◆空港検疫 怪しい抗原検査? ー 総数減少・欧米急減・低感染国急増 入国陽性者は無症状率九割のため取り逃がし懸念強まる
入国時に行われている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の唾液による抗原検査が偽陰性を大量発生させている可能性が高くなってきました。
厚生労働省は7月29日から、成田国際空港(成田)と東京国際空港(羽田)の検疫で行われているCOVID-19の感染状況を調べる検査で、唾液による抗原検査を導入しました。関西国際にも8月中には導入すると発表されています。
■7月29日を境に陽性確認者の傾向が明らかに変わった
そんな中、7月29日以降、空港検疫でのCOVID-19陽性者の傾向が大幅に変化。
検査方法の変更で、偽陰性や偽陽性を大量発生させている可能性が高くなっています。
入国者数(検査人数)の総数は大きく変わっていないのに、
・7月29日を境に検査陽性者の総数が急減
・欧米からの入国者の検査陽性者が急減
・各国の感染状況が低いアジア諸国からの入国者の検査陽性者が急増
といった変化が露骨に出ています。
夏休み期間なので、日本人の利用が増加し、外国人の仕事需要(船員などの出稼ぎ)が減った可能性はありますが、かなりの変化です。
特に気になるのは、7月29日以降、比較的感染が収まっているはずの国からの入国者の検査陽性が立て続けに確認されていること。ベトナム、ニュージーランド、台湾、タイ、マレーシア、香港、中国、韓国などの国からの入国者の感染確認が相次いでいます。
これらの国から入国者は、7月29日〜8月20日の23日間に20人も検査陽性となっています。4月3日〜7月29日の118日間には6人(5月と7月は0人)しか検査陽性になった人はおらず、異常な急増です。確認中の人や非公表者がいるので、7月までに実際にはもっといた可能性はありますが、それでもあまりに多くなりすぎです。
また、8月12日には、8月1日にブラジルから入国した三重県在住者が14日間の自宅待機中に発症。入国時の検査が偽陰性だった可能性が高かったことが分かった事例が出ています。(この事例は三重県から感染確認の発表が出ましたが、入国者の単なる濃厚接触者だと嘘発表がなされ、入国者であることが隠匿されました。翌日にもう一人陽性となったことで、この人物も入国者だったことが発覚しています。)
陽性者の発生傾向からは、唾液による抗原検査が、欧米株には反応しづらく、東アジア株に反応しやすいと推定される状況になっています。欧米便は飛行時間が長いので、それだけ唾液分泌量が少ないとか、欧米人は唾出すのが苦手とかも影響している可能性はないでしょうか、、、(隣国人は痰吐き上手ですもんね)。着陸直前に機内食食べてトイレでうがい薬なんてしてたら、ウイルスを捉えにくいでしょう。抗原検査はPCR検査よりも検体の量が必要とされていますから、意外と馬鹿に出来ない傾向です。
ちなみに、1日着のベトナムからの入国者(日本人)は、空港検疫で陽性が出たものの、その後2回検査したところ、2回とも陰性だったため、一週間程度で自宅待機になったと、ベトナム保健省が発表しています(日本側からは国も県も市区町村も一切発表なしで隠匿中)。
ベトナムの濃厚接触者も検査陽性者は一人も出ておらず、ベトナムでは偽陰性だったと結論付けられているようです(最初に感染確認された日本帰国者は自宅待機になったようですが、ベトナムの濃厚接触者は、念のため、14日間隔離が継続されています)。
比較的感染が抑えられている国からの入国者の空港検疫での陽性確認事例
左から事例番号、入国日、入国空港、年代性別、居住地、行動歴(渡航元)。全員無症状。
No077 4/06 羽田 40代女 愛知県 タ イ
No120 4/12 羽田 20代女 東京都 タ イ
No130 4/20 成田 40代男 確認中 香 港
No139 4/26 成田 60代男 埼玉県 中 国
No226 6/09 関空 30代男 非公開 中 国
No280 6/20 成田 20代女 東京都 台 湾
No586 7/30 成田 60代男 非公表 香 港
No589 8/01 羽田 20代男 長野県 タ イ
No599 8/01 成田 70代男 山梨県 ベトナム
No600 8/01 成田 30代男 北海道 非公表 →台湾と判明
No624 8/02 成田 30代男 千葉県 中 国
No650 8/06 成田 10未女 愛知県 中 国
No651 8/06 成田 20代女 埼玉県 韓 国
No655 8/07 関空 30代男 非公表 韓 国
No661 8/08 羽田 40代男 埼玉県 タ イ
No663 8/08 成田 20代女 群馬県 ベトナム
No669 8/08 成田 20代女 富山県 ベトナム
No670 8/09 成田 20代女 東京都 ニュージーランド
No672 8/09 成田 60代男 埼玉県 中 国
No673 8/09 成田 30代男 東京都 中 国
No685 8/11 成田 30代男 千葉県 中 国
No686 8/11 成田 20代女 東京都 中 国
