◇空港検疫三割検疫すり抜けはウソ 本当に把握が必要なすり抜け人数とは
先週12月17日に行われた参議院予算委員会で、空港検疫で新型コロナウイルス陽性者が三割すり抜けたとして話題になりました。しかし、この「3割検疫すり抜け」は実は嘘です。
予算委員会では、12月6日から12日までの入国者のうち検疫での検査で新型コロナウイルス陽性と判明したのは89人で、このうち到着時検査で判明したのは60人、3日目以降の検査で判明した陽性者は29人であるとの話が出ました。
単純計算で約3割が入国3日以降の検査で陽性というわけで、予算委員会ではセンセーショナルに「3割検疫すり抜け」との発言があり、報道でも大々的に報じられました。
しかし、この「3割検疫すり抜け」というのは実際には嘘です。
入国3日以降の検査で陽性の人は、空港検疫の管理下で陽性となった人数なので、空港検疫をすり抜けて日本国内に入り込んでいないからです。ギリギリとはいえ検疫でしっかり捉まえられた人数なので、「検疫すり抜け」どころか立派な「検疫捕捉」事例です。
「検疫すり抜け」とは、空港検疫管理下で陽性と確認できず、自宅等での自主隔離などで日本国内に入り込んだ状態で陽性と判明するパターンのことです。都道府県管理に移った後の陽性事例です。
89人のうち29人という人数からは、入国時検査で陽性と判明する人数の少なくとも5割程度の人数が、3日目以降に発症するということが分かっただけです。
・入国時検査での陽性人数 60人
・強制隔離後検査での陽性人数 29人
・上記以外の入国14日目までの陽性人数 ○○人←最も必要なデータはこれ!
都道府県の発表は、全数が出されていません。そして各都道府県ごとにバラバラです。
当サイトでも一部の都道府県の発表などをこれまで何度か取り上げてきましたが、実態は全く分かりません。国内に入り込んだ後、入国14日以内に各都道府県で判明した陽性者が何人いるのかは全く闇の中なわけです。
これまでの配信記事はhttps://johokotu.seesaa.net/article/484641300.html
本当に必要な情報は、入国時検査で捉えられない陽性者が本当に、入国時検査の人数の5割程度で済んでいるのかどうかという点です。これが分かると、入国者に本当に必要な対策が分かってくるからです。
例えば、、、
・入国14日以内に各都道府県で判明した陽性者が何人いるのか分かれば、入国者のうち本当の罹患率は何%なのか分かります。
空港検疫の数値だけで考えると、今日までの7日間は0.8%程度でした。本当の罹患率が大して変わらなければ、強制隔離はいらないでしょうし、大きな乖離が出るようであれば、やはり強制隔離は必要という判断が出来ます。
そして、そういうすり抜け人数が多いのであれば、検査をやはりPCRにした方が良いかどうかといった議論もできるようになります。
・入国14日以内に各都道府県で判明した陽性者が入国何日目に発症or陽性になったか分かれば、本当に必要な強制隔離期間が分かります。
これまでの空港検疫の数値だけで考えた結果は、以前にも取り上げました。
https://johokotu.seesaa.net/article/481528559.html
強制隔離期間は最大でも10日間しかなく、対象となったのは一握りの国だけなので、実態からかけ離れている可能性はあります。それでも、できるだけ6日間強制隔離、どんなに短くても3日間強制隔離が必要であることは明白でした。各都道府県で判明した陽性者のデータもあれば、最適な強制隔離期間が分かりますし、10日間で隔離を開放する妥当性も検証できます。(少なくとも全員14日間自主隔離なのですから、例えば6日間強制隔離終了後に万一例外的に漏れて陽性になったとしても、国内には広がらないはず)
ただなあなあと忖度で強制隔離期間を恣意的に設定するのではなく、データに基づけば、文句を言う人も減るでしょう。
・入国14日以内に各都道府県で判明した陽性者がどの国から入国した人か分かれば、国ごとに本当に必要な隔離期間が分かります。
例えば、入国直後に陽性になりやすいのならやはり現地の状況が悪いとなるでしょうし、3日目ぐらいだと空港、6日目ぐらいだと機内感染がより疑わしくなります。例えば、今空港検疫では米国の感染者数が爆増していますが、別の国がすり抜け陽性で爆増しているのかもしれません。そういったことは全く分かりません。
予算委員会で、すり抜け問題を取り上げるのは良いのですが、なんだか、本当に議論が必要なところからずれてしまったのは残念な限りです。
一般ピープルが唯一分かっているのは、空港検疫の発表内容です。私も閲覧者の皆さんが行動する際の一つの判断の一助になればと、この発表内容を基にして、色々な分析(分析になっていないレベルの低いの情報かもしれませんが、、、)をこのサイトで書いてきています。
しかし、この発表内容だけでは、すり抜けの実態はなかなか見えません。
だからこそ、国会議員の皆様には、それ以上の内容で高度な検討をしてもらいたいものです。
入国者は14日間は他人と一切接触しないことになっています。
いまの日本でここまで外的影響がない集団はほかにありません。分析の仕方によっては、人種での差や国での差、航空便の詰め込み状況の差なども分かる可能性があります。入国者の陽性状況をきちんと分析することは、コロナ対策に役立てる最も近道である可能性があるわけです。
憲法違反と強い批判を言われるほどの行動制限を実質強制的にかけているわけですから、こういったデータをしっかり分析・活用しないのは、制限を頑張った入国者に対してもあまりに失礼。そうやって多くの犠牲の上で得たデータをなんとか活用してもらいたいものですね。
※予算委員会では詳しく触れられなかったため、「入国3日以降の検査」に自主隔離中の人が含まれているのかが謎です。しかし、今日時点で、12月6日着〜12日着の空港検疫発表の陽性者は全部で93人で、そのうち強制隔離中陽性と思われる人は34人となっています。予算委員会での話の人数にそれぞれ4人増えているだけなので完全に合致しています。このため、予算委員会での話は、到着時検査で60人、強制隔離後検査で29人いたという内容であることはほぼ確定です。
最初報道に接したとき、「3割すり抜け」だと、入国する陽性者の6割は入国時検査で陽性と分からないということになるので、これはヤバいと思いました。しかし、実際には、そうではないことが分かります。
■参議院インターネット審議中継←12月17日参議院予算委員会で検索し5時間20分経過前後より答弁あり
https://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/index.php
2021年12月24日
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