◇空港検疫 感染が収まり気味のアジア諸国からの入国者の検査陽性事例が急増中
空港検疫で、先月末〜今月にかけて、感染が収まり気味のアジア諸国からの入国者の検査陽性事例が急増しています。
7月30日に香港(成田着)、8月1日にタイ(羽田着)、ベトナム(成田着)、8月2日に中国(成田着)、8月6日に中国(成田着)、韓国(成田着)、8月7日に韓国(関空着)、8月8日にタイ(羽田着)、ベトナム(成田着)、ベトナム(成田着)からの入国者の感染確認がされています。また、台湾当局の発表で、8月1日に行動歴非公表とした台湾からの入国者が感染確認していることが分かっています。
韓国や香港は感染状況がやや高めに出ていますが、普通に外出できる東京都に比べれば数値は低い(死亡率などは4分の1程度)です。
中国も初期の爆発的増加時に比べれば感染が収まっています(中国は起源国であり、数値も隠しているのではないかという不信感が強い国ですが、公表されている数値上は日本よりも感染状況が全然低いです)。
台湾とタイもほとんど感染はなく、ベトナムに至ってはほぼゼロと言っても過言ではない国です。
これらの国は7月1か月間(上記7月30日の事例除く)で、上記国からの入国者の感染は1人も確認されておらず、異常な増加です。4月3日の全員検査以降の4か月間で見ても、中国2人、香港1人、台湾1人、タイ2人しか確認されておらず、異常です。
■原因は大きく四つと推定
原因が不明ですが、抗原検査、入国規制緩和、現地の感染拡大や検査体制、検査結果公表方法の変更の大きく四つあると推定される事態となっています。
抗原検査
まず原因として考えられるのが唾液による抗原検査です。
7月29日より成田国際空港と東京国際空港で、唾液による抗原検査が始まっています。
上記の感染低リスク国からの入国者の陽性確認は、7月30日以降に急増しており、最も疑われる原因となっています。
全体の感染確認も、7月29日までは10人超えの日が連続していたのに、7月30日以降検査数が急増しているにもかかわらず、10人超えは2日間だけとなっており、偽陰性、偽陽性ともに多いのではないかという推定です。(8月2日は20人感染確認されていますが、団体感染と思われる事例が多発した日で、かつ10歳未満の単独感染が多かった(=同行者が偽陰性だった可能性が高い))
「唾液を用いたPCR検査、LAMP検査及び抗原定量検査と、鼻咽頭ぬぐい液PCR検査を比較し、高い一致率を確認」されたことから、検査方法が変わりましたが、一致したとされる具体的な数値は非公表で、本当に大丈夫なのか気になる事例です。
入国規制緩和
次に考えられる原因は入国規制緩和です。
上記の確認のうち、半数は8月6日以降です。
8月5日より入国規制が緩和され、外国籍者の再入国が可能になりました。当然入国者の総数が増えている可能性があり、それに引きずられて増加したと推定されます。
ただし、再入国者は、現地での検査結果が義務付けられていますから、感染している可能性は低いはず。うまく説明がつかず、悩ましい事態です。
現地の感染拡大や検査体制
となると、疑われるのは各現地の感染拡大状況や検査体制。
本当は感染が蔓延しているのに、どこかの国のように検査しないから見つかっていないだけとか、検査体制が不十分で感染者を発見できていない可能性があります。
タイやベトナムはほぼゼロですから、入国者の総数が増えても感染者はほぼ増えないはず。入国者の総数が増えたことで感染者が急増しているのなら、実は感染が蔓延している可能性が否定できなくなってきます。
ただ、これも、7月までは感染確認がほとんどされていない点の説明がつきません。
検査結果公表方法の変更
最後の原因は検査結果の公表方法です。
韓国、中国、香港、台湾、ベトナム、タイとも入国する総数が非常に多いです。ほかにもフィリピンのように入国する総数が多く、感染確認が異常に多い国もありますが、上記六つの国・地域からの入国者にも元から感染者がある程度いた可能性があります。
それが出てこなかったのは、これまでは非公表として隠そうとする人が多かったと推定されるということです。今の確認状況があまりにも急増すぎるので可能性として低いですが、たまたま公表して良いとする人が重なっただけとも考えられます。
