで最も狙われやすい空港に、どこの誰だか分からない人たちを泊めるわけですから、そのリスクをどう評価しているのかは大事なところ。日本の警察や防犯対策が優秀なのは理解していますが、リスクは軽減するにこしたことはありません。
そして、運営側の立場で考えれば、夜間の照明代や水道代、警備費などの費用も増えてしまいます。成田などは、運航禁止時間帯であり、どんなに頑張っても着陸料は確保できないのに、費用だけは増えるという悪循環。そのあたりを考えれば、ホテル代や民宿代、ネカフェ代と同じように夜間施設使用料みたいのを取ったっていいわけです。
「空港なんて24時間開いてて当たり前だから、空港に野宿する」というのは、色々な切り口で見ていくと、当たり前とは少し違う、と言えそうです。
※ちなみに、山手線や都内の地下鉄が頑なに24時間運行を拒んでいるのは、空調、駅トイレ完備で、住所不定の野宿者が最低運賃で住み着いてしまうからというのが一番に近い理由だそうです(24時間運行でもバスなら終点で追い出しをかけられますが、鉄道はそうはいかない)。
成田を見てみると、すべての始発がたった2時間早まるだけで、多摩や埼玉、神奈川などの西関東一帯からもほぼ朝便に間に合い、多くの人が野宿する必要がなくなります。そう考えると、成田や関空に野宿客が多いのは、日本のアクセス交通の頑張りが足りないだけ、とも考えられるかもしれません。
もう少しアクセス交通や周辺ホテル(民宿?)に頑張ってもらいたいなぁと思いつつ、毎度のことながら、薄〜い考察を〆たいと思います。
※少し分かりにくいですが、敢えて、空港のロビーに宿泊する人を「野宿客」、屋外で生活している住所不定の人を「野宿者」と、同じ表現を使ってみました。
2017年03月05日
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