※2019年6月にアップした2019年5月の旅行記です。
■2019.05 富山・小松・能登・松本の旅行後
今回の旅で訪れた4空港+1離着陸場には、どこも、周辺緩衝地帯やターミナルに人が集まる様々な地元民向け施設がありました。
旅の終わりは、そんな、空港にある地元民向け施設を探ってみます。
■スポーツ施設が多かった信州・北陸
まずは、今回訪問した空港にあった地元民向け施設を挙げてみます。
・富山:富山県空港スポーツ緑地(総合体育センター、陸上競技場、テニスコートなど)
・能登:空港自体が道の駅。ターミナルは行政施設を併設。
・小松:スカイパークこまつ翼(サッカー・ラグビー場、ソフトボール場、グラウンドゴルフ場・パークゴルフ場)
・松本:長野県松本平広域公園信州スカイパーク(やまびこドーム、プール、陸上競技場、馬術競技場、マレットゴルフコースなど)
・飛騨エアパーク:(厳密には空港と若干離れていますが)みはらし広場と丹生川運動公園(グラウンド、テニスコート)
能登以外はスポーツ施設を設けています。特に、富山、松本は周辺に広く整備。小松や飛騨(隣接地)も、広くはないですが、グラウンド数面を配置していました。能登はスポーツ施設はありませんが、ターミナル館内に行政施設を設置していました。そして、いずれの空港も周辺公園などに展望台がありました。
富山と小松は地元民向けの運動施設ですが、設備がかなり充実。松本に至ってはJリーグも開催される陸上競技場を設置するなど、各空港ともかなりの本格派でした。
※能登も、地元民向けではありませんが、ターミナル横にある日本航空学園内に同校用のグラウンドなどがあります。
■全国的にスポーツ施設が多い
全国的に、空港周辺の緩衝地帯には、公園を設けることが非常に多いです。しかし、その多くは、芝生広場や展望台、飛行機展示といった、いわゆる都市公園仕様。富山、小松、松本のように本格的なスポーツ施設や行政施設を設けているのは、それほど多くありません。
ざっくりあげると、以下の空港で緩衝地帯に地元民向けの施設を設けています。
<緩衝地帯に地元民向けスポーツ施設がある空港>
・札幌(丘珠):コミュニティードームつどーむ(全天候型グラウンド、テニスコート、パークゴルフ場など)
・三沢:三沢市民運動公園(野球場)
・大館能代:大館能代空港周辺ふれあい緑地(テニスコート、スポーツ広場、クロスカントリースキーコースなど)
・秋田:県立中央公園(あきたスカイドーム、陸上競技場、投てき場、野球場、アーチェリー場、マウンテンバイクコースなど)
・庄内:庄内空港緩衝緑地(オートキャンプ場、アーチェリー場、テニスコート、グラウンドゴルフ場、ゲートボール場など)
・調布:東京スタジアム、武蔵野の森総合スポーツプラザ、大沢グラウンド、調布基地跡地運動公園
・名古屋:豊山グラウンド、豊山スカイプール
・岡山:日応寺自然の森スポーツ広場(野球場、パターゴルフ場、テニスコートなど)
・広島:中央森林公園(サイクリングロード、グラウンドゴルフ場、テニスコートなと)
・高松:さぬき空港公園(グラススキー場など)
・大分県央:大野総合運動公園(グラウンド、野球場、テニスコート、ゲートボール場など)
・喜界:喜界ガーデンゴルフ
<ターミナル地区などに地元民向け行政施設を設けている空港>
・大館能代:道の駅
・花巻:花巻市交流会館(市のカルチャールームなど)
・但馬:パスポートセンター
・徳島:運転免許センター
※鳥取:数年前まで国際交流センターあり
以前の旅行記でこれらの施設は一部取り上げたことがあります。
http://johokotu.seesaa.net/article/269616447.html
こうやって見ると、全空港の一割程度に地元民向け施設、特にスポーツ施設が整備されていることが分かります。
