2021年05月17日

南亜から入国者の陽性動向

◇空港検疫 南アジアからの入国者の陽性確認動向

(5/17 22:00追記) 各国2つ目の表の棒グラフ(有症状者と無症状者が分かるグラフ)が間違っていましたので、修正しています。

南アジア3か国(ネパール、インド、パキスタン)からの入国者の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の検査陽性が急増しています。
3か国限定の水際対策が立て続けに行われていますので、最新の感染動向を確認してみました。


■南アジアからの入国者が陽性者の8割まで上昇
まずは、日本入国時の空港検疫での南アジア全体の陽性者確認状況です。

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グラフは、2020年4月3日以降の空港検疫での陽性者数をグラフ化したものです。
上のグラフは累積を表しており、灰色以外のカラーがついているのが南アジア各国からの入国者の陽性者数です。明らかに4月から急角度になっているのが分かります。
下のグラフは、毎日の新規陽性者数を見たグラフです。棒グラフが人数で、灰色以外のカラーがついているのが南アジア各国からの入国者の陽性者です。3月中旬以降は、ほとんど南アジアで占められています。折れ線が全体に占める南アジアからの入国者の割合を示していますが、7日平均では、8割迄達している状況でした。
異常な急増状況です。

一目見て分かりますが、3月〜4月中旬までは水色のパキスタン、4月から緑色のインドが目立ち始め、黄色のネパールは4月下旬に急増しています。

続いて、各国の状況を見ていきます。

■パキスタン 出発直前や機内感染が多い??
まずはパキスタンです。

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※陽性者数は、厚生労働省が出している毎日の発表を集計したものです。
※現地新規感染者数は日本船主協会の出しているデータを基にしました。(参照元 https://www.jsanet.or.jp/covid-19/index.html)同協会の数字が何を参考にしているのかは不明で、ジョンズ・ ホプキンス大学 新型コロナウイルス感染症のデータベース等の数字とは若干のずれはあるようですが、比較する際の参考としてみてください。


上のグラフは、陽性者を入国時検査と隔離中検査で分けて表示しています。
下のグラフは、陽性者を有症状者と無症状者に分けて表示。現地の感染者数推移(折れ線)と重ねて表示しています。

見て分かる通り、昨年5月27日の検査開始後に急激増加、3月20日の3日間隔離開始後に急激増加の大きく二回ピークがあります。なんとなく、日本側の水際対策(検査開始)等のせいで陽性者が出始めているように見えますが、それよりも現地の感染拡大と連動しているのが分かります(1月頃の現地第二波ごろも若干空港検疫での陽性者が増えています)。
4月中旬には落ち着いてきています。

今回は3月中旬から急増していますが、特徴は3日後陽性が多いことと有症状者が少ないことです。
昨年6月の第1ピーク時とそれほど1日当たりの陽性人数は変わりませんが、半数は3日後陽性です。
出発直前に罹患しているケースや機内感染ケースが多いとみられます。それだけ、すり抜けリスクが高いと言えそうです。


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※3つのグラフの検体数と陽性者数は、厚生労働省が毎週水曜日に開示している「検疫所における滞在国・地域別の検査検体数等について」のデータを基にしています。

この3つのグラフは、国ごとの検体数もある週間集計を基にしています。
4月中旬以降は、現地感染は収まっていませんが、陽性者数が減っています。これは、上のグラフを見ると分かりやすいですが、これは、入国者自体が減ったことに伴うものです。
パキスタンは、1月以降は入国者数は横ばい推移でしたが、4月中旬に一気に減少しました。なぜ入国が減ったのか理由が分かりませんが、外国籍者ばかりが減少しており、再入国者の緊急入国が終わったと見るのが適切なような気がします。