No687 8/11 関空 30代男 大阪府 韓 国
No695 8/14 成田 20代男 東京都 マレーシア
No698 8/15 成田 10未女 東京都 韓 国
No708 8/16 成田 10未女 東京都 中 国
■偽陰性発生の可能性は当初からの懸念事項
鼻咽頭拭い液PCR検査は、痛みを伴う上、検査中のくしゃみにより、検査者の飛沫感染リスクが唾液検査より高いです。また、結果が出るまで数時間かかり、空港検疫では一日以上かかる事例も出ています。一方で、唾液による抗原検査は、結果を最短30分程度で出せます。
空港検疫では、検査待機場所の確保が困難を極めており、その送迎にも時間や人手を割かれています。検査人数増加への対応がなかなかできていません。
このため、唾液による抗原検査にすることで、検査する側もされる側も負担軽減になるとみられていました。
しかし、唾液による抗原検査は、大きな問題があります。それは、無症状者の偽陰性が、鼻咽頭拭い液PCR検査より多いことです。
抗原検査は、発症して2日〜9日の人には有効とされています。無症状(=ウイルス量が少ない)の場合、ウイルス捕捉が甘くなり、検査での取り逃がしが増える可能性が高いとされています。このため、6月までは無症状者の感染確認には適さないとされていたほどでした。
それが、「唾液を用いたPCR検査、LAMP検査及び抗原定量検査と、鼻咽頭拭い液PCR検査を比較し、高い一致率を確認」したことから、7月中旬から無症状でも検査OKと方針転換しています。
しかし、これらの検査の差がどのくらい合致していたのか詳細は非公表。14日には名古屋市で、抗原検査で陰性だった人が10人以上もPCR検査で陽性になった事例も出ており、本当に一致率が高いのかは怪しいです。
検体採取の仕方が分かりませんが、検査員が明らかに鼻に棒を突っ込む鼻咽頭拭い液検査と違い、唾液検査の場合は、尿検査のように自分で取っている可能性があり、そうだとすると採取方法にもバラツキが出てしまいます。
唾液による抗原検査は、きちんとした確認が出来るのか、相当怪しいというわけです。
空港検疫での無症状率は、全員検査が始まった4月3日以降、ほぼ90%以上で推移しています(今は95%以上)。搭乗時に症状がある場合は、多くの国で搭乗拒否されるため、当然といえば当然。日本に着いて検査するときに症状がある人は、機内で発症するケースがほとんどと推定されています。搭乗時間は長くても12時間ですから、それだけピンポイントです。
九割の人は無症状なわけですから、発症後なら有効(≒無症状だとあまり有効ではない)とされていた抗原検査を採用することで、国内での検査以上に、偽陰性が大量発生している懸念があることが分かります。
■入国時の検査は実はオマケ
ただ、これらの問題は、空港検疫の場合は、解決策があります。
それは、帰国後14日間の自主隔離(外出自粛)がセットになっていることです。
万が一検疫で検出できずに逃がしたとしても、14日間は日本国内で誰にも濃厚接触しておらず、自宅で発症するだけなので、理論上は、日本国内に感染拡大しない、というわけです。
国内感染者に対して偽陰性を出してしまうと、彼らは外出禁止ではないので、「やったぜ、陰性だったから安心」と、一番ウイルスをまき散らしやすい発症直前〜発症直後に出歩く人が増えてしまいます。しかし、入国者は14日間は出歩けないのですから、仮に外国滞在時や飛行機の中でウイルスを貰っていたとしても、ほとんどの場合14日間の隔離中にしか発症しません。つまり、他人にウイルスをまき散らす可能性はほぼゼロです。(ダイヤモンドプリンセス号が自宅になっただけと考えると分かりやすいです。)
今の検疫体制は、入国者を、感染状況も外出禁止状況も日本と違う環境から来ているから、日本基準で感染を抑えられているか怪しい人たちという捉え方をしています。だから、本当なら、日本基準で検査をし、入国者は14日間完全隔離としたいところです。しかし、療養ホテル借り上げに反対運動が起きるほど民度の低い国なので、施設確保が容易ではありません(北海道の駐屯地とか沖縄の米軍基地ならいくらでも土地がありますけど、、、)。そして、入国者だという理由だけで、何度も検査したり強制隔離したりすれば、差別だと言われかねず、厳しい制限を科すわけにもいきません。
そこで、手間を最少にしながら、入国者の人権にも配慮し、でも、感染拡大を防ぐという目的を達成するため、入国時に念のため検査した上で、14日間を出来る限り快適に過ごせるようにしているわけです。
つまり、検疫のメインの部分は14日間の自主隔離であり、入国時の検査はその一部に過ぎないんですね。PCR検査も抗原検査も、その時一瞬の感染状況を見ているだけ。極端な話、検体を取った一秒後に感染してしまっている可能性もあります。14日間隔離は必須ですが、極論すれば、検査はやらなくたって別に良いわけです。
でも、普通に考えたら、日本国内と異なる対策をしている国から来た人を相手にするのだから、そもそも国内には持ち込ませたくないので、その時点でのチェックはしておくべき。それが入国時の検査であり、そこである程度のふるいにかけたというだけ。その上で、14日間隔離で本格的にふるいにかける確認をしているのです。
