◇COVID-19 3月の機内クラスター感染事例半年経って確定的に
国立感染症研究所は10月23日に、国内線航空機内で発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の集団感染(クラスター感染)とみられる事例について報告しました。
3月23日関西地方A空港から那覇空港へのB便(飛行時間約2時間)の事例です。
23C席を利用した1人が利用当日に発症し、3月26日に陽性となった後、同じ便搭乗の14人が陽性だったというものです。
※同居家族1人も、3月26日に発症・3月28日に陽性届け出されています。
14人のうち「13例においてウイルスゲノム配列を確定でき, #1のウイルスゲノム配列と同一もしくは1塩基変異のみ示すことが判明, 同一の配列系統であることがわかり, 機内での感染として矛盾しない結果」だったとしており、機内で発生したクラスター感染だったことが確定的になっています。
分析では「前後左右2列を超える座席からも確定例を認めた」としています。公表されている座席配列を見ると、最も離れている人で7A席の方も感染しています。飛行中に感染したのか、空港待機中に感染したのか、機内に出入りする際に感染したのか、機内トイレで感染したのかなどは良く分かりませんが、普通に機内二次感染が起こることがはっきりと証明されてしまっています。
同便利用者の14人が陽性となったことは4月には分かっているはずで、半年経ってやっとこういった情報が公表されるあたり、なんだか情報提供が遅いなといった感じです。
なお、便名や関西地方の空港は非公表となっていますが、単通路、3-3席並び(ABC・FGH)、177席と言う航空機ですので、スカイマークのB737-800型機しか該当はなく、3月23日の神戸→那覇便と推定されます。
今回の事例では、以下のようなことが分かっています。
・機内二次感染は普通に起こる
IATAなどは機内二次感染事例はないと断言しているのですが、普通に考えて、機内での感染も起こる可能性はゼロではないです。「ない」ことを証明することは困難ですし、、、。これまでも8月の千葉県事例などで、機内二次感染が疑われる事例が報告されています。ただその頻度が少ないというだけです。
航空機をはじめ、電車やバスといった公共交通機関の中では感染は起こりにくい(あくまで起こり「にくい」です)と言われています。しかし、どんな状況でも、人と人(人-モノ-人ですら)が接触すれば、感染リスクはゼロではないです。航空機の換気は万全とPRされていますが、感染するときは感染してしまうので、リスクは低いだけということは認識した方が良いですね。
・2時間搭乗でもクラスター感染になる
今回の便はたった2時間の飛行です。それでもクラスター感染が発生してしまっています。
空港検疫での発症事例で、特に有症状事例は長時間便(欧米便)が多い印象ですが、短時間でもクラスターが起こることが分かったので、長時間だとよりリスクが高くなると言えるかもしれません。
感染者と同じ飛行機に乗っていた入国者には、全員に連絡の上、(隔離免除の超短期滞在者含め)14日間隔離を徹底してほしいところですが、無理ですかね、、、。
・接触連絡はごく一部のみにしかされない
今回の事例でもっとも注目すべきは、接触連絡はごくごくごくごく一部のみにしかされないことが判明したことです。
23C席の方が発症後、最初に接触連絡がされ、すぐに検査を実施したのは、同列の2列離れまで(23ABFG席)と前2列(21C・22C席)の客のみ(5人のみ)です。3席離れた同列席(23H席)や、座席の隙間から直接唾がかかりそうな斜め前の客(22B、22F席)、後ろの席(24列)すらも対象外となっています。
他県から発症者事例が出て連絡を受けたため、大急ぎで検査対象を前3列、後1列、左右2列へと拡大。さらに発症者が出たため、検査対象を左右・後列3列へとさらに拡大。そして、たまたま、調査対象ではなかった調査対象の代理人(同便に乗っていたギリギリ左右・後列3列にかからなかった人)が陽性になったことから、アタフタと最終的に同便搭乗者全員が対象となっています。
今回の事例でも19人には結局連絡がとれていません。16列も離れた人が感染するのに、斜め前に座っていても教えてもらえないのですから、そりゃ、感染経路不明の人はドンドン出てきます。今回も、斜め前の人が15日後に発症したら、機内感染に気が付かないままになってしまいましたから。こういった感じで、知らない間に機内感染している人も多いかもしれません。
COVID-19陽性になった際、14日以内に航空便を利用したのなら、積極的に情報提供してほしいですし、公共交通機関を利用した人が感染したのなら、麻疹の時のように、利用便名を積極的に公表してほしいものです。
ちなみに、当該乗客は「マスクもせずに激しい咳をしていた」ことが分かっています。マスクをしていた場合、濃厚接触に当たらないと判断されますから、もしかするとここまで機内感染が拡大した事を調査されることもなかったかもしれません。
今回、たまたまが重なったことで、機内感染することが分かったのは、不幸中の幸いと言えるでしょう。
・都道府県発表は不十分
今回の事例が沖縄県のどれに該当するのか確認したところ、沖縄県6例目がそれに該当しています(濃厚接触の家族が沖縄県7例目)。
しかし、公表情報では、航空便を利用したことは一切発表されていません。
沖縄県は、後追い発表されない都道府県なので、結局この事例の行動歴は不明なままとなってしまっています。沖縄県は、数日後に濃厚接触の家族の感染(沖縄県7例目)を発表した際も、6例目が飛行機を利用したことを公表しておらず、当然報道機関もそれ以上突っ込みもしていません。こういう都道府県・市区町村は非常に多く、東京都や神奈川県などが一例です。
