◇空港検疫 変異株発表で隠匿されてきた色々なことが判明
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックに関して、感染力が高いとされている変異株への感染状況が、特別に公表されていることで、これまで隠匿されてきた様々なことが判明しています。
感染力が高いとされている変異株への感染者が、空港検疫を含めて100人を突破しています。
今回の変異株は、行政が焦って、少し情報を出し始めたのが、特徴のひとつです。このため、COVID-19確認から一年を経て、隠匿されてきたことが、やっと色々と判明しています。
空港検疫を巡っては、大きく五点が判明しています。
■やはり国際線利用は国内での生活時より危険、空港検疫の罹患率は0.22%
変異株が広まったことで「やはり国際線利用は国内での生活時より危険」ということが分かりました。
変異株で騒ぎになったため、1月9日から、緊急事態宣言発令中の特例措置として、全入国者への検査が始まりました。未だに乗員の検査はないようですが、全旅客入国者への検査が行われていることで、発生から一年経てやっと、ほぼ正確な罹患率が判明しました。これまでは、低感染国とされるレベル2の国々からの入国者の検査実績がなかったため、正確ではありませんでした。
低感染国の入国者が増えていることから、罹患率は12月までより低下しています。
それでも、1月9日〜2月8日までの1か月で、検体数71,352件、陽性者数159人の罹患率0.22%でした(有症状者は23人で、有症状率は14.46%と超高確率)。
国内の罹患率は、2月12日のデータで0.03%程度で、最悪だった1月初旬でもせいぜい0.06%です。低感染国からの入国者で薄まっているのに、空港検疫では何倍も危険であることがはっきりしました。国内では帰省自粛、GOTO自粛などが呼びかけられていましたが、それよりなにより海外との行き来の方が危険であることが明確になっています。
■やはり多い検疫すり抜けのウイルス密輸、15%超えも存在
判明した二つ目は、「やはり空港検疫でのすり抜けによるウイルス密輸が多い」ということです。
2月12日現在、入国者の変異株確認が51人、変異株疑い者が1人確認されていますが、このうち9人(1人は変異株疑い)は空港検疫では陰性などですり抜けていた事例です。たったこれだけの発表で17.3%もすり抜けがいることが分かりました。
昨年4月以降、空港検疫では2千人ほどの感染者が判明しているので、350人ほども偽陰性などですり抜けていたと推定されます。12月と1月は三日間の強制隔離後の検査で陽性になっている人もおり、通常検査だとすり抜けた人はさらに多かったと推定されます。
これまで、市中に入り込んでから陽性が判明した場合は、入国者としての統一の発表はありませんでした。例えば、千葉県のように海外渡航者と発表する県がある一方、東京都のように何も情報を出さない所もあります。このため、すり抜けて陽性になった人が何人いるのか、その実態はベールに包まれていました。国際線就航空港がある県の中で唯一情報が開示されている千葉県では、12月頃に月10人ほどのすり抜け事例が発覚していますが、そういった情報公開県の極々一部しか分かりませんでした。
それが、今回は変異株だというだけで、全国のすり抜けが明確化。割合がはっきりしています。
1%未満とかならまだしも、一割超えは流石に多すぎ。すり抜けは普通にあるものとして対応することが、きわめて重要であることが改めて判明しています。
■やはり14日隔離の甘さが感染拡大に繋がる、すり抜け二次感染続々判明
判明した三点目は、「やはり14日隔離の甘さが感染拡大に繋がる」ということです。
2月12日までに判明した、9人のウイルス密輸者のうち、少なくとも4人から、少なくとも国内の7人に二次感染させていることが判明しています。14日間で足りるのかどうかは分かりませんが、入国後14日以内に国内の人と接触してしまうトンデモない人が4割も存在していることが分かりました。
このうち唯一変異株疑いの1人は、14日隔離期間中に10人の会合(飲み会)に参加して2人に感染を拡大。アフリカの国(なぜか国名すら不明)から入国の1人は3人に濃厚接触してウイルスをうつしています(1人は同時入国者の可能性はゼロではありません)。