逆に言うと、入国時検査が全てだという前提なら、14日間の隔離は不要なはず。それを実施しているのは、検査が100%正しいわけではないことを明確にしている証拠です。
■理解されない14日間隔離の重要性
しかし、残念なことに、この考え方が、一部の入国者と日本在住者には理解されていません。入国時に、手間もかけ、苦しんで検査受けて、そもそも陰性だったんだから、ちょっとくらい外出したり濃厚接触したりしても良いだろうといった感じに考えている人がいるようなのです。
実は、分かっているだけで、14日間自主隔離を守らないで、感染拡大している事例が、千葉県や愛知県、三重県などで複数報告されています。また、入国者が空港からの帰りの車や自宅で同居者などと濃厚接触して感染拡大する事例も岐阜県や愛知県で判明しています。
自主隔離は、すなわち、他人(元から日本にいる人)と接触しないようにするということです。入国者には、配偶者に送迎して貰って家族のいる自宅に戻り、外出しまくる家族を横目に自宅で自粛するというパターンが非常に多いのですが、それでは迎える家族が媒介して感染が拡大するから本来NGです。やるのであれば、空港から自家用車を自分で運転して誰もいない自宅に帰宅して、誰もいない自宅で14日間の自主隔離としなければ意味がありません。あるいは家族や友人が空港まで迎えにいったら、そのまま仲良く14日間自主隔離しなくてはなりません。
でも、家族や友人に対しては、濃厚接触しているという感覚がない人が多いのでしょう。なかなか守られていません。
これら14日間の自主隔離をやって貰うのが、まず前提となっているので、どうせ感染している人は、入国時に検査しようがしまいが自主隔離中に自然と発症してしまいます。そこで、14日間苦労する人たちなんだから、今回、入国時の検疫ぐらいは少し緩和してあげましたよ、と厚生労働省が配慮してあげたとも捉えられます。
極論すれば、入国時には、検査してます風でも良いのです。入国時にウイルスの運び屋をうまく捕まえられればベターなだけ。今回は、そのふるいが少し粗くなりましたというだけです。
個人的には、どうせ14日間は自主隔離で食料買い出しにすら行けないのだから、検査にかかるのが、数時間なのか一〜二日程度なのかで、その人への影響は大して変わらないと思っています。なので、鼻拭いPCR検査の方が安心感が増すと思っていますが、日本の検疫は、入国者の精神的苦痛・手間の低減と、運用上自分たちの手から離れるスピードの上昇を重視したということなのかもしれません。
日本人の多くは「感染疑い者である入国者を検査陰性まで空港から出すな」と言うのですが、国内でそれを出来るか考えると、あまりに馬鹿げた主張であることが分かります。自宅から外出したら、その時点で感染疑い者です。仕事に行くとか、スーパーで買い物するとか、公園に散歩するとか、そもそもゴミ捨て行くだけでも、感染してる可能性はゼロではなくなります。そういったところに出て行ってしまったら、検査陰性になるまで家から出られなくなるなんて、普通は無理ですし、日本でそれをやっている人は一人もいません。でも、入国者はそれをやらねばならないのです。
入国時に検査することよりも、14日間隔離の方が重要であるという認識の人はほぼいないから、こういう馬鹿みたいな話になってしまいます。
よくよく考えてみると、空港検疫では、入国時に検査することより、入国する人が14日間の自主隔離を頑張ることこそが重要です。
これから入国される方には、ぜひ頑張っていただきたいですね。
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本記事の題名を見たとき、多くの人は「入国時検査がヤバい変化をしたのか」「検疫が対応を最悪な方に変えたのか?」などと思っていたと思います。
でも、よく考えてみると、そうではなく、入国時検査は、多少質が落ちても問題ほとんどないことが分かります。偽陰性が増えているかもしれないという懸念は、大きな問題のごく一部に過ぎませんでした。
結局、入国した一人一人とそれを迎える日本在住者が、濃厚接触せずに、14日間の自主隔離をきちんと過ごせるかが全て、という点に帰着してしまいました。
似たような話は以前にも何度か記事にしています。
入国者全員とその家族・友人・職場同僚等が、感染を拡大させないために絶対的に必要なことは何かを、もう一度、意識してほしいところですね。
個人的には不安なので、鼻咽頭拭い液PCR検査に戻してほしいですけど、、、。
・家族が迎えに来なければ、家族に病気はうつりません。
・会社の送迎者が迎えに来なければ、会社の送迎者に病気はうつりません。
・自主隔離中に家族がいなければ、家族に病気はうつりません。
・本人と濃厚接触者が外出しなければ、周囲に病気はうつりません。
パンデミックからもう5か月も経ちました。
一部の入国者の皆様とそれを迎える日本在住の皆様。そろそろ濃厚接触しないことや14日間自主隔離の重要性を理解し、本当に必要な対策を実践していきませんか?
