2021年01月13日

全員検査も14日隔離の方が大事

◇ついに全入国者検査開始も14日間隔離の方が大事

9日から全入国者に対する入国時検査が始まりました。緊急事態宣言発出期間中限定となりますが、ウイルス密輸への対抗策として一歩前進と言えます。
一方、変異株出現以降空港検疫を注目する人が増えたのか、12月後半頃からSNSは荒れ放題でした。
そこで、検疫の方法についておさらいしてみます。


■検疫は隔離と検査が大切
検疫(quarantine)という言葉は、元々「40日間」という言葉が語源です。14世紀のヴェネツィアで感染症(ペスト)が上陸するのを防ぐために、港で船を40日間隔離していたことに由来しています。14日間ではあったものの、ダイヤモンド・プリンセス号で行われたのがまさにそれに当たります。
検疫とは、検査することではなく「隔離」が元々の進め方です。

空港経由の入国者によるウイルス密輸を防ぐ検疫では、今回は、この隔離と検査が大切になります。
・潜伏期間は隔離すること
・検査して陰性であること

この二つを徹底すれば防げるとされています。
COVID-19の潜伏期間は2週間とされているため、隔離期間は14日間としている所が多いです。
日本の場合、基本的な入国の流れは、「入国時検査→14日間自主隔離」となっています。

しかし、この14日間隔離が、(諸外国では強制のところが多いのに)日本の場合は自主隔離なので、「守らない輩が出るザルだ!」という意見が出ています。
諸外国を見ると、欧米は隔離自体がないところが多く、アジア・オセアニア・島国は強制隔離が多い印象です。中途半端に全員に対して自主隔離にしてるところはあまり見られず、「空港で解放された=無罪放免自由に動いて良い」と勘違いしている入国者も一定数いる可能性があります。実際、11月1日に初めて11か国・地域が感染症危険度がレベル2に下がったことで入国時検査が原則なくなった際、14日隔離も同時になくなったと勘違いしていた人が多かったです。

検査は、偽陰性が出る可能性がありますし、入国時というある一時だけを見ているので、すり抜けは「絶対に」出ます。すり抜けが出ないことは100%あり得ません。このため、検疫上、検査することよりも、隔離の方が重要度が高いです。

今回、全入国者に対する入国時検査が義務付けになったことで結構安心している人が見られるのですが、これで安心するのは、圧倒的に間違いなわけです。

しかし、何故か日本では14日間隔離は軽視されています
国会議員ですら、隔離強化を主張する人はあまり目立たず、入国完全拒否の人達か、検査しろの人達の二極化している印象があります。
日本では、いきなり空港に迎えに行く人がいるくらい、隔離に対する意識が薄いです。14日間に家族と普通に接触して二次感染する事例も後を絶ちません。入国後そのまま公共交通に乗ってしまう人もいるようです。変異株で騒ぎになった英国からの入国者ですら大人数会食にすぐ参加してしまう位です。
日本では、14日間隔離の重要度があまり理解されていないのです。

最も安心できる入国規制は、「出発時陰性証明取得」→「出発時症状確認」→「入国時検査」→「14日間隔離(他人との接触禁止)」→「解放時検査」です
入国を全面禁止にするのは簡単ですが、流石に日本在住者に帰ってくるなとは言えないでしょう。海外との行き来を残すなら、上記の方法以外本来はあり得ないと思っています(隔離だって15日目に発症するかもだから100%ではないですが限りなく100%近くまで密輸リスクを下げられます)。


■隔離場所確保は簡単ではない
しかし、14日間隔離には大きな問題があります。入国者が多くなればなるほど、施設の確保が難しくなるのです。一日たった五千人入国する場合ですら、14日間で7万人分の施設が必要になります。
客が来ねーと嘆いているホテル業界+その周辺の宅配飲食店等を救うのにはピッタリだと思うのですが、羽田空港国際線の目の前にあるホテルですら受け入れ拒否してるみたいですから、ホテル確保はそう簡単ではありません。(補助金・GOTOないと雇用が死ぬとか叫んでる割に客を選り好みできるホテルが羨ましいです、、、。)
全国97空港あって40空港くらいは国際線対応しているのですから、成田や羽田に集中させるんじゃなくて、到着便を各地方に散らしてその負担を分散させることもできるはず。そうすればそれぞれの空港前ホテルの儲けも確保できますし、、、。成田や羽田への乗り入れを厳しく制限して枠がないからと断っていたくらいなのに、こういうときに羽田や成田に来るなと言えないのは何故なのか不思議です(中国は、乗り入れ制限をやってます)。

