2020年12月03日

検疫週間速報_原因は現地感染増?

■空港検疫(週間速報) 11月陽性者急増の原因は入国規制緩和ではなく現地感染増加か?

厚生労働省(厚労省)は2日、空港検疫での新型コロナウイルス感染症検査状況の11月三週目(11月15日〜11月21日)分の速報値を発表しました。
11月に陽性者が急増した一因が、現地での感染者増加による可能性が見えてきました。


厚労省の速報は、週間の検体数と陽性者数を、日本国籍者、外国籍者別に、滞在国ごとに出した非常に細かいデータです。11月11日以降毎週水曜日に過去4週間分が発表されています。2日の公表で、10月4日〜11月21日分が公表されたことになりました。
速報のため、日々の発表のデータとかなりのズレが生じていますが、分析に活用できます。

11月は罹患率が急増
11月は過去最多の陽性者数を記録してしまいましたので、速報が出た11月の三週分を少し細かく見てみます。

11月01日〜11月07日は、検体10,589・陽性84で罹患率は0.79%。
11月08日〜11月14日は、検体10,823・陽性89で罹患率は0.82%。
11月15日〜11月21日は、検体11,627・陽性79で罹患率は0.68%。
三週合計は、検体33,039・陽性252で罹患率は0.76%。130人に1人は感染者という超高感染状態でした。

月間の感染者数は11月分までが12月1日に公表されています。検査数も推定値にはなってしまいますが、毎日発表されていますので、月間の罹患率は以下であることが分かっています。
5月は検査数18,628(推定)・陽性者数45=罹患率は0.24%
6月は検査数30,250(推定)・陽性者数124=罹患率は0.41%
7月は検査数43,878(推定)・陽性者数277=罹患率は0.63%
8月は検査数47,982(推定)・陽性者数190=罹患率は0.40%
9月は検査数48,310(推定)・陽性者数162=罹患率は0.34%
10月は検査数66,494(推定)・陽性者数217=罹患率は0.33%
11月は検査数49,381(推定)・陽性者数353=罹患率は0.71%

こうして見ると、11月は特に前半が悪く、罹患率も10月までより急増していることが分かります。入国者が多かった低感染9か国からは11月から原則検査なしで入国できるようになっています。このため、検査数が減少し、罹患率が高めに出るようになっているとは言え、陽性確認数は多過ぎる印象です。


続いて国籍別の罹患率を見ると以下のようになります。
11月01日〜11月07日は、日本国籍者0.75%、外国籍者0.83%。
11月08日〜11月14日は、日本国籍者0.54%、外国籍者1.02%。
11月15日〜11月21日は、日本国籍者0.52%、外国籍者0.79%。
三週合計は、日本国籍者0.75%、外国籍者0.83%。
(10月04日〜10月31日は、日本国籍者0.34%、外国籍者0.35%)

10月の4週間は日本国籍者と外国籍者の罹患率に差はなく0.35%程度でした。11月に入ってからは、日本国籍者、外国籍者ともに急上昇しています。

欧米からは日本国籍者、アジアからは外国籍者の感染が多い
国別を細かく見ていくと、11月の3週間は以下のような印象を受けます。
・欧米は、入国者の日本国籍者比率が高く、日本人の罹患率も高め。
・アジアは、入国者の外国籍者比率が圧倒的に高く、罹患率も外国籍者の方が高い国が多い。

全体の感染者数は4月以降、外国籍者の方が多い状態がずっと続いてきました。そんな中で、10月に外国籍者の入国規制が緩和され、11月の陽性者急増が重なったため、「外人入れないよう入国緩和をやめろ!」という議論まで出てきてしまっています。
しかし、全体で見ると、7月頃までは明らかに外国籍者の罹患率が高かったですが、8月頃以降は、日本国籍者の感染が増え、その差は縮まってきています。このため、11月の急増が、規制緩和で増えた外人が主因とは言える状況にありません。
今回公表された国別・国籍別データを見ると、欧米露は両者仲良く増加〜日本国籍者がより増加気味で、南アジア・インドネシアからの入国は外国籍者ばかりが増えた印象です。
規制緩和要因と言えるのは、南アジアやインドネシア程度で、それ以外は規制緩和要因とははっきり言えない数値と言えます。

その中でも、11月の米国の増え方は特に異常でした。米国を例に見てみます。

米国からは日本人はずっと帰国が可能で条件は変わっておらず、規制緩和で日本人の入国者数が増えたわけではありません。にもかかわらず、日本国籍者の感染者も、外国籍者同様に増えています。

10月4日〜10月31日の四週間のデータを見ると、米国からの入国者の罹患率は、日本国籍者0.20%・外国籍者0.25%・全体0.21%です。
これが、11月1日〜11月21日では、日本国籍者0.84%・外国籍者0.95%・全体0.88%に増加しています。増え方(増加比)はわずかながら日本国籍者の方が大きい位です。

