9月20日午前0時より、32か国からの入国者の強制隔離期間が短縮されました。強制隔離を止めるとどうなるか、これまで出たデータから探りました。
今回は、空港検疫の陽性者に占める強制隔離の割合の変化を見てみました。明らかに強制隔離の国が増えると陽性者が増えることが分かり、再びすり抜け危機が生じていると推定される結果になりました。
まずはグラフから見てみましょう。すべて空港検疫のデータで、特定国の全員が始まった2020年4月3日から強制隔離が大幅緩和された前日の2021年9月19日までの数値です。
赤い積上棒は、陽性者数。濃い部分が強制隔離中に陽性と発覚したと推定される陽性者(強制隔離中陽性者)数です。
青い折れ線は、直前7日間のデータから算出した陽性者に占める強制隔離中陽性者の割合です。
下の段は、強制隔離の指定状況を示しており、青枠が3日間、緑枠が6日間、赤枠が10日間、紫枠が解除となった国を3レターでそれぞれ示しています。
下のグラフは、強制隔離中陽性を除いた陽性者数と直前7日間の罹患率を示したものになります。
緑の実線が強制隔離中陽性を除いた陽性者数から算出した率、薄緑破線が強制隔離中陽性も含めた陽性者数から算出した率です。
緑の実線は、もしも強制隔離(中の検査)がなかったら、実際に我々が目にしたであろうグラフになります。
■全体では3〜4割ほどが強制隔離中の陽性
まず、上のグラフを見て明らかなのは、一貫して、全体では3〜4割ほどが強制隔離中の陽性であること。誰がどう見ても一目でわかると思います。
そして、下のグラフを見ると、もしも強制隔離がなかったら、今年1月以降に陽性者がゼロ人だった日も出ており、罹患率も検出できた数値よりかなり低かったことが分かります。誰がどう見ても一目でわかると思います。
強制隔離がなかったら、6月以降は、0.2%前後で推移しており、去年4月頃とあまり変わらないので、空港検疫が危機的状況にあると認識できなかったかもしれません。昨年は、全員検査ではなく、かつ強制隔離ではありませんでした。強制隔離で3割〜4割増しとなり、検査対象を全員加えると、もしかすると、見えている線より1.5倍くらいの数値だったのに、気が付いていないだけなのかもしれません。
「強制隔離止ですり抜け明らか1」でも示しましたが、国立感染症研究所が、入国後の空港検疫検査がない代わりに毎日検査が義務付けられていたオリンピック入国者を分析した結果で、陽性になるピークは、入国後3〜5日後と分析されています。全く分析していないデータなのに、見事に合致した数字が出てきました。
強制隔離期間が明確なのと、2021年1月9日以降は入国者全員に対して検査が行われ、例外がないため、今回の分析は非常にしやすいですね。
■強制隔離の指定と強制隔離中の陽性割合が連動
正式な統計学の知識がなく、正確な入国者数が不明、検体数での推定もしていないため、きちんとした分析ができません。しかし、グラフを見る限りでは、強制隔離の指定と強制隔離中の陽性割合が連動しているように見えます。
細かく見てみると、
・2021年3月5日頃まではせいぜい10%前後
・2021年3月5日頃〜5月10日頃は20%前後
・2021年5月10日頃以降は30〜40%前後
といった印象です。
強制隔離の対象国が増えるとともに強制隔離中陽性の割合が上がっています。
3月5日には欧州を中心とした13か国が3日間の強制隔離に指定されており、5月10日には初めてネパール、インド、パキスタンが6日間強制隔離に指定されています。
さらに細かいグラフの変化を追っていくと、率が極大になっている日は、ほぼ強制隔離が追加されている日です。
明確に分かるのは、3月20日(パキスタンや東欧等7か国3日間指定)、6月4日(アフガニスタン10日間など4か国指定・2か国解除)・6月7日(英国6日間指定)などです。
一方で、6月以降は、30〜40%に安定しています。
この期間は、入国後検査が免除されているオリンピック・パラリンピックの影響があったほか、それまで指定ばかりだったのに対して、指定と解除が数多く行われているのが影響しているとみられます。
7月9日などは、南米を中心に数多くの国が指定となりましたが、数字上は大きな変化はありませんでした。同時期に入国者が比較的多かったフランスなどが解除になっているのも影響したとみられますが、少し細かい分析が必要になりそうです。
■強制隔離は10日間までは必要なし?
