◆空港検疫全員検査半年経過、検査方法の変更が感染動向に強く影響している可能性
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で、4月3日から特定国からの入国者全員を対象にPCR検査・抗原定量検査が実施されています。
10月2日で半年(184日間)となりました。10月5日、6日に公開した記事に引き続き、細かい動向を見ていきます。
10月5日の記事 http://johokotu.seesaa.net/article/477743960.html
10月6日の記事 http://johokotu.seesaa.net/article/477763532.html
本日は、7月29日以降行われている検査方法変更による感染動向の影響を見ます。
■低感染国の感染確認には明らかに大きく影響
まずは非常に気になっている、低感染国からの入国者の陽性確認数の変化です。
青い背景の面グラフは検査人数(右目盛り)、棒グラフは空港検疫での陽性確認数(左目盛り)を示しています。
同じ罹患率なら、青い面グラフの数字に連動して、棒グラフも上下するはずです。
棒グラフのうち、色を付けたものが低感染国からの入国者の陽性人数です。灰色の分は、それ以外の国からの入国者です。
低感染国は、10月2日現在で日本よりも罹患率(感染者総数/人口)の少ない国・地域と定義しました。4月3日以降、ベトナム、台湾、タイ、中国、コンゴ民主共和国、ナイジェリア、ニュージーランド、マレーシア、韓国、マダガスカルからの入国者の陽性が確認されています。
この定義だと、例えばシンガポールは死亡率は日本よりダントツに低いですが、罹患率が高いのでここには入りません。
グラフを見れば明らかなように、検査方法が変わった7月29日を境に低感染国からの入国者の陽性確認が急増しています。
統計分析の場合、数字を駆使して、有意な差があるかとかを見ていくものです。しかし、正直そんな分析をしなくても、グラフを見ただけで、100人中100人が明らかに低感染国からの入国者の陽性確認が急増していると言えると思います。
ベトナムやタイ、中国などでは、自国内の感染者数が著しく少ないことから、日本入国時に陽性確認例が出ると、大々的に発表がなされることがあります。
8月以降の発表を見ていると、なぜか、「陽性だった入国者へのその後の検査で陰性が確認されたので、空港検疫は偽陽性だった」「自国内滞在時の濃厚接触者に陽性の者はいない」というケースが非常に多発しています。
日本の場合、後追い発表がないため、陽性だった人がその後どうなったのか良く分かりません。
しかし、それぞれの国の発表を見る限りでは、空港検疫が偽陽性である事例が多発している印象です。
■陽性者も捉えられなくなっている?
青の面グラフの推移と、その他の国も含めた棒グラフの推移を見比べると、7月29日を境に、棒グラフの陽性確認数も明らかに減少したことが分かります。
7月29日以降は、2か月間、陽性率が0.4%強でほぼ横ばいが続いて、ほぼ変化がありません。それも異常と言えば異常で、検査キットが、ウイルスの有無に関係なく、一定の数字で陽性と出るようになっているとしか思えないような状況です。
そもそも陽性者をとらえきれていない恐れがあり、大きな懸念事項です。
空港検疫ですり抜けた後、14日間の自主隔離中に発症した事例は、「海外渡航歴有」として発表されることが多いですが、別で発表しているところは皆無であり、都道府県や市区町村の詳細発表を根気強く一つ一つ見ていくしか見つける方法がありません。そうやって見ていくと、ポツポツと14日間の自主隔離中に発症したと思われる事例が確認されており、検査方法変更によるすり抜けが増えている可能性は否定できません。
ただ、第二波以降全体の感染者数が多いので、都道府県の発表も粗くなっているところが多くなっています。空港検疫で自県民が感染したことを取り上げない都道府県が増えた(当初は空港検疫事例だけで1時間も記者発表している県もあったのに、、、)うえ、東京都など海外渡航歴の有無を発表していない都道府県もあります。報道機関も海外渡航歴有の事例に触れない記事も増えており、気が付いていない事例も非常に多いと推定されます。
