◇空港検疫 オミクロン株特別対応の同一便搭乗者全員濃厚接触者扱い終了
厚生労働省は28日、新型コロナウイルス変異株オミクロン株保有者に起因する同一便搭乗者全員濃厚接触者扱いを終了しました。
■オミクロン株も濃厚接触者は前後2列に戻る
世界各地で猛威を振るっているオミクロン株。水際対策の一環として、オミクロン株と確認された人と同一便に搭乗した人は、全員を濃厚接触者とし、全員を療養施設へ入れる特別対応が行われてきました。これが、28日から、この濃厚接触者の範囲が、オミクロン株保有者の搭乗していた座席前後2列に戻された模様です。
■当初予定よりも早く終了も、根拠は逆に不安になる内容
オミクロン株は、その実態が不明確だったことから、当初12月31日迄の限定で様々な特別対応を実施しています。今回の濃厚接触者認定・療養施設待機の特別対応もその一つでした。
特に先週から、空港検疫での陽性事例は超爆増しており、今こそ特別対応が必要なタイミングですが、そのような感染状況は完全無視し、今回の特別対応は当初予定よりも早く終了することになりました。
しかも、今回の強化終了の根拠として示されたのは、「飛行機の同乗者が陽性となる割合は極めて低く、空港検疫後に感染が判明する割合と、ほぼ同水準であるとの知見が得られた」(NHK報道より)という非常に不安になるものでした。
この発言からすると、空港検疫後に感染が判明する割合は、陽性者全体の1割強なので、さらにプラスで濃厚接触者による1割強が加わることになります。先週の入国時検査+強制隔離後検査での罹患率は0.9%ほどでしたので、入国者の罹患率は1.1%ほどに跳ね上がるということを宣言したことになります。
1%は100人1人感染ということですから、日本の人口に照らし合わせれば、治療中患者が120万人ほどいるのと同じになります。第五波のピークのころの日本の要治療患者は20万人ほどだったので、なんだか、考えれば考えるほど、逆に不安になってしまう発表となりました。
■一年半経っても何も準備されない施設不足
今回のオミクロン株に対する特別対応を巡っては、強制隔離の為の施設不足と送迎の大変さが露呈しています。
感染状況は全く関係なく、施設不足に起因して、強制隔離対象者の自宅など待機を特別に認めるなど、「規制を強化する」と発表する中で規制を緩和する措置が次から次へと実施されてきました。
国は昨年初夏の時点で、1日1万人の入国者に昨年夏までに対応すると豪語していました。しかし、1年半経っても、施設の確保・新造などはほとんど行われず、結局1日3,500人の入国+一部の国だけが強制隔離という状況でも、物理的な理由からほとんど対処できずに、ウイルス密輸を許してしまう事態となりました。
また、全国知事会も、昨年夏には入国者の各都道府県への負担分散を発表しています。それでもいざ各都道府県に任せると、結局回らないという事態になってしまいました。
オミクロン株かどうかは、最終後数日経ってから出ないと分かりません。このため、今回の措置による濃厚接触認定は、入国から数日経ってからになります。日本全国三々五々散らばった一人ひとりに連絡をし、療養施設へ入ってもらうという非常に手間と時間と金のかかる手順を踏んでいました。
初めから、日本全国に待機施設を設けて、入国者全員を入国者の居住都道府県割合で分散して14日間強制隔離にしていれば、このような手間も時間も金もかからないのに、なぜか、全員強制隔離は実現しないまま、また根拠も乏しいまま水際対策の緩和が行われています。
■五輪では騒いだ報道機関が全く騒がない不思議
今回の濃厚接触者の緩和で非常に不思議なのは、報道機関が全く騒がないことです。
今夏に行われた東京2020大会では、「エアポートイズデンジャラス」などと叫び、濃厚接触者を全員隔離しろと大合唱だったのに、今回は、危険であるとする報道機関がほとんど見られません。
どこからどう見ても空港検疫での陽性事例確認数は今の方が断然多いですし、入国後に管理されていない入国者の数も今の方が断然多いです。そして、空港内でも五輪時に設けられていたような専用通路を通る人は皆無です。
どこからどう見ても、五輪時よりも今の方が危険なのに、そのあたりを指摘する報道機関がいなくなったことは本当に不思議です。
■同一便搭乗者全員を濃厚接触にする根拠
ところで、同一便搭乗者全員を濃厚接触にすることに「やりすぎ」という声が結構多いのですが、実はきちんとした根拠事例があります。
新型コロナウイルス感染症発生前は、空気を通じて拡散する感染症への対応として、濃厚接触認定は、当該者の前後左右2席(2-row rules)が世界的に一般常識でした。そこから考えると、今回緩和された前後2列でもやりすぎと感じるのかもしれません。
しかし、COVID-19を巡っては、この2-row rulesを超える範囲での感染伝播事例が多数報告されています。そのうちの一つが、既に昨年3月には日本でも確認されています。
過去に当サイトでも取り上げていますが、国際線など比較にならないぐらい短時間飛行(わずか2時間)の搭乗で、機内全域に広がっている事例があります。そして、機内クラスターとみられる事例も多数確認されています(正式発表がないので、実態は闇の中です)。
濃厚接触の定義を緩和するは構わないのですが、その前提として、上記事例をひっくり返すような、安心できる根拠(昨年4月以降運航した国際線到着便○○便中機内クラスターの発生した便はわずか○○便で合計わずか○○人しかいない、みたいな根拠)を示してもらいたいものです。
・航空機内集団感染(クラスター感染) 少なくとも四次感染まで確認 予防には情報提供が重要であることが明らかに(2020年11月19日配信)
https://johokotu.seesaa.net/article/478570058.html
・機内クラスター疑い事例が50件を超える ―入国後隔離の重要性改めて明らかに―(2021年9月13日配信)
https://johokotu.seesaa.net/article/483383807.html
■14日間隔離で他人と接触しなければ良いだけ
何はともあれ、濃厚接触者の定義をどうするかは全く関係なく、入国時に全員が誓約するように、14日間の隔離中に、家族を含めて日本国内居住者と接触しなければ、理論上は日本国内にウイルスはほぼ拡散されません。
「機内クラスターがあったなんて、ほとんど聞いたことがない。あるとしても非常に稀な事例でしょ」と安心しきっている皆さん。機内感染は頻繁に起こっているとみられます。航空利用の際は充分注意していただき、利用後の14日間隔離をしっかり行っていきたいですね。
■後藤大臣会見概要(厚労省公式サイト)
https://www.mhlw.go.jp/stf/kaiken/daijin/0000194708_00408.html
→なぜか12月27日の大臣会見は公式サイトにアップされないので、大臣が言及した内容は報道以外では全く分からないです。
■オミクロン株感染者と同じ飛行機の乗客 濃厚接触は“前後2列”(NHK公式サイト)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20211227/k10013406571000.html?utm_int=detail_contents_news-related_001
2021年12月29日
この記事へのコメント
コメントを書く