米国は累計感染者数から計算すると、25人に1人は感染体験者(4%)。10月以降現地感染者は爆増を続けていて、入国者の感染が多くなるのは当たり前といえば当たり前です。
つまり、11月に空港検疫で感染確認が急増している原因は、入国規制緩和したためというよりは、単純に現地で罹患してきた人が増えたためと言えそうです。
(11月の日本-米国間では、ホノルル線が本格再開する変化が起こっています。)

世界の感染が激増したのにつられて、入国者の感染者増加も起きているので、入国規制を緩和しなくても、空港検疫での陽性確認は増加してしまうとみられます。
対策するのなら、(日本人も含め)全面入国禁止としなければ意味がありませんが、国民保護の観点からいくと、日本人に対して、「帰ってくるな!滞在国で治療してもらえ!」とは言えないのでしょう。


もちろん、アジアなどでは、陽性者が外国籍者ばかりのところ、と言いますか、入国者が外国籍者ばかりの国もあります。しかし、厚生労働省の今回のデータを見る限りでは、陽性者が日本国籍者ばかりの国も結構見られます。
一見外国籍者の方が罹患しやすいと見えながら、日本国籍者と大きな差はないですから、外国人差別をしないように注意したいところですね。

入国禁止までは流石にやり過ぎ。でも、130人に1人は感染者なのですから、油断することなく、皆仲良く14日間の自主隔離を頑張ってもらえば、それで良い気がします。(それが実行出来ないとか、自主隔離を緩和するとかは、対策としては最悪手です)

※ちなみに、11月に行われた入国規制緩和(検査なし入国への変更)には、大きく2パターンあります。
ひとつは低感染9か国から入国の場合、もう一つは(感染蔓延国でも)条件付きで超短期滞在し日本に戻ってくる日本人の場合です。
いずれの場合も、症状が出ていない限り空港検疫では検査がないので、ウイルスを密輸していても、空港検疫で気付くことが出来ません。検査をしていないのだから、入国規制緩和の影響は、実は、空港検疫の数字では一切分かりません。
10月までなら空港検疫で陽性確認できていたはずのウイルス密輸者は、11月以降市中感染者の中に混じったことになります。入国規制緩和が原因だと言うためには、都道府県発表を一つ一つ丹念に調べ、外国渡航者が増えているのかどうかを見てていくしか方法がありません。しかし、都道府県発表では、その点に触れない発表も多いので、実態は把握できないというのが実状と言えそうです。


米国からの入国者の動向
10月04日〜10月10日:罹患率0.23%
日本国籍 検体1,674・陽性4=罹患率0.24%、外国籍 検体547・陽性1=罹患率0.18%
10月11日〜10月17日:罹患率0.54%
日本国籍 検体532・陽性4=罹患率0.75%、外国籍 検体215・陽性0=罹患率0.00%
10月18日〜10月24日:罹患率0.15%
日本国籍 検体823・陽性0=罹患率0.00%、外国籍 検体489・陽性2=罹患率0.41%
10月25日〜10月31日:罹患率0.13%
日本国籍 検体1,545・陽性1=罹患率0.06%、外国籍 検体783・陽性2=罹患率0.26%
11月01日〜11月07日:罹患率1.19%
日本国籍 検体1,832・陽性26=罹患率1.42%、外国籍866・陽性6=罹患率0.69%
11月08日〜11月14日:罹患率0.67%
日本国籍 検体1,829・陽性11=罹患率0.60%、外国籍851・陽性7=罹患率0.82%
11月15日〜11月21日:罹患率0.78%
日本国籍 検体2,043・陽性11=罹患率0.54%、外国籍1,017・陽性13=罹患率1.28%


週間速報内容
11/1-11/7
全検査
合計 検体10,589、陽性84、0.79%
日本 検体 4,938、陽性37、0.75%
外国 検体 5,651、陽性47、0.83%

検体数の多い国
米  国:合計 検体 2,698、陽性32、1.19%/日本 検体 1,832、陽性26、1.42%/外国 検体 866、陽性 6、0.69%
フィリピン:合計 検体 1,121、陽性 4、0.36%/日本 検体 144、陽性 0、0%/外国 検体 977、陽性 4、0.41%
インドネシア:合計 検体 755、陽性 4、0.53%/日本 検体 171、陽性 0、0%/外国 検体 584、陽性 4、0.68%
フランス:合計 検体 562、陽性 4、0.71%/日本 検体 382、陽性 3、0.79%/外国 検体 180、陽性 1、0.56%
英  国:合計 検体 557、陽性 0、0.36%/日本 検体 448、陽性 2、0.45%/外国 検体 109、陽性 0、0%