ニュージーランドやタイのように、頑なに入国拒否を貫けば、入国者数が著しく減るのでホテル確保も簡単で良いのでしょうけど、日本の場合は、経済回すという名目の元、入国を禁じていません。ホテルだけでは足りません。
となれば、隔離は、自宅で出来る人は自宅でお願い、仕事で来ている人は会社が用意する隔離施設でお願いとなるわけです。それが日本の状況です。

本来は自宅でも、完璧に隔離できればすべて解決です。
しかし、自宅だと監視がないから当然出歩く人が出てきてしまいます。さらに、家族に二次感染し、その人が歩き回ることで市中感染が拡がるというリスクは付きまといます。
ここが、問題点になってしまいます。

ホテル確保のことも考えれば、14日間は、「入国者は自宅隔離(当然外出禁止)」→「家族がいるなら家族がホテルや実家へ」が、ホテルも安心して客を受け入れられますけど、どうでしょうか。それこそ海外帰国者家族専用GOTOとかやれば良いのでは?こうすればホテルは消毒する必要もなくなります。
入国者が自宅隔離となると、14日間隔離後自宅を消毒しなきゃ問題が出てきますが、それは、こんな時期にわざわざ海外と行き来した人の責任ですから、自分で金出してやれとすれば良いわけです。ホテルが消毒となると完全にトバッチリですから消毒に補助金必要ですが、自宅なら自己都合なんだから補助金なんて不要です。消毒業者の雇用創出にも役立ちます。ビジネス目的(=個人事業主もね)なら、ホテル代も消毒代も会社持ちにすれば良いですし(飲食店が消毒液置く出費と同じです)。
いきなり空港に迎えに行く家族もいるくらいですから、自主隔離が不十分であることはよく分かりますが、これがちゃんと守られているという前提ならば、検疫は十分なはずなんです。

14日間隔離を完璧にすれば、正直入国時検査だって極論やらなくてもなんとかなるはずです


■入国資格の種類が問題なのではない
ビジネストラックが云々以前に、コロナは関係なく国籍別で入国資格による入国方法の違いがあります。まずはその分類を押さえておきます。
細かい分類はありますが、大雑把に言うと以下のようになります。
・日本国籍者→基本的に入国に制限はありません。
・外国籍者→新規入国の他に在日外国人向けの再入国など、入国資格にパターンがいくつかあります。

いま、特に問題視されているのが、外国籍者の新規入国です。
10月から解禁となりましたが、コロナが収まっていないのに、なんでOKになるんだと疑問視されています。
夏頃までは、日本は先進国の中でも結構厳しい規制を引いていたため、外国籍者の家族が新規入国出来ないせいで、日本に来られないと、少し問題になっていました。

しかし、よく考えてみると、新規入国を認めるか認めないかは、コロナの感染状態とは直接関係がありません
ファクターXの話があるので、人種による罹患しやすさの差が絶対的にないとは言い切れませんが、日本国籍だからコロナに罹っていない、新規入国だからコロナに罹っているというものではないからです。
例えば、5月末に自国からの出国が可能となったパキスタンからの入国者や、7月に自国航空会社が便数が増えたフィリピンからの入国者の感染確認が、その直後に激増しています。
この人たちは新規入国ではなく、再入国や永住者などでした。新規入国でなくても普通に罹患しているわけです。

つまり、入国資格の種類の違いで、入国時のコロナ検査方法に差を付けるのはおかしいです。

外国籍者の新規入国には、入国の許可理由が必要ですが、分類上、現在、旅行の人にはビザが下りません。でも、ビジネス等は許可していきましょう。となったのが、今の段階で、それ自体は疑問視すべきところではありません。
感情的には「まだ新しい人は入れて欲しくない」というのは理解できますが。

検疫上、本来問題なのは、感染可能性が高い国からの入国です。日本国籍だからOK・外国籍だからダメなのではなくて、現地の感染状況が悪ければ、日本国籍だって、外国籍だってダメでしょう
でも、流石にこの国だけは入国ダメ、とはできませんから、感染症危険度のレベル2以下とレベル3以上で、入国時の検査で差を付けるくらいしかできていません。それが、今の規制の方法です。
入国資格による部類が問題なのではないんです

※ちなみに、国際線の再開路線は、現地感染が酷いところばかりが多い印象ですので、人の行き来がなくなれば国際線路線が消滅に近くなってしまいます。(トップは米国。アジアだとフィリピンやインドネシア、中東だとカタール、欧州全体などがその代表例。)