強制隔離の期間を推定するデータも出てきました。
10日間強制隔離(赤枠)が始まったのは5月28日、6月4日、7月9日、(緩和)8月14日等です。
5月28日と6月4日は、降下していた割合が、その日を境に上昇に転じていますが、全体の陽性者数が少なくなったことの影響が強く出たためとみられます。
7月9日は、割合にほとんど変化がないことが分かります。
7月9日は、3日間指定、6日間指定、指定解除の国が多数出ており、10日間強制隔離の影響だけを見るのは難しいですが、、、。
一方で、6日間指定(緑枠)では、5月10日、5月21日、6月4日、6月7日、7月1日、7月9日、7月18日、8月5日、8月14日です。
このうち、5月10日と6月4日の変化は著しい状況ですが、それ以外では大きな変化はありません。
以上から考えると、指定国の中身によって大きく変化すると推定される結果になっています。
強制隔離指定は、10日間までは必要ないけれども、6日間は国によっては結構影響が出るように見えます。
この結果も、陽性になるピークは入国後3〜5日後という分析と合致している内容と言えそうです。
今後1か月ぐらいで、これらの数値がどう変わるかは見ものです。
■強制隔離は絶対的に必要
全体を通してはっきり分かるのは、強制隔離によって、すり抜け直前のウイルス密輸をだいぶ防げているということ。
しかも、今回分析した空港検疫は、全ての国が14日間強制隔離ではなく、11日目以降に検査をしている人はほぼゼロ人。強制隔離期間はバラバラで、4日以降検査がない国もあれば、10日後に検査する国もあります。このため、出てくる数字よりも強制隔離中陽性者は多くいるはずです。
強制隔離を緩和するなど悪手中の悪手であることが分かります。
よく、「日本はウィズコロナだから規制は必要ない」と言う人がいますが、陸続きの国と異なり、島国ですから、台湾やニュージーランドのように、水際をきちんとすれば、新たな流入は防げます。
そもそも諸外国とは、感染対策や国民の衛生観念は全く異なります。国内はウィズコロナで良くても、水際はゼロコロナを目指すべきで、出てきた数値を見ても、強制隔離を最低3日間、できれば6日間は実施してもらいたい結果となっています。
14日間の自主隔離をきちんと行っていれば問題ないですが、自主隔離をさぼって、ちょっと買い物、ちょっと散歩、ちょっとごみ捨て、ちょっと蛍族などしてしまうと、ウイルスを日本国内へ密輸拡散してしまうことになります。
政策として強制隔離はしないのであれば、自主隔離は絶対に全入国者に確実に実施してほしいですね。
ちなみに母集団の全員を対象に検査をしているのは、日本国内では空港検疫だけです。日本の水際対策について、所詮イエローモンキーどもの考えた浅はかなザルだと馬鹿にする声は多いですが、こんなに素晴らしいデータは、国内ではほかにありません。データをきちんと分析すれば、様々な対策に役立てることが出来ます。
例えば、人種、年齢、性別、居住地により差が出るのか、国によりどのくらい差が出ているのか、その国での対策との感染状況の関係は?、機内クラスター(=つまり電車にも応用可能)は起きるのか、すり抜け率、陽性になる日数、ここから推定される国内の本当の陽性率 etc.。ぜひもっと細かい数値の開示を求めたいのと、マスコミや専門家の皆さんには、空港検疫のデータを使って様々な分析をしてほしい所ですね(国立感染症研究所以外分析しているのを見たことがありません)。
だって、統計素人が数値を並べただけでも、ここまで推定できるんですもん、、、。
結果を見れば一目瞭然。隔離しないとダメなんです。
データはうそをつきません。
データはうそをつきません。
さて、9月20日午前0時から強制隔離となる国が一気に減りました。
データから見る限りでは、絶対にしてはならない悪手であることが分かります。しかし、緩和は実施されます。
総合的に勘案とのことですが、データ重視ではなく、とにかく緩和したい希望が重視されているのがよく分かる内容になっています。
で、ここまで数字を突き付けられても、
・自主隔離を守らない入国者(逃亡者)
・空港にお迎えに行く国内居住者
・隔離期間を一緒に過ごしているのに出歩く国内居住者
などは次から次へと出てくるのでしょうね。
あーあ、今年も春休み、夏休みに続いて年末年始もなくなるのかなあ。
入国者の皆様、自主隔離を頑張ってください。
STAY HOME NOW, FLY LATER