罹患率は3月28日の週をピークに減少傾向ですが、7〜8%程度はあり、3か国の中では罹患率が最も高い国になっています。
一番下のグラフは、強制隔離の影響を除いたグラフになりますが、実際の数値とかなりずれてくることが分かります。強制隔離は絶対に必要であることが分かります。入国者が少ないのに陽性者数が多いせいか、強制隔離の影響を取り除くと、珍しく罹患率が上がりますね。

■インド 出発数日前罹患のケースと機内感染ケース??
続いて、騒ぎが最も大きいインドです。

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※陽性者数は、厚生労働省が出している毎日の発表を集計したものです。
※現地新規感染者数は日本船主協会の出しているデータを基にしました。(参照元 https://www.jsanet.or.jp/covid-19/index.html)同協会の数字が何を参考にしているのかは不明で、ジョンズ・ ホプキンス大学 新型コロナウイルス感染症のデータベース等の数字とは若干のずれはあるようですが、比較する際の参考としてみてください。


グラフの内容はパキスタンと同じです。

インドは、昨年5月27日の検査対象となって以降ダラダラと陽性確認が続いていました。4月上旬から一気にピークに達しています。
今回の空港検疫での陽性者急増に関しては、現地の感染拡大と連動しているのがよく分かります。
パキスタンと違って、9月頃の現地第一波の影響はあまり見られませんので、インドからの入国者の増減は、感染状況以外の要因の方が影響しやすいと考えられます。それでも今回は、現地の感染悪化に連動しており、その感染拡大の特殊さが良く分かる事例になっています。
まだ全然落ち着いてきておらず、空港検疫での陽性確認が続いています。

特徴としては、こちらは有症状者が比較的多く、5月1日の3日間強制隔離が始まったその日から隔離中陽性も急増しています。
パキスタンと違って、入国時検査で引っかかる人も多いので、現地週発数日前に罹患したケースと、機内感染ケースに二分されているものと推定されます。
仮に機内感染ケースが多いのだとすると、3日間強制隔離程度ではすり抜けられる可能性が高く危険です。
また、有症状者が多いということは、現地の陰性証明が怪しい可能性や現地出発時の症状チェックが甘い可能性があるほか、罹っている株が重症化しやすいということなのかもしれません。

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※3つのグラフの検体数と陽性者数は、厚生労働省が毎週水曜日に開示している「検疫所における滞在国・地域別の検査検体数等について」のデータを基にしています。

インドは入国者数が3か国の中では最も多く、日本国籍者も結構いるのが特徴です。4月以降、日本国籍者の増加が目立ち、4月25日の週はぐっと入国者が増えています。日本国籍者の緊急帰国が続いているものと思われます

単純に陽性者数が増えていますので、4月以降、右肩上がりで罹患率は悪化。6%程度まで上昇しています。
一番下のグラフは、強制隔離の影響を除いたグラフになりますが、3日間強制隔離になったのは5月1日以降なので、まだそれほどの差は認められません。

■ネパール 7日を境に陽性者消滅、航空便運航停止のせい?
最後はネパールです。

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※陽性者数は、厚生労働省が出している毎日の発表を集計したものです。
※現地新規感染者数は日本船主協会の出しているデータを基にしました。(参照元 https://www.jsanet.or.jp/covid-19/index.html)同協会の数字が何を参考にしているのかは不明で、ジョンズ・ ホプキンス大学 新型コロナウイルス感染症のデータベース等の数字とは若干のずれはあるようですが、比較する際の参考としてみてください。


ネパールは昨年10月にも一度ピークがあります。今回のピークは4月下旬から一気に爆増しています。1日20人が陽性となった日もあり、とにかく異常な爆増です。
グラフを見て一目でわかる通り、現地の感染状況に完全連動していますね。

まだ日付が経過しておらず、多少変わってくるかもしれませんが、これだけ爆増したにもかかわらず、5月7日着を最後に陽性者が出ていません。7日着を最後に日本への直行便をはじめ、現地発着の国際線の運航が停止(ニューデリー便は週2往復している模様)されており、そもそも日本へ渡航できなくなって、陽性者が消滅したと推定されます。