非公表という不思議な方法がとれるので、それが推定できないのが残念なところです。
実は先月中旬から、それまで非公表も多かった年齢と性別が非公表となる事例がほぼなくなっています。検疫が公表・非公表に関して質問内容を変えたと思われ、それに伴って行動歴を公表して良いとする人が多くなった可能性があります。一因としては残る要因になっています。
上記四点を上げましたが、二つのこと(検査方法変更と入国規制緩和)を一緒にするものだから、原因推定も難しくなってしまいました。今のところ、検査方法変更が最も怪しいですが、決め手には欠けています。
検査方法変更が原因だとすると、感染者のすり抜けが懸念される由々しき事態です。入国者は引き続き、14日間の自主隔離が求められていますから、それをきちんと守ってもらえるなら、感染拡大は防げます。しかし、直行便は、世界最大の感染国アメリカ、東南アジアならフィリピン、中東ならカタール、欧州なら英国といった感染拡大国からばかりが目立つ状況で、入国者の意識は分かったものではありません。自粛不要で経済優先!みたいな感覚が常識なら、14日間の自主隔離をせずに出歩くケースも懸念されます。
(入国者だけでなく、忘れがちなのが国内に元からいた、これらの入国者の濃厚接触者(家族等)。これらの人も接触後14日間(=13日後に接触したならその14日後まで)は外出自粛しないと意味ないです。実際に愛知県で濃厚接触者が入国者の入国14日以内に動き回って感染を広げた事例が出ています。)
当然、たまたまこれらの国からの感染が重なっただけかもしれませんが、上記国・地域からの入国者が引き続き感染確認されるようであれば、入国体制・検査体制の見直しが不可欠になってきます。
推定原因の検証には、もう少し長い期間結果を見ていく必要がありそうです。
■7月末以降の低感染アジア諸国からの入国者事例
左から事例番号、入国日、入国空港、年代性別、居住地、行動歴(渡航元)。全員無症状。
No586 7/30 成田 60代男 非公表 香 港
No589 8/01 羽田 20代男 長野県 タ イ
No599 8/01 成田 70代男 山梨県 ベトナム
No600 8/01 成田 30代男 北海道 非公表 →台湾と判明
No624 8/02 成田 30代男 千葉県 中 国
No650 8/06 成田 10未女 愛知県 中 国
No651 8/06 成田 20代女 埼玉県 韓 国
No655 8/07 関空 30代男 非公表 韓 国
No661 8/08 羽田 40代男 埼玉県 タ イ
No663 8/08 成田 20代女 群馬県 ベトナム
No669 8/08 成田 20代女 富山県 ベトナム
ちなみに、南関東以外の在住者が多い点が気になる傾向です。
■各国の感染状況
厚生労働省発表(9日12時)の人数から率(切捨)を算出。人口は日本は各行政機関発表、各国は日本外務省発表の数値。
東京:罹患率0.110%=感染15,536人、死亡率0.0023%=死亡 333人/人口13,999,624人(2020年7月)
日本:罹患率0.037%=感染46,783人、死亡率0.0008%=死亡1,040人/人口1億2596万人(2020年7月)
韓国:罹患率0.028%=感染14,598人、死亡率0.0005%=死亡 305人/人口 約5,127万人(2016年)
中国:罹患率0.006%=感染84,619人、死亡率0.0003%=死亡4,634人/人口 約13億9,273万(2018年)
香港:罹患率0.054%=感染 4,008人、死亡率0.0006%=死亡 51人/人口 約734万人(2016年)
台湾:罹患率0.002%=感染 479人、死亡率0.0000%=死亡 7人/人口 約2,360万人(2020年)
タイ:罹患率0.004%=感染 3,348人、死亡率0.0000%=死亡 58人/人口 約6,891万人(2017年)
ベトナム:罹患率0.000%=感染 812人、死亡率0.0000%=死亡 10人/人口 約9,467万人(2018年)
2020年08月10日
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