◆空港検疫 入国者への風当たり強し、実は差別的になっている対応止めませんか
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に伴う空港検疫を巡って、検疫のやり方や入国者に対する風当たりが強くなっています。
6月に入り、特に愛知県などで、入国者を起点とすると「”思われる”」感染拡大が続出しています。このため、岐阜、愛知、三重の3県知事が、PCR検査結果が出るまで空港からの移動禁止などを要請するなどしたため、報道機関も大騒ぎをしはじめています。
関連する記事のYAHOO!JAPANなどのコメント欄を見ても、「そもそもなんで今入国できるのか」といった、入国者自体を否定するような発言が結構見られます。
でも、よく考えてみると、実は、この考え方はただただ差別的で、非常に危険です。
何故かと言うと、入国者を起点とすると思われる感染拡大している原因は、検疫のやり方でも、入国時の行動でもなく、多くは、日本在住者の行動や入国後の行動が原因だからです。
入国者は皆、日本に入国してしまっている
確かに、空港検疫での陽性判明は、6月に入ってから0.4%以上で推移しており、国内感染状況より著しく悪い危険な状況です。
しかし、旅行者等は入国を拒否できるでしょうが、日本にルーツがある方(日本人や日本在住者)の入国(いわゆる帰国)を拒むわけにはいきません。そもそも日本は、G7の中では唯一再入国が認められていない、どちらかというと検疫強化国で、航空便に乗って来られる人からかなり限定されています。
「検疫」はイタリア語で40日間を語源としています。14世紀にベネチアで入国しようとする船ごと40日間海上で留め置き、疫病がないことが確認されたら入国を認めるという入国制限をしたことに始まるとされています。
しかし、日本では(というか世界各国とも)、今回のCOVID-19について、この方式を採用していません。
ベネチアのように飛行機内での待機を求められるわけではなく、検査結果が出る前に飛行機から下ろしてしまいます。つまり、その時点で入国している日本滞在者になっています。海外の人ではないのです。
日本に入っている以上、日本国内で対処しなければならないわけです。
検査結果が出るまで飛行機の中にいろ、という対応もしようと思えばできますが、そうなった場合、陽性判明者は、日本にルーツがある方なのに入国を拒否して、そこから飛行機で国外退去でしょうか?
陽性であろうが陰性であろうが公共交通期間を利用できないのに、国外退去は飛行機利用可能なのでしょうか。不思議です。
入国者は皆、きつい制限を「要請」されている
空港検疫では、これらを考慮して、そもそも陽性の疑いが強いわけでもないのに、
全入国者に対して、
「公共交通機関の使用禁止」
「14日間の外出自粛要請」
「症状がある場合は指定場所での待機強制」
をし、対処しています。
国内で外出した翌日から、こんなことを要請されたら、約1億2千万人の日本人のうちいったい何人が実行できますかね?
それほどきつい制限を入国者は要請されています。
空港から出るなという意見がありますが、もしもそうなると、入院先は、成田空港だと千葉、羽田空港だと東京だけになってしまうんですね。
すでに日本に入り込んだ他県民を千葉や東京で対処しなければならなくなります。
こうやってよく考えてみると、「空港から出るな」と差別的に言うのは、あまりにおかしい事が分かります。
陽性判明したら、各県が迎えに行けば良いのに、実際にそんなことしている県は皆無ですし、感染が分かった後にそんな長距離移動させる猶予はないでしょう。
それだったら、無症状で移動も可能な状態のうちに、各居住県まで移動してもらった方が良いというわけです。それすら拒否するなら、そんな県は、県民を守る気がないということですよね。
自家用車などで(もちろんトイレ含め途中でどこにも寄らないことが前提で)自宅に帰宅し、14日間の外出自粛すれば、理論的には、誰にも会わないのだから、感染が拡大するわけがない、という考えに基づいていると言えるでしょう。
他人と接触するのが感染拡大の最大の原因
そうやって考えてみると、入国者の感染者が、他人と会うから国内感染が広がっていることに気付けます。
例えば、6月1日に岐阜県で1か月ぶりに確認された感染者(岐阜県151例目)は、入国者の配偶者です。なぜか成田まで入国者を迎えに行っているんですね(この入国者は帰宅後に陽性と判明)。
14日間外出自粛要請されている人と、なぜこの人は濃厚接触してしまったのでしょう。
地方の人が東京に行ってウイルスをもらってくるのと、何も変わりません。
名古屋市284・285・286・287・288例目では、入国者の濃厚接触者が14日以内に出歩いたことで、中学校が休校になるなど大騒ぎになりました。入国者が誰とも接触しなければ、また、濃厚接触者が誰とも接触しなければ感染が拡大しなかった事例です。
しかも、この案件は、発症順番などをよく考えると、入国者本人は無症状のままのため、入国者が持ち込んだかどうかも怪しい案件なのに、当たり前のように「入国者原因」確定のように報道されています。
一方で、6月11日〜13日頃に入国したとみられる新潟市64例目の方は、入国後誰とも会わず、国内感染拡大は起こっていません。
・家族が迎えに来なければ、家族に病気はうつりません。
・自宅待機中に家族がいなければ、家族に病気はうつりません。
・本人と濃厚接触者が外出しなければ、周囲に病気はうつりません。
人によっては、家族がいるので、自宅に戻らず、指定ホテルで過ごす人も多いと聞いています。入国者もそれぞれで自粛努力をしているわけです。
悪いのは「入国者だから」じゃない
悪いのは、「入国者だから」ではない。ましてや「検疫の仕方が悪い」のじゃないんです。
よく考えてみれば、検疫の要請を考えない人や、接触している日本にいる人こそが感染拡大の原因である事に気付けます。
悪者を仕立て上げるのは好きではないですが、敢えて悪い点を上げろと言われれば、「外出自粛せずに動き回るから」悪いだけです。
入国者というだけで、「日本に来んな」と言い「空港から出んな」と言う。県知事ですらそういった発言をするのが当たり前のようになっているわけですから、異常です。
個々人の意識として、感染が拡大しているこのタイミングで海外から移動するのは非常識だ、という意見はあるでしょう。
でも、国家間の移動の場合と、地方間、都道府県間、市区町村間、街区間、そもそも家の外と内間とで何が違うのでしょう。
結局、STAYHOMEしないで外に出た時点で、同じですよね。今の日本で、入国者同様の動きをしている人はどれだけいるでしょうか。
国内の人は外出OKなのに、自分のことは棚に置いて、入国者だけを除け者にしているわけで、非常におかしく、根拠のない外国人排斥につながる危険をはらんでいます。これこそ「差別」という事例と言えそうです。
6月27日、ちょうど、神奈川県在住の10代男性が、有症状にもかかわらず、濃厚接触者として検査待ちのタイミングで熊本県の実家に帰った事例が報告されました。
国内にいる人は、感染可能性が非常に高い状態であるにもかかわらず、症状があっても外出OK、それどころか公共交通機関も利用できます。
一方で、入国者は、単なる風邪であっても、COVID-19患者でも、PCR検査時に症状がある場合は、空港付近の待機場所での強制待機となっています(一方で、無症状の場合は、自宅に公共交通以外で戻れるなら移動はOK)。
強い制限を受けている人がさらに批判を浴びるというなんだか不思議な事態になっているのです。
COVID-19には罹りたくなくても罹ってしまうもの。
差別的な行動はせずに、油断はせずに、入国者も日本にいる人も、一人一人で感染拡大防止に努めていきませんか。
2020年06月28日
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