空港検疫の全員検査結果を確認しました。
今年1月9日〜5月1日の感染状況は、検体数219,367人・陽性者数721人で、罹患率は0.329%であることが判明。すり抜け分と思われる、強制隔離で変化した割合は甘く見積もっても0.035%(=約3千人に1人すり抜け)でした。
空港検疫では、日本への入国者全員を対象にした検査が今年1月9日から始まっています。
5月1日と2日に一度特集しましたが、その後4週間分5月1日までのデータが出ましたので、確認します。
■罹患率は4月以降急増
今年1月9日以降データですが、日本空港情報館ブログで取り上げているのは、毎日発表されているデータです。この他に、検体数と陽性者数は、国別に細かいデータが7日間ごとに出ています。今回分析では、後者の数値を使って、罹患率を推定します。
1月9日以降の週間集計は、1月10日〜1月16日を皮切りに4月25日〜5月1日までの16週分(112日分)のデータが出ています。
この数字は、入国日ではなく、検査日をベースにしたデータのようですので、若干のブレはあるものの、かなり正確な数字のはずです。
この数字を基にすると、
検体数219,367人・陽性者数721人=罹患率0.329%
でした。4月以降は罹患率が急増しており、4月25日の週は0.729%まで悪化しています。
■二回検査を考慮すると罹患率は上昇
12月下旬から、三日間強制隔離となる国が出てきました。12月26日の英国、南アフリカから開始され、5月15日までに32か国と2か国の5地域まで広がっています。
これらの国・地域からの入国の場合、入国時と三日後の二回検査が実施されます。
1人の人に2回検査が行われるので、実際の人数は検体数の半分以下になるはず。
それを考慮すると、1月9日〜5月1日の数は、
検体数219,367人・陽性者数721人=罹患率0.329%
▼
推定人数208,794人・陽性者数721人=罹患率は0.345%
と悪化します。▼
推定人数208,794人・陽性者数721人=罹患率は0.345%
陽性者数は変わらず検体数だけが減るので、罹患率は当然悪化してしまいます。
ただ、公表されているデータ(3月28日の週まで)で件数÷2で計算できる国数は、29か国にとどまり、その期間もあまり長くありません。
3日間強制隔離の対象となる国だけ見た場合、
検体数49,154人・陽性者数319人=罹患率0.649%
▼
推定人数38,580人・陽性者数319人=罹患率0.827%
となっています。▼
推定人数38,580人・陽性者数319人=罹患率0.827%
三日間強制隔離になる国だけあって、元々の罹患率も非常に高いですが、さらに率が跳ね上がっています。
実際の検査は、二回ではなく三回以上検査を受けている人もいますから、入国者数は検体数の半分以下になるはず。国際線到着空港が異常に危険であることが分かります。すべての国が三日間強制隔離になった場合に数字が跳ね上がるのではないかと疑われる数値になっています。
■三日間強制隔離がなかったら罹患率は0.02P低下していた?
三日間強制隔離の国が特に増えたのは3月になってからです。
三日後検査での陽性者は、それまでの隔離・検査方法のままだったら、入国時検査で陰性ならすり抜けていました。
仮に三日間強制隔離がなかった場合に、罹患率がどこまで下がるか見てみます。
三日後陽性となっている人は、データ集計方法が違うので数人前後する可能性はありますが、到着日別で個々の情報を見ると、1月9日〜5月1日に108人いたとみられます。
それをそのまま当てはめれば、罹患率は以下の(2)のようになります。
(1)検体数219,367人・陽性者数721人=罹患率0.329%
▼
(2)検体数219,367件・陽性者数613人=罹患率0.279%
▼
(2)検体数219,367件・陽性者数613人=罹患率0.279%
さらに、三日間強制隔離がないということは、三日後検査もないので、検体数が減少するので、以下の(3)のようになります。
(2)検体数219,367件・陽性者数613人=罹患率0.279%
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(3)推定人数208,794人・陽性者数613人=罹患率0.294%
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(3)推定人数208,794人・陽性者数613人=罹患率0.294%
母数が減るので、若干罹患率が上がることになります。
(1)が三日間強制隔離が考慮された実際の結果、(3)は三日間強制隔離がない場合です。
もしも三日間強制隔離が無かったら、実際の罹患率よりも0.035Pほど低い数値で推移していた可能性があったということを示しています。
よく考えてみると、ふつうは母数が減れば罹患率は上がるはずです。それが逆に下がっているということは、それだけ三日間強制隔離中の陽性者が多いということを示しています。
グラフは、週間ごとの推移を示したものです。分かりやすくするため、検査数は省略し、実際の陽性者数と罹患率の推移のみ示しています。
上のグラフは、実際のデータをグラフ化したものです。濃赤色が3日後陽性者の人数です。
下のグラフは、3日後陽性を無しとしてグラフ化したものです。罹患率は緑実線がそれにあたります。緑点線は比較用に上のグラフのものをそのまま描いています。
検査数の表示を省略しているので少しわかりづらいですが、1月24日の週、1月31日の週、2月7日の週、2月28日の週は、3日後陽性がなかった時の方が罹患率がわずかながら上がっています。
1月24日の週を例にとれば、実際には検体数10,077件・陽性26人=陽性率0.258%なのですが、英国と南アフリカはすでに3日間強制隔離が始まっていましたので、下のグラフは2国の検体数は半分になり、推定入国者数9,980人となります。一方で陽性者に3日後陽性者はいませんでしたから、26人のまま。従って、3日強制隔離がなかった場合は、推定入国者数9,980人・陽性26人=陽性率0.261%となっています。
3日強制隔離がなかった場合に、罹患率が上がっている週は、すべて、3日後陽性者が出なかった週です。
3日後陽性者が出ている他の週は、罹患率が下がっています。1月17日の週、2月14日の週、2月21日の週はすべて3日後陽性者が1人しか出ていないのですが、それでも罹患率は下がります。
それだけ、3日後陽性者が出る影響が強く出ることが分かります。母数が少ないので、陽性者が1人出ただけでもダメだという結果でした。
三日間強制隔離の対象国が増えた3月以降はこの傾向がかなり顕著に出ています。
3月29日の週に限って言えば、0.479%→0.376%と0.1P以上も減少しています。
この減ってしまう数値が、これまでの検査方法ではすり抜け/ウイルス密輸となっていた数字なわけですが、流石に0.1Pは多すぎます。
0.1Pとは、1000人に1人陽性者が変わるということです。今の1日の入国者は大体2千人ぐらいなので、1日2人はすり抜けを許しているとも言えるわけです。甘く見積もった全体平均では0.035Pの変化ですから、それでもすり抜けが3千人に1人はいるということになります。
緊急事態宣言の出ている東京ですら罹患率は0.060%ですから、この変化がいかに高い数値かが分かります。
英国と南アの2か国だけの時はほとんど目立たなかった変化も、29か国になっただけでこれほどまで変化します。この24か国には、最近陽性者が多いインドもネパールも、入国者数の多い米国も含まれていません。これらの国が入ったら、さらにこの差が顕著になると推定されます。
入国したごく珍しい数人がウイルスを運び、珍しく国内感染が拡大したのではありません。
明らかに非常に多くのすり抜け事例が発生し、国内に撒き散らしたということが分かるデータになっています。
改めて入国後14日間の自主隔離が非常に大事だということがよく分かりました。
STAY HOME NOW, FLY LATER