ちなみに、これらの入国者は、変異株でなければ、そもそも感染していたことが細かく公表されていませんでした。
つまり、国民はこれらの人がすり抜け発症していたことに気付くことすら出来ず、14日間隔離の重要性に気付けない所でした。
こんな自粛破り事例は、なかなか発表されないので、変異株以外にもゴマンとあるんでしょうが、なにせ発表されないので、国民は知ることが出来ません。
知らないから誰も指摘をしてこなかったわけですが、やはり14日隔離が甘いと、どうやっても国内感染拡大は防げないということがはっきりしました。
緊急事態宣言中の時限措置として、自主隔離を守らなかった場合の罰則について強調(実際に罰則適用されたことはないのでは?)しています。どうせ来月には、また規制が甘くなってしまうのでしょうが、なんとか継続して欲しいものです。
ちなみに、タイミング良く、10人の会合に参加して感染を拡大させた事例について、2月10日発売の週刊文春が報じています。
入国者は、ロイターの外国人記者で、変異株が騒ぎになっている12月になってから英国に数日間だけ一時帰国、日本入国時の検査は陰性だったことが報じられています。
この感染は、不要不急の行き来をしなければ防げたものです。この方が日本にいるのはビジネスのためですが、業務命令で渡航を命じたにもかかわらず、普段は他人のプライバシーを侵害してでも報じる会社が、感染者が出たお知らせすら出していません。
そして、これだけ会合すんなと言ってんのに、飲食店の中でも特に条件の悪いパブで、しかも条件の悪い大人数でのパーティーをしてしまう、これだけ帰省を止めようと言ってんのに、行き来する場所の中でも特に条件の悪い英国との間を行き来してしまう、これだけ英国で変異株が出ていると言ってんのに、入国直後に人と会うのだから、感染を抑えよう意識は一切ないということですね。
ウイルス密輸をされるときは、こんなもんなのでしょう。
※厚労省発表だと、国内の2人は入国者の濃厚接触者(=入国者1人→二次感染者2人)でしたが、週刊文春の記事だと、2人のうち1人は会合に参加しておらず、入国者1人→二次感染者1人→三次感染者1人だと報じています。
■やはりすり抜け入国者は追えない、市中感染原因入国者不明ばかり
四つ目は「やはりすり抜け入国者は追えない」ことが分かりました。
空港検疫ですり抜けても、市中の感染把握がしっかりしていれば、国内での感染拡大は最小限に抑えられます。ベトナムなどでは、感染者が出るとすぐに地域封鎖して検査しまくっています。
しかし、日本国内では、そんなことやろうともしません。
このため、市中で変異株が確認された64人のうち57人は原因となった入国者が不明という異常事態になっています。
厚生労働省は、変異株は市中に拡がってはいないと言っているようなのですが、そもそも大元のウイルス密輸者が特定されていない中で、ここまで断言できるのは不思議な話です。
大元のウイルス密輸者が無症状者の場合、見つかる可能性は著しく低いです。
それでも、入国者のデータ(居住地等)は取っているのだから、変異株の人が出た周辺にいる入国者を全員検査すると言うことだって出来るはず(静岡とか新潟のごく一部の地域なんて間近1か月で見たって入国者総数は数えるほどしかいないでしょ)。でも、そんなことすらしません。
57人のうちほとんどは、スクリーニングなどで、たまたま特別にゲノム解析して分かった人たちばかりです。
スクリーニングがなければそもそも気付けなかった事例である上、さらに、大元を追わないから、感染防止も出来ない。
結局、入国すり抜け者を全く追えていないことが露呈しています。
最初に原因不明となった静岡の女性2人は、首都圏の変異株疑い者の濃厚接触として特別に検査して変異株と判明しています。それなのに、この大元の変異株疑い者が入国者なのかどうかすら非公開です。(当時スクリーニングをしていたのは東京だけなので東京在住者と推定されています)
感染が拡大する中、静岡の人がなぜ首都圏の人と接触したのか、どうすれば防げたのか、全く分からないままです。
■やはりクラスターでも全く知らされない、街の中はクラスターだらけ
今回の変異株騒動で最も興味深いのは、クラスター対策がヘボだったことが判明したことでしょう。「やはりクラスターでも全く知らされない」んです。
