2018年09月06日

いつもおき楽に邦基知る(旅行後)

※2018年12月にアップした2018年9月の旅行記です。

■2018.09 東京国際・出雲・隠岐・美保の旅行後

今回は世界ジオパークの名が付いた隠岐空港を利用しました。隠岐空港は、愛称がただ隠岐をPRするだけのものではなく、空港の自体が珍しい地形に立地している、世界ジオパークの見所のひとつになっていました。
そこで、今回は、ブラタモリばりに、空港の立地や地形など地学的な部分にスポットを当ててみます。
※余談ですが、今年春発行の玉造温泉の公式広報誌「姫神さまのふりぃぺーぱー」37号は、ブラタモリをもじって特集を組んでいました、、、。

■空港は実は地学的に珍しい立地ばかり
地球上の土地はどこだって、地震とか火山の噴火とか水の浸食などによってできた地形です。特に、空港のあるところは、どこも特徴的な地形の場所がほとんどです。このため、特別に取りあげるのも何だか変です。
しかし、空港を利用するときにそんなことを気にしている人はあまりいないでしょう。今回は、そんなところを少しだけ掘り下げていきます。

隠岐空港がユネスコ世界ジオパークの登録地域だということは本文でも触れました。日本にはユネスコ世界ジオパークに登録されている地域が8つありますが、このうち、登録地域のなかに空港があるのは、隠岐と鳥取だけと、かなり珍しいことになっています。

世界自然遺産の場合、空港のような人工開発物は、どちらかと言うと登録の邪魔になることが多いです。例えば、小笠原に空港がなかなかできないのもそのせいです。
ところが、今回の隠岐の事例を見てみると、そもそも火山噴火で貴重な平らの土地があったから、今ここに空港がある、ということを学べます。自然と生活が切っても切れないものだということを気付かせてくれるわけです。隠岐空港は、ジオパークという点では、非常に優れた見学地となっていました。

201809-5a.jpg
隠岐空港はジオパークの重要なポイントとなっています。


隠岐に限らず、空港は広い範囲でまっ平らな空間が必要になるため、造る前に周辺も含めて地形を非常に考えています。特に最近の空港は山の中や海の中に造られることも多く、土地を大規模に改変しなければならないことが多くなっています。空港建設前に、周辺の土地利用や風向きなども必ずチェック。その土地その土地の地形の特性をよく考えなくてはならないのです。

今回訪れた空港を取り上げてみても訪れたすべての空港が地学的に特徴的な場所にあります。
隠岐:本文にも書いた通り、火山噴火による噴出物でまっ平らな土地ができた、島のなかでも珍しい地形の上に出来ています。まっ平らと言っても元の地形に傾斜はあるので造成はしていますが、噴火口跡に挟まれている(そもそもターミナル地区はスコリア丘跡)のがはっきり分かるなど、空港地形の面白さを体感できる空港です。
美保(米子):砂州の中央に位置しています。立地する弓浜半島は、日本最大級の巨大な砂州で、空から眺めても面白いです。空港自体は、砂州とは直角な方向で整備されていて、すぐ日本海側は美しい弓なりをした海岸が迫り、反対側は汽水湖である中海に飛び出しています。
出雲:実は日本ジオパークの「島根半島・宍道湖中海ジオパーク」範囲内にあります。宍道湖に注ぐ河川が造り上げた出雲平野にあります。この平野は、西側では日本海に面しているのに、北側が島根半島の山があり、東側の宍道湖へ川が注ぐ、日本海から分離された盆地のような珍しい地形になっていることでも特徴的です。
なかうみスカイポート:水上飛行機用の離着水施設として、波の荒れにくい汽水湖の中海にあります。日本ではそもそも水上飛行機の離着陸場自体が珍しいですが、汽水湖にある点でさらに珍しさが増しています。ちなみに、プレ営業しているせとうちSEAPLANESの遊覧飛行はその名も「ジオフライト」と地形推しになっています。