■新型コロナウイルス感染症に関する検査について(厚生労働省公式サイト)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00132.html
■無症状者の唾液を用いたPCR検査等について(厚生労働省公式サイト)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_11636.html
■抗原検査で集団感染拡大なしと判断、PCR検査で10人超の感染判明(読売新聞公式サイト)
https://www.yomiuri.co.jp/national/20200817-OYT1T50005/
<偽陰性などに関する過去記事一覧>
□空港検疫 水際対策唯一の国内感染拡大経路?検査結果出るまでの待ち時間に感染拡大が判明
http://johokotu.seesaa.net/article/475413521.html
◆空港検疫 偽陰性ですり抜け?検疫陰性者が帰国2日で感染、14日間の外出自粛の重要性が明らかに
http://johokotu.seesaa.net/article/475596560.html
◆空港検疫 偽陰性ですり抜け?検疫陰性者とみられる2人が帰国5日で感染、14日間の外出自粛の重要性が明らかに
http://johokotu.seesaa.net/article/475601843.html
◆空港検疫 偽陰性ですり抜け?検疫陰性者が帰国4日後に感染、14日間の外出自粛の重要性が明らかに
http://johokotu.seesaa.net/article/475610648.html
◆空港検疫 偽陰性ですり抜け?検疫陰性者とみられる人が帰国後一週間で感染、14日間の外出自粛の重要性が明らかに
http://johokotu.seesaa.net/article/475616814.html
◆空港検疫を偽陰性ですり抜けたうえで二次感染?検疫陰性者の濃厚接触者が4日後で感染、14日間の外出自粛の重要性が明らかに
http://johokotu.seesaa.net/article/475654854.html
◆空港検疫を偽陰性ですり抜け?結局帰国者も感染判明、14日間の外出自粛の重要性が明らかに
http://johokotu.seesaa.net/article/475664316.html
◆空港検疫を偽陰性ですり抜け、14日間の外出自粛の重要性が明らかに
http://johokotu.seesaa.net/article/475794110.html
◆空港検疫 検査結果判明前の移動禁止に、パキスタンだけ?
http://johokotu.seesaa.net/article/475846019.html
◆空港検疫 入国者への風当たり強し、実は差別的になっている対応止めませんか
http://johokotu.seesaa.net/article/475956083.html
■新型コロナウイルス感染症 国内感染者が航空便などの公共交通機関で移動
http://johokotu.seesaa.net/article/475966210.html
◆空港検疫 岩国航空基地にウイルス持ち込み、日本国の検疫で発覚 国内線の航空便利用?行動歴の隠匿図る?
http://johokotu.seesaa.net/article/476224794.html
◆空港検疫 米海兵隊米国人家族 キチガイで新型コロナウイルス感染症を密輸、日本国内ではやりたい放題
http://johokotu.seesaa.net/article/476256309.html
◆空港検疫 偽陰性?が発覚、入国翌日に複数人と接触
http://johokotu.seesaa.net/article/476257981.html
◆COVID-19 全国知事会がGoTo機動的見直しや水際対策強化を要請
http://johokotu.seesaa.net/article/476425495.html
◆空港検疫 空港から遠く離れた横須賀市のホテルが指定待機場所であると判明
http://johokotu.seesaa.net/article/476475411.html
◆空港検疫 居住地千葉県は滞在地として記載の可能性、6月中旬以降交代船員の一時滞在増加?
http://johokotu.seesaa.net/article/476493180.html
◆空港検疫結果分析(国籍別) 国籍別感染者数初公表、4月から既に外国籍者の方が罹患率高かったことが判明
http://johokotu.seesaa.net/article/476514749.html
◆空港検疫 すり抜け帰国して後から次々感染確認、入国時は偽陰性の可能性?、14日間隔離の重要性明らかに
http://johokotu.seesaa.net/article/476858144.html
2020年08月21日
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