罹患率の高い国(検体数100以上)
バングラデシュ:合計 検体 150、陽性 5、3.33%/日本 検体 26、陽性 0、0%/外国 検体 124、陽性 5、4.03%
ネパール:合計 検体 283、陽性 7、2.47%/日本 検体 2、陽性 0、0%/外国 検体 281、陽性 7、2.49%
ロ シ ア:合計 検体 243、陽性 5、2.06%/日本 検体 22、陽性 1、4.55%/外国 検体 221、陽性 4、1.81%
米  国:合計 検体 2,698、陽性32、1.19%/日本 検体 1,832、陽性26、1.42%/外国 検体 866、陽性 6、0.69%
パキスタン:合計 検体 187、陽性 2、1.07%/日本 検体 17、陽性 0、0%/外国 検体 170、陽性 2、1.18%
※特記
ウガンダが検体1(外国籍)・陽性1の100%
二位はアフガニスタンで検体26・陽性2の7.69%(うち日本は検体2・陽性0)


11/8-11/14
全検査
合計 検体10,823、陽性89、0.82%
日本 検体 4,423、陽性24、0.54%
外国 検体 6,400、陽性65、1.02%


検体数の多い国
米  国:合計 検体 2,680、陽性18、0.67%/日本 検体 1,829、陽性11、0.60%/外国 検体 851、陽性 7、0.82%
フィリピン:合計 検体 1,491、陽性 5、0.34%/日本 検体 126、陽性 1、0.79%/外国 検体 1,365、陽性 4、0.29%
インドネシア:合計 検体 1,085、陽性25、2.30%/日本 検体 163、陽性 0、0%/外国 検体 922、陽性 25、2.71%
ネパール:合計 検体 460、陽性 9、1.96%/日本 検体 4、陽性 0、0%/外国 検体 456、陽性 9、1.97%
フランス:合計 検体 409、陽性 2、0.49%/日本 検体 289、陽性 2、0.69%/外国 検体 120、陽性 0、0%

罹患率の高い国(検体数100以上)
ト ル コ:合計 検体 100、陽性 3、3.00%/日本 検体 47、陽性 0、0%/外国 検体 53、陽性 3、5.66%
バングラデシュ:合計 検体 166、陽性 4、2.41%/日本 検体 19、陽性 0、0%/外国 検体 147、陽性 4、2.72%
インドネシア:合計 検体 1,085、陽性25、2.30%/日本 検体 163、陽性 0、0%/外国 検体 922、陽性 25、2.71%
ネパール:合計 検体 460、陽性 9、1.96%/日本 検体 4、陽性 0、0%/外国 検体 456、陽性 9、1.97%
ロ シ ア:合計 検体 179、陽性 3、1.68%/日本 検体 19、陽性 0、0%/外国 検体 160、陽性 3、1.88%
※特記
コソボが検体1(外国籍)・陽性1の100%、
モルドバが検体1(日本籍)・陽性1の100%、
原則検査対象外の台湾が検体26・陽性4の15.38%(うち日本は検体11・陽性4)


11/15-11/21
全検査
合計 検体11,627、陽性79、0.68%
日本 検体 4,816、陽性25、0.52%
外国 検体 6,811、陽性54、0.79%


検体数の多い国
米  国:合計 検体 3,060、陽性24、0.78%/日本 検体 2,043、陽性11、0.54%/外国 検体 1,017、陽性13、1.28%
フィリピン:合計 検体 1,731、陽性 6、0.35%/日本 検体 176、陽性 0、0%/外国 検体 1,555、陽性 6、0.39%
インドネシア:合計 検体 1,343、陽性10、0.74%/日本 検体 174、陽性 2、1.15%/外国 検体 1,169、陽性 8、0.68%
イ ン ド:合計 検体 568、陽性 6、1.06%/日本 検体 109、陽性 0、0%/外国 検体 459、陽性 6、1.31%
ネパール:合計 検体 391、陽性 4、1.02%/日本 検体 7、陽性 0、0%/外国 検体 384、陽性 4、1.04%

罹患率の高い国(検体数100以上)
バングラデシュ:合計 検体 126、陽性 3、2.38%/日本 検体 15、陽性 0、0%/外国 検体 111、陽性 3、2.70%
ロ シ ア:合計 検体 225、陽性 5、2.22%/日本 検体 43、陽性 1、2.33%/外国 検体 182、陽性 4、2.20%
パキスタン:合計 検体 197、陽性 3、1.52%/日本 検体 9、陽性 0、0%/外国 検体 188、陽性 3、1.60%
イ ン ド:合計 検体 568、陽性 6、1.06%/日本 検体 109、陽性 0、0%/外国 検体 459、陽性 6、1.31%
ネパール:合計 検体 391、陽性 4、1.02%/日本 検体 7、陽性 0、0%/外国 検体 384、陽性 4、1.04%
※特記
セルビアが検体8(外国籍3)・陽性1(外国籍)の12.5%が最悪
罹患率高いのはチェコ(4.00%)、ルーマニア(3.85%)、ブルガリア(3.45%)、ポーランド(2.44%)と東欧が続いています。四か国とも感染者は日本人。


水際対策(厚生労働省公式サイト)
https://www.mhlw.go.jp/stf/covid-19/kansenkakudaiboushi-iryouteikyou.html#h2_7
ラベル:検疫 感染症
posted by johokotu at 20:00| 東京 ☀| Comment(0) | ◇COVID-19関連 | 更新情報をチェックする
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