今回訪問した山陰の空港はどこも特徴的な地形のところにありました。
隠岐空港は、空港周辺の家々を見てみると、周辺が産地なのか、生け垣の足元を大きな火山岩で囲っている家が多く、空港と生活と地球が密接に関わっていることがよく分かる良い例になっています。

201809-5b.jpg
今回空の上から眺められた美保飛行場と弓浜半島。曲線が美しい半島です。

■全国にたくさんある珍しい地形の空港
隠岐や出雲のようなジオパークほど目立たなくても、特徴的な地形の場所にある空港はたくさんあります。いくつか挙げてみます。

佐渡、大島、南紀白浜:いずれも日本ジオパークの範囲内。
富山:河川敷の上に滑走路・駐機場があります。飛行場や離着陸場では結構見られる形態ですが、空港では国内唯一の存在です。
関西国際:海上埋立地→おかげで今回浸水しました。関空のあと、中部国際、北九州、神戸と海上空港が次々に生まれています。
鳥取:愛称の通り元々鳥取砂丘の領域です。空港南方にある湖山池が空港付近に堆積した砂丘によって海と分離してできた湖として知られています。
岩国:河口の三角洲を活用。旧広島西(現広島ヘリポート)なども同じです。広義では、羽田も似たようなものですね。
佐賀:干拓地。人工で水抜きしてできた珍しい陸地にあたります。
長崎:島をそのまま空港化したもの。関空のような海上空港とは微妙に違います。
上五島:文化的景観の上五島石でできた山の上
鹿児島:平なシラス台地
徳之島:海岸のリーフを活用(直前までの土地活用は塩田)。久米島も同様。
粟国:沖縄では珍しい火山岩の島のなかで琉球石灰岩(珊瑚の跡)に立地

ざっくり挙げてみただけでもポロポロ出てきます。

空港の良いところは、これらの地形を離着陸時に空から高みの見物できることです。これだけは鉄道や車にはできない、空港ならではの楽しみ方でしょう。

ほとんどの人は、普段、あまり意識せずに観光していますが、自然の観光地、いわゆる風光明媚な所は、大規模な地殻変動によって形成された特徴的な所が多いです。空港だって同じく地形が特徴的。であれば、観光をしてもおかしくない所のはず。空港は、実は、地形に興味がなくても、楽しめる、実に魅力ある施設とも言えそうです。

パッと見た目は地形に特徴があまりないけれど、地形が注目された空港に仙台があります。
この空港は、2011年の東日本大震災のときに津波に襲われたのが記憶に新しいのではないでしょうか。この空港が立地しているのは、仙台平野の海近く。海岸は砂浜が続いており、何となく、津波が来そうなことは分かります。
ただ地形をみると、空港付近は、河川以外では最も山側まで津波が押し寄せたことが分かっています。周囲はほとんど標高差が分からない平野が広がっているのですが、空港部分は海岸平野・三角州に当たる地域でした。海岸平野・三角州は谷底平野・氾濫平野よりも微妙に標高が低く、同じ平野の中でも、津波のリスクが高かったようなのです。
周囲より標高が低いのかは分かりませんが、似たように海に近い空港はいくつかあって、庄内、高知などが一例ではないでしょうか。

また、例えば、沖縄の空港は、島自体が珊瑚礁からできた石灰岩の大地であることがほとんどです。石灰岩だから、穴も開きやすく、新石垣には、滑走路下に洞窟もあるほど。ここからは、日本最古の人骨が出たことでも知られています。
こうやってみていくと、地学的に見どころがあるオモロイ空港は探せばいくらでも出てきます。

201809-5c.jpg
河口の三角州にあることがはっきり分かる岩国飛行場。三角形が印象的です。


空港は自然を壊す嫌われものになることが多いですが、空港こそ、自然をしっかり活用していて、自然と人々とを結びつけているとも言えそうです。
空港は、実は、地学的な魅力が満載。あなたの地元の空港も、なぜそこにできたのか調べてみたら、もしかしたら新しい発見があるかもしれません。これを機会にぜひ、地形が特徴的な空港へ行ってみませんか。


posted by johokotu at 21:00| 東京 ☀| Comment(0) | ◆旅行記 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: