インドネシアからの入国者の空港検疫での陽性事例が止まりません。6月に入って目に見えて増えており、7月2日〜7月8日の7日間では空港検疫での陽性者が31人も確認されています。
インドネシアからの入国者の空港検疫での陽性は、間近の7月2日〜7月8日の7日間で31人でした。データが出ている6月20日〜6月26日には、検体数に占める陽性者の割合は1.26%(検体555件中7人陽性)まで悪化しています。6月下旬で既に80人に1人は陽性者ということになります。単純に7月に入ってから陽性者数が3、4倍になっているのであれば、罹患率が5%前後とみられ、そうなると20人に1人が陽性者となります。
20人に1人は、席は満席だが立っている人がいない電車一両の中に3人は陽性者がいるイメージです。
非常に危険な状態です。
他にも急激悪化している国はたくさんありますが、在留邦人や行き来している人の多さから、とにかくインドネシアからの入国者の陽性が目立つ事態になっています。
そんななかで14日、ジャカルタから成田国際に、チャーター便(特別便)が運航され話題となりました。
14日に運航された便は、民間企業の清水建設が手配したチャーター便であることが報道されています。
246席あるB787-9型機に52人しか乗っていなかったことから、「他の在留邦人も乗せればよいのに」といった声もあるようです。しかし、民間企業が手配したチャーター便に過ぎないのですから、これは当たり前と言えば当たり前。ジャカルタまでは6000キロ弱ありますから、もっと小さな機材での運航は航続距離の関係から難しいのかもしれません。
一部報道によれば、「日本大使館には「どうすれば乗れるのか」などの問い合わせが数十件あった」(朝日新聞)と報じられており、特別便運用を要請する在留邦人もいる模様。少しパニック気味になっているようです。
しかし、この要請、よくよく考えてみると、いまさら感満載のおかしな要請です。
■インドネシアからはいつでも帰国できた
そもそも新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックは、昨年3月11日には宣言されています。
現地国内移動の制限があったとか、国際線運航が停止していたとかならいざ知らず、インドネシアはそんなことはなく、一年以上もの間、日本へ帰国するチャンスはいくらでもありました。特にインドネシアからの日本への入国は、昨年11月に外国籍者の新規入国もOKになり、空港検疫での陽性が馬鹿みたいに増えた原因にもなるほど、日本への渡航が非常に容易だった時期もありました。
そして、インドネシアからの旅客直行便は成田、羽田、関空へ毎日運航が続いています。昨年5月頃の欠航だらけの時期を除けば、いつでも帰国可能です。
感染状況がたまたま急激悪化しているとはいえ、いきなり起こるクーデターや戦争等のように余裕がなかったわけでないのだから、なぜ今になって急に帰りたい→特別便運航しろ!と言う話になるのかが謎です。
なにより、インドネシアに対する感染症危険情報は、昨年3月31日以降、レベル3(渡航は止めてください。(渡航中止勧告))が継続しています。
日本国内ですら、STAY HOME、帰省や出勤も含めた移動の自粛が呼びかけられています。状況がヤバくなればそれだけ移動が困難になることも容易に想像がつきます。
パンデミックであることは一年以上も前に把握している話で、それを承知でいつまでも海外渡航している以上、渡航先で頑張りましょうよ、と感じてしまうのが、国内にいる人間の正直な印象です。
国が渡航すんなと言っているのに、一年以上も、自分の意思で渡航を続けているのは在留邦人の方です。朝日新聞の記事では、「30代の駐在員の男性は「一般の人も利用できる特別便も運航してほしい。これでは特定邦人保護だ」と憤る。」という、本当にこんな人いるのかいなと疑いたくなるような酷く常識外れの輩もいるようで、なんとも悲しいことです。
渡航が会社命令なら、清水建設のようにリスク管理の一環として会社がチャーター便を用意すればよいだけです。このチャーター便は、条件として、会社が隔離施設を用意して厚生労働省が許可、検査も自社で用意する方法をとっているようです。国の隔離施設に不平不満がある人もいるようですから、そういった方(渡航目的である業務の管理者)が自分で手配する良いモデルケースになったと言えるかもしれません。