秋田は施設数がかなり多く、市民が運動しに行くならここ、といった感じです。調布も跡地を再開発しているため範囲が広く、スポーツ施設だけでなく大学や病院も整備。本格的な競技場の数々は、東京オリンピック・パラリンピック2020でもフル活用される予定になっています。
今回訪問した松本も、秋田や調布と並び施設数が多い空港です。富山も数は多い方です。
それぞれの施設を見てみると、市中ではなかなかお目にかかれないアーチェリー場を設けている空港が複数あるほか、競技大会ができる公認施設もあり、大館能代のクロスカントリースキーコースや広島のサイクリングロードなど珍しい施設もあります。
名古屋の豊山グラウンドは普通の野球グラウンドですが、毎年イチロー杯が行われることでも有名です。
これらの施設はあくまでも市民向けなので、空港利用者が使うことはあまり想定されていません。しかし、富山の総合体育センターでは、卓球場などが気軽に利用でき(30分ごとの利用料設定)、空港内でも待ち時間での利用がPRされていました(令和元年5月現在、航空利用者・空港内店舗利用者がビリヤード・光線銃・卓球のいずれかを30分半額で利用できるサービスもありました)。
以前の旅行記(→http://johokotu.seesaa.net/article/462424498.html)でも書きましたが、ここ数年、空港内に子どもの遊び場がたくさん登場しています。さらに、昨年末には、東京国際空港の第1ターミナルにコトを提供する施設としてTHE HANEDA HOUSEがオープンするなど、いま、体を動かす施設が空港のトレンドです。飛行機の待ち時間にちょっと時間潰しに運動すると、施設を活用できたら嬉しいところです。
そういえば、松本については、空港偏愛漫画の前略 雲の上よりでも、待ち時間?に、国宝級?の信州スカイパークを二周歩いて筋肉痛になっていましたね(笑)
■行政施設は能登が最先端
行政施設併設では、能登の右に出る空港はありません。道の駅であることに加え、石川県のいくつかの出先機関がターミナル内に入っています。ひとつの建物に空港、道路、役所の三つの機能が備わっています。イベントを開催しなくても、空港に飛行機利用者、道の駅に観光客、行政施設に地元民、さらにそこに勤務する人々と多くの人が普段から集まります。
これらの取り組みにより、第32回国際交通安全学会賞(業績部門)を受賞しています。
地方の空港では、飛行機が飛んでいない時間帯は閑古鳥が鳴いている空港が多く、入居している売店や飲食店は苦戦を強いられています。今回訪問した空港も、富山では売店が長い昼休みをとり、松本は最終便が飛び去った17時前には早くも全店店仕舞いをしていました。
しかし、人が集まるなら、こういった店も維持しやすくなり、航空発着時間帯以外に来た人も利用しやすくなります。
空港周辺の運動施設に運動に来て帰りに空港の飲食店に寄る、行政施設に手続きに来てついでに売店で買い物して帰る、といった具合。こういった施設を入れることで、空港がもっと賑わう原動力になりそうです。
全国の空港を回ると、こういう施設を設けられそうな空港は結構たくさんあります。
そもそも空港が県立であることも多いので、空港と行政施設の相性は抜群によく見えます。でも、なかなかこういったコンセプトの整備が広がっていません。
個人的にはとても不思議ですが、サービスでもお手本にされることの多い東京国際(羽田)や成田国際には市民向け行政施設はありませんから、むしろそういう施設がない方が世の中的には常識なのかもしれません(厳密に言うと、羽田は空港内にある羽田空港警察署で免許更新が出来たりします)。
行政主導だと、市民の福利厚生の側面が強くなりますから、どうしてもスポーツ施設や文教施設に偏りがちです。しかし、民間主導にして商業施設の誘致するのもひとつの方法ではあります(乗り遅れ防止のため渋滞対策の同時実施は絶対条件ですが)。名古屋ではそれを実践し、旧国際線ターミナルにショッピングモールが開業しています。
■施設集約で人を集めるのは商業施設と同じ