■ビジネス例外は11か国ではない
そんな、入国資格による部類ではない、今の特殊な入国方法を見ていきます。

変異株が出たせいで、日本人の多くが、空港検疫の変なところに気が付き始めています。しかし、なぜか多くの人が主張しているのが「中韓をはじめとした11か国の外国人ビジネスザル新規入国を止めさせろ」という話になっています。
実はこれ、ウイルス密輸を防ぐという目的からすると、全くおかしな主張になっているんです。結論から言うと、11か国の外国人ビジネスザル新規入国とやらを止めたとしても、ウイルス密輸リスクは実は今とあまり変わりません

なぜなら、今の特殊な入国方法に関して、様々な例外が存在しており、それは11か国の外国人ビジネスザル新規入国だけではないからです。ウイルスは新規入国者だけにくっつくものではなく、日本国籍者だって再入国者だって密輸する可能性はあります。
まず、現在の例外状況を見てみます。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/ca/cp/page22_003380.html

外務省公式サイトに載っているものですが、基本的な入国の流れである「入国時検査→14日間自主隔離」となっていない入国方法が色々あります。(9日以降はこの全員が、陰性証明取得と入国時検査はするようになっています)

例外を大きく分けると以下の四つになります。(9日以降は全員が、陰性証明取得と入国時検査はするようになっています)
・感染症レベル2の国 陰性証明不要、入国時検査なし、14日間隔離あり
・レジデンストラック 陰性証明必要、入国時検査※、14日間隔離あり
・ビジネストラック 陰性証明必要、入国時検査※、14日間隔離なし(受け入れ会社の責任で滞在地-用務先間のみ移動可)
・日本居住ビジネスパーソンの短期出張 陰性証明必要、入国時検査※、14日間隔離なし(受け入れ会社の責任で滞在地-用務先間のみ移動可)

※は、感染症レベル2以下の場合検査なし、レベル3以上の場合検査あり。ビジネストラックは今のところ検査あり国は存在しない。

「感染症レベル2の国」は、日本よりも低感染国ばかりです。だいたい80か国位(世界の半分くらいは日本よりも優秀)あります。日本ですら優秀でロックダウンも全く不要と主張されています。そんな日本国内よりも安全な国から来る人々です。もっと危険な日本国内にいる人に全員検査をしていないのに、このような国から入国する人に検査しても、検査する費用と時間と土地が無駄と言えます。
そこまで楽観的に見なくても、そもそも14日間隔離はありますから、万万が一罹患していても市中拡大は防げる、という建て付けのルールになっています。
東京から岩手や鳥取に行くのには検査した方が良いかなと思うのに、岩手や鳥取の人が東京に行くときに検査しようと思わないのと一緒だと言えば分かりやすいでしょうか。

「レジデンストラック」も、同じ流れで、プラスして陰性証明が必要になるというものになります。これは、外国籍者のうち永住者などではなくビジネスなどで新規入国する際に使われるスキームです。これが11か国対象になっています。

以上の二つは、14日間隔離をきっちりしているという前提であれば、ウイルス密輸は限りなく100%近く防げるはずです。高感染国からの入国者や、検査もしないで外を出歩いている日本国内の人より、断然ウイルス媒介リスクは低いです。

ところが、ここに、14日間隔離を無くした二つの問題スキームが現れます
一つが「ビジネストラック」です。外国籍者のビジネス目的入国用で、レジデンストラックによく似ていますが、入国後14日以内でも、受け入れ会社の責任で滞在地-用務先間のみ移動可(=現地仕事が可)とするものです。移動は公共交通は禁止で用務先以外の場所には行けません。
だが、これで安全に仕事ができると考えるのがそもそもおかしいです。仕事するときに人と会わなきゃ市中感染が拡がりませんが、そもそも会わないならわざわざ入国する必要がありません。つまり、仕事で誰かと会うのはほぼ確実なわけで、当然そこで市中感染するリスクが出ます。
当然他人と接触するリスクが高い入国方法になるので、レジデンストラックはOKでも7か国は納得していないんでしょうね。4か国としか合意出来ていません
それでも、ビジネストラックは、相手国の感染状態を見ながら許可しているので、高感染国が入ってくる可能性は著しく低いです。しかも、今のところシンガポール、韓国、ベトナム、中国と、日本よりも低感染国(全てレベル2の国)との間としか許可されていないスキームなので、そもそもの持ち込みリスクは低いです。鳥取とか岩手から東京に来るみたいなものです。