ネパールは5月10日までは3日間強制隔離にはなっていないので、隔離中陽性者はほぼいません。
また、ほぼ全員が無症状者なのが大きな特徴です。
隔離したあとも陽性が出やすいのかがデータがまだないので不明ですが、出発より前に罹患している可能性が高いです。ネパールの現地感染悪化はインドの影響と言われています。しかし、空港検疫の結果からすると、インドとは全く逆で、重症化しやすいわけでもないと考えられる結果です。となると、現地の陰性証明が怪しい可能性もあります。次週のデータが待たれるところです。

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※3つのグラフの検体数と陽性者数は、厚生労働省が毎週水曜日に開示している「検疫所における滞在国・地域別の検査検体数等について」のデータを基にしています。

1月以降、ネパールからの入国者は、ほとんどが外国籍者の再入国です。日本への入国者数は、2月頃から、ジリジリ増加していますが、横ばい推移に近いです。多くの人が緊急入国した印象が強いですが、若干増加は見られるものの、そこまで誰もかれもが逃げ出す、と言った感じではなさそうです。
となると、4月末の陽性者の爆増は異常な状況で、航空利用者のリスクがぐっと上がっているということが分かります。

ネパールの場合、インドと違って直行便は週2往復の運航ですが、運航日以外の陽性確認も目立っており、経由便でも到着する利用者が多かったのは意外でした。

パキスタン→インド→ネパールとピークが遅れてやってきており、まだ特徴がつかみきれないといった印象です。
5月2日〜5月8日分のデータが出れば、少し違った傾向も見えてくるかもしれません。

■共通事項:10歳未満の陽性状況
10歳未満の陽性が少し増えたような気がしましたので、確認しました。
10歳未満は、親などの同行者がいるはずですので、団体移動確定となります。その割合が増えていると、家族ぐるみで移動していることが分かるためです。

4月1日〜5月15日の確認状況は以下の通りです。
4月8日 2482 成田 10歳未満 男性 新潟県 パキスタン 無症状
4月13日 2516 関空 10歳未満 女性 兵庫県 パキスタン 無症状
4月16日 2533 羽田 10歳未満 女性 東京都 インド 無症状
4月18日 2557 成田 10歳未満 男性 東京都 インド 無症状
4月15日 2561 成田 10歳未満 女性 茨城県 パキスタン 無症状
4月20日 2591 成田 10歳未満 男性 東京都 インド 無症状
4月25日 2619 成田 10歳未満 男性 東京都 インド 無症状
4月26日 2633 羽田 10歳未満 男性 非公表 インド 無症状
5月1日 2692 羽田 10歳未満 男性 東京都 インド 無症状
5月1日 2699 中部 10歳未満 男性 愛知県 ネパール 無症状
5月5日 2752 成田 10歳未満 女性 福岡県 ネパール 無症状
5月1日 2813 中部 10歳未満 男性 愛知県 ネパール 発熱
5月12日 2834 成田 10歳未満 男性 東京都 インド 無症状

4月1日〜5月15日の状況は以下のようでした。
パキスタン 10歳未満3人/陽性者70人=4.29%
イ ン ド 10歳未満7人/陽性者142人=4.92%
ネパール  10歳未満3人/陽性者80人=3.75%

10歳未満の割合は、全世界からの入国者の陽性者状況を見ると、だいたい5%前後で推移していますので、どちらかと言うと数が少ない状況でした。


南アジア3か国は、それぞれ、陽性者増加の傾向が異なっていることが分かりました。
増加の傾向を見ていると、日本側の水際対策はどうでもよく、現地の感染状況と航空便の運航状況に強く左右される印象でした。
暫くは急増が続くと思われますので、引き続き、注視していきたいと思います。


STAY HOME NOW, FLY LATER

posted by johokotu at 01:00| 東京 ☁| Comment(0) | ◇COVID-19関連 | 更新情報をチェックする
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