ちなみに空港検疫においては、9月以降は東京都在住者の感染確認が非常に多いです。つまり、すり抜け者も東京都在住者が多いと思われますが、市中に入ってから発症したケースは、前述のとおり東京都は海外渡航歴の有無を発表していないので、全く分からないまま有耶無耶になっています。
■10歳未満は米国が急増
続いて、10歳未満に限定した行動歴(渡航元)別のグラフです。
地域別に見やすいように、赤〜黄系統が東アジア・東南アジア、緑系統が南アジア、青系統が欧州・南北アメリカとなるようにしてあります。背景の青色の面グラフは、上のグラフと同様に検査人数、棒グラフの灰色は10代以上の感染者数を現します。
4月3日以降、韓国、中国、フィリピン、ベトナム、タイ、バングラデシュ、インド、パキスタン、英国、米国、ブラジル、ペルーからの入国者に10歳未満の陽性者が確認されています。
10歳未満の感染は、単独感染であっても、同行者(保護者)がほぼいるはず。しかも抱っこしたり手をつないだりして移動している場合が非常に多いです。このため、空港検疫で陰性でも、10歳未満が感染≒家族で団体感染というケースが多いと思われるため、しっかり注視する必要があります。
10歳未満は総数としては入国者は多くないですし、そもそも春頃は子供は感染しにくいといった分析もなされていたほどですから、10歳未満が感染確認されるだけでも異常と捉えるべきです。
そんな10歳未満の感染確認は、低感染国からの入国者ほどの差はないものの、7月29日を境に陽性確認が増えている印象です。
特に変化したのは行動歴(渡航元)の国。7月29日までは南アジアからの入国者、7月29日以降は米国からの入国者が多い状況です。
グラフには現れてきませんが、6月頃の南アジアからの入国者の場合は、同時に同じ日に同じ空港着で同じ国から入国の同じ都道府県在住者の感染が確認されるケースが多く、「家族感染してきた」と思われる事例が非常に多く見られました。
ところが、7月29日以降は、10歳未満の単独感染が目立ちます。
可能性として、一つは10歳未満の人の偽陽性、一つは一緒に入国する保護者の偽陰性が考えられますが、どちらなのかは不明確です。
実は、6月〜7月初めにかけては、自宅に戻った後に家族が発症し、都道府県が発表する事例が結構多く見られました。
しかし、7月29日以降は、そういう事例発表はあまり多くありません。前述の通り、第二波でアップアップしている影響で、詳細発表しないところが増えているせいで、実態が見えにくくなっています。
前者(10歳未満の人の偽陽性)であれば、家族が自宅に戻ってから発症することはないので、それで終わりです。この場合、そもそも発症事例が生じていません。
一方、後者(一緒に入国する保護者の偽陰性)であれば、家族が自宅に戻ってから発症しているかもしれませんが、都道府県から詳細発表がないので、不明なままになってしまっています。
後者であると、非常に由々しき問題ですので、今後も注視していきたいところです。
■引き続き注視が必要
徐々に入国規制を解除する動きが出てきていますが、5月頃に比べると、まだ感染は全然収まっていませんし、何となく空港検疫がジリジリ増加傾向なので、国内感染が来週あたりから再びジリジリ増加し始めるような気もします。
引き続き、入国者には14日間の自主隔離をしっかりしていただいて、国内の感染状況が悪化しないようにしてもらいたいところです。
情報交通ホットライン日本空港情報館ブログでは、今後もしばらくは、毎日の感染状況を取り上げていく予定です。
このほか、空港検疫結果の様々な数値を紹介しています。
元データが粗いので大した分析にはなっていませんが、参考にしてみてください。
「◇COVID-19関連カテゴリ」http://johokotu.seesaa.net/category/27549355-1.html
2020年10月10日
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