しかし、もう一つの超短期出張は大問題の入国方法です。
「日本居住ビジネスパーソンの短期出張」がそれで、11月から開始され、12月28日から一時運用停止されています。これは7日間以内の出張なら、ビジネストラックと同じ扱いで入国後14日以内でも、受け入れ会社の責任で滞在地-用務先間のみ移動可(=現地仕事が可)とするものです(レベル3以上の国の場合は入国時検査は免除されませんし、移動は公共交通は禁止で用務先以外の場所には行けません)。外国籍者ではなく、日本国籍者と外国籍のうち日本永住者などが対象です。
ビジネストラックによく似ているように見えますが、このスキームの利用は、世界どの国でもOK、しかも現地での行動制限が一切ない(事前に行動計画は出します)というトンデモスキームになっています
このスキームを運用するために、相手国と基準を合わせる必要はなく、つまり、設定時に相手国の現地感染状態など完全に無視しています。
日本よりも感染状態がヤバい国で動き回っても、すぐに日本の中で活動出来てしまうのですら、驚きです。

後者2つのスキームは、14日間隔離を無くしている時点で、密輸リスクが高い検疫に変わってしまっています
それは、入国時に検査しようがしまいが変わりません。
検査よりも、隔離の方が大切なんです


先ほど「中韓をはじめとした11か国の外国人ビジネスザル新規入国を止めさせろ」という主張が多いことを書きました。
11か国ということは、これはレジデンストラックを指しているのだと思うのですが、レジデンストラックは(自主隔離のルールを守っているなら)限りなく100%近くウイルス密輸を防げますし、レベル2の国からの入国方法と変わりません。つまり、レジデンストラックがザルだというなら、レベル2の国からの日本人や永住者の入国もザルということになり、そうなると11か国かつ新規入国だけを禁じろとする主張はおかしくなります。レベル2の国は何十か国もありますし。
一方で、ビジネストラックのことを言っているなら、国数は4か国のみですから、11ではありません。
最も危険な日本居住ビジネスパーソンの短期出張のことを言っているなら、約200か国・地域となります。しかも、その人の出発国という見方をするのなら、日本1か国となります。

そう考えると、最も危険な短期出張を含めない「中韓をはじめとした11か国」とするのは相当おかしいです。それにここは日本です。切り分けるなら「日本をはじめとした12か国」など、日本を特別視すべきです。

なぜ11か国だけ、なぜ外国籍者だけ、なぜ新規入国だけにこだわるのか意味不明です。

つまり、主張するなら、
 ・「(4か国の)ビジネストラックと日本居住ビジネスパーソンの短期出張のザル入国止めさせろ」とか
 ・「レベル2の国からの入国も検査しろ」とか
 ・「14日間隔離を徹底させろ」とか
 ・一万歩譲って「日本をはじめとした12か国からのビジネスザル入国を止めさせろ」とか
が正しいはず
です。


正直、ビジネストラックや日本居住ビジネスパーソンの短期出張って設定してますが、その人だけが、入国後14日間に、絶対的に現場に行かなきゃ回らない仕事なんてあるんでしょうか。人間国宝みたいな唯一無二の存在の仕事を想定しているのもしれないですが、ウイルスは人を選びませんから、そういう人だけはコロナ対応を緩くする理由にはなりません。場末の飲食店ですら消毒液や仕切り板整備に金と時間と手間をかけています。14日間隔離して仕事できる仕事場を設ければ良いだけです。唯一無二の人はそういうことすらできないんでしょうか。
14日間隔離しろと言ってるだけで、隔離場所で仕事すんなとは言ってないですし。自宅からリモートで指示もできるし、そもそも会社の別の人がフォローしろよって話。海外に行くときに飛行機乗ってる間仕事できませんけど、それが14日間に延びるだけ。海外への移動中も現場仕事しているんでしょうか。リモートですよね?移動中にリモートできる仕事が、日本に帰ってきたらリモートできない理由が分かりません。さらに、交代要員なら、元々いる人を14日間延ばすだけやん、元々そういう予定立てろよ、バカな会社だな、と、どうしても思ってしまう自分がいます(汗)

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今回突然、全入国者に陰性証明提示と入国時検査が義務付けられました。
しかし、なぜかごく一部の地域に発出された緊急事態宣言を理由にしたもので、あくまで、宣言期間のみ限定となります。
今回の強化策が終わったときに、ビジネストラックと日本居住ビジネスパーソンの短期出張のスキームが復活しないことを願いたいものです。

そして、14日間の隔離について、もっと議論が活発になることを願っています。
ラベル:検疫 感染症
posted by johokotu at 01:00| 東京 ☀| Comment(0) | ◇COVID-19関連 | 更新情報をチェックする
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