2021年01月04日

検疫分析行動歴_現地影響クッキリ

◇空港検疫結果分析(行動歴別) 現地感染や航空便再開の影響がクッキリ 東南アジアが最多3〜4割、米大陸は多発続く、欧州は年末急増

空港検疫の結果は毎日発表されています。2020年4月3日の全員検査開始以降、2020年のデータが出揃いましたので、非公表を除いた行動歴(出国元国)別の特徴を確認します。
現地感染や航空便再開の影響がクッキリ出ていることが発覚。東南アジアが全体の3〜4割を占め、米大陸は多発続き、欧州は年末急増していたことが分かりました。


※陽性者数が多いから罹患率が高いというわけではありません。例えば米国やフィリピンは入国者数が多いので陽性者数は多くなる、アフリカ各国は入国者数が少ないので陽性者数は少なくなるといった傾向にあります。ここでは陽性者数だけを見ています。
※グラフの割合は、陽性が確認された人のうち、行動歴非公表者を除いた人数の中でのその地域の人数の割合です。

東南アジアからの入国者
最も陽性確認数が多かったのは東南アジアからの入国者でした。全体の3割〜4割を占めていますが、夏以降は減少気味です。
フィリピン(赤)とインドネシア(青)がとにかく多いですが、その推移がはっきり特徴が出ています。
フィリピンはずっと少ないながらも陽性確認が続いていますが、7月、8月に異様な激増を見せています。ちょうど6月下旬から7月にかけて、フィリピン航空が相次いで日比路線を再開しており、その影響が出ていることが分かります。
一方、インドネシアは、11月以降急増しています。日尼路線は変化がほとんどありませんが、10月から外国籍者の入国が解禁、11月から短期出張ユースの行き来が解禁されており、その影響がモロに出た結果となっています。11月11日の異様な感染確認は技能実習生の集団感染であることが報道されています。
別の記事(月間の入国者数推移)でも取り上げていますが、両国の大きな違いは、フィリピンは日本在住者、インドネシアは外国籍者ビジネスユース(技能実習生等)が多いこと。12月下旬に減少していることも合わせて、感染確認の傾向と合致します。
ちなみに、現地の感染状況が、フィリピンは8月頃が感染ピーク、インドネシアは11月から第二波が急増を続けており、日本の空港検疫の感染確認グラフの推移とよく似ています。なんとも間の悪い入国緩和・航空便再開と言った印象です。
ベトナムは、後述の東アジアと似たような推移。12月にミャンマーがポツポツ確認されているのが気になります。
12月末時点で、11か国中フィリピン、ミャンマー、マレーシア、インドネシアのみが原則検査対象国です。低感染国と高感染国の差が激しい地域と言えそうです。それでこの割合ですから、高感染国(上記4か国)からの感染者はとにかく多いと推定されます。
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南アジアからの入国者
南アジアからの入国者の陽性確認は全体の2〜3割と言った状況です。
パキスタンが非常に特徴的で、6月と7月に激増しています。同国は5月末に出国の規制が解除されており、一気に日本へ雪崩れ込んだことが分かります。8月〜10月はほとんど確認はありませんでしたが、11月から再び陽性確認が出始めています。外国籍者の入国解禁が影響していると思われます。
インドは7月から、ネパールは10月から、バングラデシュは11月から感染確認が続いています。インドは直行便(臨時便)が夏からポツポツ再開したこと、ネパール、バングラデシュは明らかに外国籍の入国解禁が影響していると考えられます。
南アジアは、後述の欧米と異なり、直行便が一部曜日のみの運航であるため、数日空けての感染確認が続いているところが興味深い傾向です。
外国籍者のビジネスユースが主であるせいでしょうか、各国の感染傾向の境目がはっきり分かる地域です。
現地感染のピークは、ネパールは10月下旬、パキスタンは6月と12月でした。一方、インドが9月、バングラデシュが6月末が現地感染のピークでしたが、日本の空港検疫は全く逆の動きをしています。他の地域と異なり、現地感染状況と空港検疫の感染確認があまり連動していないのは不思議なところです。
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欧州からの入国者
欧州からの入国者の陽性確認は全体の1割強となっています。
アジアと異なり、初夏を境にジリジリ増加気味です。
ひとつ一つの国が小さいこともあり、様々な国からの入国者に感染確認が分散しています。グラフでは読み取りにくいですが、複数国滞在者が多いのも欧州の特徴の一つです(グラフ上は2か国滞在者は各国0.5人ずつ、3か国滞在者は各国1/3人ずつでグラフ化していますので、よ〜く見てみれば分かります)。
その中でも英国とフランスは、4月頃から確認が続いている国です。航空直行便も継続しています。
10月以降は東欧からの入国者の確認が増えている印象12月は2割程度まで感染確認が増えてきており、英国がグッと増えた印象です。
欧州からの入国者は日本人の方が多い国が多く、12月の増加は年末年始の一時帰国需要が影響していると推定されます。
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米大陸からの入国者
25%と4人に1人が米大陸からの入国者です。
初期の頃は半数が米大陸からの入国でしたが、10月まではジリジリ下がってきていました。11月から増加傾向に転じています。
ほとんどは米国からの入国者です。運航が続いている便数は米国がダントツですし、10月以降公表されている検査人数も米国がダントツの状態が続いています。8月上旬にクッと上がっているのと、11月以降増加傾向になっています。11月から、短期ビジネス客の行き来が解禁されているのと、ハワイ便が本格再開という変化がありました。米国は現地感染の推移によく似た推移になっています。
日系移民も多いブラジルが5月下旬に一旦ピークになった後、12月に再び増加しています。また、メキシコも12月に増加しています。
米国、メキシコ、ブラジルの入国者は、ともに日本人の方が多い国です。8月上旬や12月は日本人帰国需要が多いとを考えられ、陽性確認増加は日本人要因である可能性が高いと推定されます。
ちなみにグラフでは特徴が出てきませんが、8月上旬と12月は、米国からの入国者の10歳未満の感染確認が増加する傾向があった印象でした。
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東アジアからの入国者
国数が少ないですが、入国者数が多いのが東アジアからの入国者です。
陽性確認数は多くないのですが、非常に特徴的な確認推移となっているので、最後に取り上げておきます。
東アジア5か国・地域の感染確認は、検査方法が変更された7月29日から、すべての国が原則検査なしに変更された11月1日までの間に集中しています。
台湾は、日本の空港検疫で陽性が確認されると現地ですぐに情報が公開されていましたが、それによると「現地の濃厚接触者に陽性はいない」「日本でのその後のPCR検査で陰性だった」とする事例ばかりでした。入国者数が多いので、検査方法変更による偽陽性も多く出てしまったのかもしれません。
検査方法の変更が最も影響した地域と言えるかもしれません。
11月以降はすべての国が原則検査なしになりましたので、特徴は捉えられません。
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西アジア、中央アジア、アフリカ、オセアニア・太平洋それぞれからの入国者は陽性確認数があまり多くないので、取り上げません。
ただし、11月以降ロシアが増えているのと、年末にアラブ首長国連邦が増えた特徴がありました。

こうやって見ていくと、空港検疫での感染確認は、現地感染状況や航空便の再開状況(現地国の出入国制限)が大きく影響していることが分かります。
今後も急増する国が出た場合には、要注意ですね。
ラベル:検疫 感染症
posted by johokotu at 01:00| 東京 ☀| Comment(0) | ◇COVID-19関連 | 更新情報をチェックする
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