変異株感染者のうち30人強は複数のクラスター感染なのですが、その全てについて、事前に、クラスターだったことが一切知らされていません。ゲノム解析には時間がかかるため、これらの人たちは半月程度前に起こったクラスターの人たちばかりです。
たまたま変異株と分かったから公開されてクラスターだったことが判明しただけ。
情報が出ていないから、万一これらの集団と接触していたとしても、地域の人は誰も気が付けないです。
そして、半月も経っているのに、クラスターの大元となった入国者が不明という事態になっています。そもそも、発症三日前には感染させるリスクが高いウイルスなんだから、上流を追わなきゃ意味がないのに、下流側では不特定多数との接触はない、で済まされています。
感染者から下流を探すのも大切ですが、今回の場合は、入国者起因であることは明らかなのだから、上流を抑えなければ意味がありません。
でも、上流側の公表は、濃厚接触で検査していた場合のみで、しかもその濃厚接触元の人だけ。濃厚接触元の人がどこでウイルスを貰ってきたのかすら一切公表されません。
結局、クラスターが起きていることを地域の人ですら気が付けない=対策を立てられないことが分かりました。
同じようなことは航空便でも起きています。昨年3月に神戸→那覇線で機内大規模クラスターが起こったことが分かっていますが、公表されたのは秋になってから。3日後には飛行機利用が分かっていたのに、公表しなかったせいで、4日後に飛行機を使った人からさらなる感染拡大が発生しています。
12月に東京都交通局で大江戸線運転士の集団感染が起き、原因が水道の蛇口と推定していましたが、対策はそうやって気が付いて、皆で進めていくものではないんでしょうか。
だいたい、何百キロも離れた七県にも渡る異常クラスターも起きていますが、何が原因で感染が拡がり、なぜ緊急事態宣言下で接触してしまい、なぜ不特定多数と接触せず(=公共交通を使わず)に移動できているのか(長距離ドライバーかなんかですか?)、で、どうすれば防げるのかなど、国民に役立つ情報は一切公開されていません。
具体的にクラスターが発生したことは知らせずに、夜の街が〜とか、マスク会食だ〜、ここが危ないあそこが危ないなどと言われても、実感は沸きません。こうなるとクラスター対策に協力する気もなくなります。
身近でクラスターが出ていても知らされていない。そんなトンデモない国であることが判明しました。
■変異株持ち込みは実は日本国籍の方が多い、何にも改善されずデジャブな動き
変異株が確認された入国者は、空港検疫では国籍も確認されています。
これによると、2月12日現在では、入国者51人の国籍は、日本国籍者25人、外国籍者12人、不明14人です。変異株確認では、なぜか外国籍者の入国を不安視する声がありますが、変異株の持ち込みは日本人原因の方が圧倒的に多いです。
これと似たようなことが一年前にも起きています。
昨年3月頃、パニクった在留邦人がバタバタと帰ってきて、国内感染拡大のエッセンスとなりました。
この時も、4月に入ってから入国規制が遅々と始まっています。そして、規制が始まると、空港検疫で陽性確認が一気に減るのも動きが同じです。
なんだか、昨年12月〜今年2月の動きは、デジャブのよう。用意する時間は半年以上あったのに、何も改善されていません。
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感染した人には非常に失礼な言い方になってしまいますが、まさに、変異株のおかげで、皆が少しは危機感を持ち始めてきたという印象です。そして、そのおかげで、これまで隠匿されてきた様々なことが判明しました。
そもそもは、変異株が出ようが出まいが、COVID-19への対応は変わらないはず。つまり、入国規制が強化された今の対応がベターな解決策であるはずです。緊急事態宣言が解除されても、罹患率の高すぎる空港検疫は引き続き強化を続けてもらいたいものです。
■“待機破り”でコロナ変異株が感染拡大 ロイター記者が退社していた(文藝春秋 文春オンライン公式サイト)
https://bunshun.jp/articles/-/43429
2021年02月13日
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