さまざまな施設を集約させて、人を集めるのは結構ポイントになるやり方です。
最近の街中施設はこういった集合型が非常に多いです。集合型にできず、各店が点でバラバラな商店街は衰退。一方で、集合型となったショッピングモールが発展しています。
昔から駅に図書館があったり、デパートやスーパーがあったりするのはよく見られますが、最近では、ショッピングモールの中に行政施設が入っているところも多くなりました。客からすれば全て1か所で済むのですから、集まるのが当然と言えば当然。これらの施設は人が集まる場所なので、バスの発着点になり、便利になったアクセスでさらに人が集まるという、好循環になっています。
成田国際空港に直行バスが走るイオンモール成田は、開業前は周囲が田畑と山林しかない地区でしたが、このショッピングモールが出たことで、アクセス交通が発達。さらに、集まった人を目当てに、隣接地にも商業施設が立ち、人が集まる地域に変貌しています。
そんな目で見ていくと、空港はちょうど良い集客施設でもあることに気付けます。空港という施設だけでも飛行機が人を運んできて、バスの発着点にもなります。これは、集客施設が航空関連か商業関連かの違いだけで、中身はショッピングモールとそっくり。スポーツ施設や行政施設を集約することで人を集め、アクセスがさらに便利になれば、もっと人を集められるというわけです。
また、地方ではバスの終点は、学校だったり、病院であったりします。これは、普段から利用する人が、自家用車が利用できない学生やジジババだから。自動車免許返納がブームになっている今、その需要は益々高まります。
飛行機の騒音があるので、適切かどうかは分かりませんが、こういった施設を隣接させるのもひとつの手でしょう。そうすることで、バスの発着点にもなり、ますます便利になります。
学校隣接は能登が実践していました。そして、実際に見た朝のバス利用から考えてみると、学校を隣接させた効果があったことが分かります。
こうやってアクセスが便利になれば、就航便数の増加も見込めます。
南紀白浜が空港をバス結接点にしようと試みていますが、アクセスを便利にするだけでは片手落ちで、空港に何らかの施設を加えることがポイントになりそうです。
空港は街の中心部から外れていることが多いです。車で行かざるを得ないような辺鄙なところにある空港にスポーツ施設を造っても人が集まるかよ、という意見もほとんどだと思います。
しかし、例えば、横浜だって開港したときはただの寒村でした。同じように、港である空港だって、大化けして、そもそも行政施設だけでなく、人が生活する地域に変わる可能性は秘めているということです。
江戸時代は街道沿いに街が出来、大正の頃になると鉄道駅を中心とした街になり、さらに平成には道路網を元に商業施設が集積して街が動いていく。家畜が驚くからと鉄道を拒んだら街が衰退したとか、駅前商店街は郊外のショッピングモールに客を奪われて気がついたら駅利用者がいないとか、そんな所は日本各地にあります。逆に、拠点を獲得し、大きく発展する所もあります。
今回訪問した能登を始め、岡山や熊本など、全国の空港近くには工業団地があります。これも空港があるからこそ。ここに勤める人が周囲に住み、その人たちを便利にするために商業施設がやって来て、さらに福利厚生も必要になるといった具合です。
空港にスポーツ施設や行政施設があるのは、そんな第一歩なのかもしれません。
話が少し飛躍しすぎているかもしれませんが、そんな見方で空港を見ていくと、ワクワクしてくるのではないでしょうか。
今回訪問した空港に本格的なスポーツ施設がたくさんあったことから、少しだけ施設の充実について考えてみました。
そんなこんなで、いつもの通り、軽〜い空想的な話題もしながら、旅のまとめを軽〜く〆させていただきます。
2019年05月27日
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