海外赴任には、様々なリスクが潜んでいます。今回の事例で、海外の事情にアンテナ高くできてるかどうか、いざという時に海外赴任する社員を守る会社かどうか等が分かったのではないでしょうか。
■海外ではまず航空便を閉じる
海外では、ウイルス密輸を防ぐため、まず航空便を閉じるという措置をとることが多いです。だからこそ、空港に帰国者が殺到します。今回のケースが昨年3月下旬に起こっていたのならまだ分かりますが、一年以上も経てから起こるのは非常に謎です。
例えば、4月〜5月にインドからの流入でデルタ株等が猛威を振るったネパールでは、5月7日に国際線運航を遮断。強制的に人の行き来を止めています。
実は、この航空便停止の効果は、ネパールだけでなく、日本にも及んでいます。
航空便が止まる5月7日迄は、空港検疫でのネパールからの入国者の陽性事例が爆増していたのに、5月7日以降、ピタリと陽性発覚が止みました。そもそもの入国者数がゼロ近くなったためです。(その後、日本への直行便が再開された途端、また陽性確認始まっています。)
しかし、インドネシアから日本への航空便は、ガルーダ・インドネシア航空が自主的に減便しただけで、これだけ感染が爆発していても、止まっていません。日本航空(JAL)、ANAともに1日1往復を維持しています。
ウイルス密輸が急増しても国から航空便を停止するような話は一切出てこず、海外だったら突然起こる大動脈の停止は日本では全然起こりません。(ANAやJALが、利用者が少なくて収支的にもう運航できないとなるまでは運航が続いています。)
つまり、日本に帰国できない危機的状況ではなく、今更ジタバタしてパニックになるのが不思議です。
■外国籍者の再入国禁止も行われず、国差別続く
そして、デルタ株等が主流ではなかったパキスタンや、スリランカ、バングラデシュなどが外国籍者の再入国を規制している一方で、国が特別便運航に言及するほど危険な状況なのに、インドネシアからは、外国籍者の再入国は未だに規制されていません。
再入国規制は南アジアばかり。南アジアの外国人をバイキン扱いしている差別的対応とも言えてしまいます。
こんな状況なので、インドネシアからの空港検疫での陽性事例が減るはずがありません。
インドネシアからの入国者は7月9日から強制隔離期間が6日間から10日間に拡大しましたが、何の効果もなく、当然のように陽性者は減っていない状況です。
インドネシアは、入国者の大部分が外国籍者のネパールやパキスタン、外国籍者が多めのインドなどと異なり、入国者は外国籍者と日本国籍者が半々です。そして、外国籍者は技能実習生なども多いのが特徴です。
このため、強硬手段的に入国規制を強くできない事情があるようです。
このような状況を目の当たりにすると、日本国内居住者の中には、「これまでいつでも帰ってこられたのに帰国しようとしなかった在外邦人を急に帰らせる必要などなく、ウイルス密輸防止のためにさっさと航空便止めろ」と思っている人も多いのではないでしょうか。
現地にいれば、非常に危機的状況でパニックになってしまう状況とは思いますが、、、。
残念ながら、今回は、冷めた目で見られている可能性が高いです。
中国、台湾、ニュージーランドのように徹底的に抑え込んで内需拡大で経済を維持するのか、欧米のようにコロナと共存して経済維持を目指すのか、共存に失敗してインドやインドネシアのように経済どころではない状態になるのか、日本はいずれにも当たっていないので、かじ取りや人々の心構えも難しい印象です。
海外との行き来の仕方ですら、不平不満のきっかけになる。
ワクチンを打とうが、下火になるまでは、油断することなく対策を進め、パンデミックが早く収まってほしいものです。
■邦人に期待と落胆 インドネシア特別便に問い合わせ多数(朝日新聞公式サイト)
https://www.asahi.com/articles/ASP7G7WGNP7GUHBI01D.html
■突然の特別便「情報きてない」 インドネシアの邦人困惑(朝日新聞公式サイト)
https://www.asahi.com/articles/ASP7G5TC2P7GUHBI02C.html
■ジャカルタ発成田行きの特別便の運航について(在インドネシア日本国大使館公式サイト)
https://www.id.emb-japan.go.jp/oshirase21_122.html
STAY HOME NOW, FLY LATER