これまで各都道府県から発表されている以上に、航空便利用事例は多いのかもしれません。
・報道機関ですら実態をつかめない
本事例は、航空便内での二次感染が発生した事例であることが、他の都道府県の他の方の感染事例発表で明らかにされたのか、一部報道がなされています。ただ、報道機関ですら把握している今回の事例での機内感染は2人だけ。各都道府県の発表を一つ一つ細かく見ているわけでもないので、14人もクラスター感染した事には気が付いていません。
例えば、7月に東洋経済新報の記事で、この便の事例と思われる内容が書かれているのですが、濃厚接触者2人とされています。この記事だと、真ん中席開けるとか、窓側席はリスク低いとか書かれていますが、今回の事例を見ると、あまり関係なさそうですね。
岡山県でこの便での感染事例が確認されており(同県5例目・7例目)、家族への三次感染の事例も出ています。
沖縄タイムスの報道でも、県は公表を渋っている様子ですが、取り上げられています。沖縄タイムスが機内感染に気が付けたのは、たまたま、他県からこの便に乗ってやってきた人の沖縄県在住家族が感染したこと、たまたま、岡山県が便名等を公表する都道府県だったこと、そして、たまたま、沖縄も岡山も感染者が少なく当該者を特定しやすかったことなど、たまたまが重なったから、たまたま気付けただけです。。今回、機内感染確認された14人は7府県に広がっているとされており、神戸発着便なので、兵庫や大阪辺りの人達と思われますが、両県とも当時既に多くの人が感染しており、一人一人の詳細は粗い状態でしたので、該当者を特定することも、そこから三次感染が出ているのかは全く不明です(各府県の発表を非常に細かく見ていけば分かるのかもしれませんが、パッと見ではさっぱり分からない)。
素早く動けば家庭内感染は防ぐことが出来るはず
岡山県の事例は、23日に沖縄入りした後、28日に帰岡しており、27日までに連絡が入っていれば、岡山での家庭内感染は防げたかもしれません(沖縄で14日間自主隔離することも出来た)。岡山県の6例目は、飛行機の中は感染は2列にしか広がらないという誤った知見に基づいた人災と言えます。
最近東京都などでの感染事例で家庭内感染が増えているという警鐘が鳴らされていますが、そもそも、市内感染(今回の場合機内感染)が防げれば家庭内感染もなかったはず。家庭内感染とは言いながら、本当の原因は別の行動にあるわけです。
だからこそ、大元の、こういうクラスターの公表は最速でしてほしい所です。
愛知県のごく初期の感染事例で、入国者が起因となって100人ほどに感染が広がった事例がありましたが、この末端を家庭内感染だと言った報道機関はほぼ皆無。ほぼ全報道機関が、入国持ち込み事例だと報道していました。でも、今多くの自治体では、クラスターの大元を言わずに、末端の家庭内感染が増えていると言っている、なんとも馬鹿みたいな話になっています。
人が動くから広がるわけで、さっさと同じ便の利用者に連絡入れて、全員に対して、14日間は自主隔離下さい。公共交通機関は使用しないでください。人と接触する施設へは行かないでください。で良かったわけです。
今回の事例を見ると、GOTOで飛行機にドンドン乗れ乗れという政策はかなりの悪手のように思いますが、GOTO大いに結構ですよ。自粛協力金のように補助金出したげます。その代わり、行動歴は全提供+利用交通機関や施設で同じタイミングで利用した感染者が出た場合は、14日間隔離義務付けとすりゃいい話なだけです。
クラスター感染が発生しても、病院や情報提供に積極的な企業くらいからしか、感染状況を教えてもらえない国ですから、クラスターがどう発生し、どう切り抜けて、どういう行動がリスクを高めるのかは、半年経っても未だによく分かりませんが、公表情報以上の状況を想定し、一人一人で気を付けるしか方法はなさそうですね。
■航空機内での感染が疑われた新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のクラスター事例(国立感染症研究所公式サイト)
https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ka/corona-virus/2019-ncov/2502-idsc/iasr-in/9930-488d01.html
■新型コロナウイルス感染症患者の発生について(第7報)(沖縄県公式サイト)
https://www.pref.okinawa.jp/site/hoken/chiikihoken/kekkaku/press/documents/pressrelease_20200326.pdf
■新型コロナウイルス感染症患者の発生について(第8報)(沖縄県公式サイト)
https://www.pref.okinawa.jp/site/hoken/chiikihoken/kekkaku/press/documents/okinawa-cov0328.pdf
■飛行機は最前部か最後尾の窓側を選ぶといい訳(東洋経済新報社公式サイト)
https://toyokeizai.net/articles/-/363043
■岡山県内における新型コロナウイルス感染症の患者発生状況(岡山県公式サイト)=5例目・7例目が機内感染(二次感染)、6例目が三次感染に該当
https://www.pref.okayama.jp/page/667843.html
■沖縄県職員、「機内で感染」の岡山親子から家族感染か 新型コロナウイルス(沖縄タイムス公式サイト)
https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/555968
2020年11月15日
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