◇入国後隔離の重要性をもう一度
空港検疫での陽性事例が超爆増する中、オミクロン株主流国について入国後隔離期間が10日間に短縮されました。これを機に、入国後隔離の重要性をもう一度再確認しておきます。
■なぜか勘違いされている隔離期間
ここで突然クイズです。
2022年1月15日時点、米国から入国する人の待機期間(いわゆる隔離期間)は次のうちどれでしょうか?
(1)米軍は米軍基地と言う自宅に戻れるから実質無い、0日。
(2)全域が入国後3日間と聞いたぞ。
(3)ハワイとか7地域は入国後6日間で、それ以外の地域は入国後3日間だよ。
(4)確か首相は渡米帰国翌日から動き回っていたから、0日に決まってる。
答えを選べましたでしょうか。
正解は、、、、、、
(3)と言いたいところですが、実は違います。
正解は、「入国者の隔離期間」は「10日間」です。
そう、「(1)〜(4)に正解はない」が正解でした。
(1)〜(4)で言及しているのは、厚労省が指定する施設での待機(いわゆる強制隔離)の期間であって、隔離期間ではありません。
正しくは、「7地域は6日間強制隔離・4日間自宅等隔離、それ以外の地域は3日間強制隔離・7日間自宅等隔離(ただし、米軍はなんでか10日間自宅等隔離を認められている模様)」というのが、細かく言うと米国からの入国者の隔離の実態です。((1)や(4)はクレームを書きたかっただけです、、、)
報道などでも、政治家の発言などでも、この隔離期間について、強制隔離期間を隔離期間と勘違いしている発言をよく目にするのですが、それは間違いです。
この入国後隔離は2020年春以降、変わることなく継続されてきた、検疫の肝になる部分です。今回、この期間が初めて14日から10日に短縮されたのですが、大して話題になっていないですね。
隔離期間の最大のポイントは「どこの国からの入国でも、どの人種でも、どの国籍でも、一律平等に全員が10日間であること」です。
「強制隔離期間を終えれば、それで隔離は終了」と考えている人が多いのは、非常に危険です。
■なぜか勘違いされている隔離期間に守ること
さらに、入国時に守ると宣言する誓約事項で、危険な勘違いをされている点があります。
それが隔離期間の10日間に順守すべきことの中身です。
勘違いされているのは大きく二つあり、その一点目は「他者との接触禁止」についてです。
厚労省公式サイトの「水際対策に係る新たな措置について(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00209.html)」というページには、「●10日間(措置(25)に基づく指定国・地域は14日間)の公共交通機関の不使用、自宅等での待機、位置情報の保存・提示、接触確認アプリの導入等について誓約いただくことになります。」と書かれています。
しかし、ここには、誓約書にも記載され、最も重要な点である「他者との接触を行わないこと。」がなぜか記載されていません。
だから、入国者の中に気が付いていない人もいるのかもしれません。入国した空港で、日本に居住する家族と接触する不思議な人たちも出ているほどです。で、その人たちが日本国内でウイルスを撒き散らすという事例がずっと続いています。
この点は、誓約の中でも最も重要な点です。もしも誓約の中のこの点以外が守られていなくても、この「他者との接触を行わないこと。」だけは確実に守っていれば、日本へのウイルス持ち込みはほぼ防げるからです。
この点の勘違いは非常に危険です。
もう一点大きな勘違いをされているのが「外出禁止」についてです。
「買い物や散歩等に行って良いと検疫から口頭では言われたから、行っている」という人がいます。
こういう人に対して、国内にいる人間は「危険だ」と反発し、入国者は「権利だ、自由だ」「最低限の外出は認めてもらわないと生活物資も確保できない」などと反発しています。
ところが、誓約上はそもそも外出禁止という項目は実はありません。求められているのはあくまで「自宅等での待機」であって、「外出禁止」はないんです。つまり、入国者の反発は当然です。
ただ、ここには少し気を付けなければならない点があります。この外出許可とも言える内容について、誓約事項を守ることが大前提になっていることを分かっていない入国者が非常に多いです。
入国者の多くは、この内容を、「自宅等での待機」等の誓約事項を守れるのであれば、屋外に出ること(=外出)は可能だと理解していません。このため、誓約事項に違反した外出が後を絶たず、問題になってしまっています。
「誓約を守れるのであれば」とは、例えば、以下のように捉えれば、結構自由な外出が可能なことに気付けます。
例えば、イングランドやウェールズのように土地全てが国王の所有物なのであれば、国王は、全土を入国後10日間自由に行き来できるということになります。(だって、どこへ行っても自宅等ですから、自宅等で待機出来ているんですもん。)
認められはしないでしょうが、例えば、入国時の申告で、滞在地住所を「日本国東京都大田区」などと書いて認められれば、大田区内どこでも行き来できることになります。(「自宅等外への外出」ではなく「自宅等」の中の屋外部分に外出しただけということ。)
流石に住所はゆかりのある場所を番地まで正確に書けと言われるでしょうが、これを応用すると、例えば、「東京都千代田区千代田1-1」とすれば皇居を隔離生活圏として指定できるはずです。皇居を本籍地にしている人は多いと思うので、その場合、さすがに本籍地を滞在地として否定されることはまずないはずです(パスポートに情報も入っていますしね)。
ここまでは冗談ですが、、、。
よくよく考えてみると、滞在地住所をコンビニ付きホテル等にすれば、入国時には分からない部屋番号までは指定できないのですから、ホテル全体が滞在地となります。となれば、滞在する部屋から「外出」してホテル内の店舗へ買い物に行ったり、ホテル内の庭園へ散歩に行ったりすることは可能なわけです。
ですから、入国時の検疫官に「買い物や散歩程度外出しても良いですか」と質問すれば、当然「YES」と回答があることになります。そもそも検疫官からしてみれば、「自宅等待機」に納得して誓約をする以上、自宅等で申請した場所以外に外出するという行為はないという前提がありますから、質問の「外出」の捉え方が異なっています。
「自宅等待機」の誓約を守るなら、上記のような方法でしか、外出は実質不可能です。
そして、先ほども書いたとおり、誓約の中には「他者との接触を行わないこと。」が含まれています。
極論になりますが、この「他者との接触を行わないこと。」という点だけを守るのだとすると、熊しかいないような山奥などを滞在地に指定すれば、外出するのは、普通に可能というわけです(でも「自宅等待機」の誓約を守ろうとすると、この外出は自宅等の山以外実質不可能になります)。
つまり、「外出するのは禁止はしていないけど、他者との接触禁止は大前提。散歩や買い物に行くのは止めないし、止められないけど、その際に他者と接触してはダメ。」ということになります。
こうやって考えると、実質的に、外出できる範囲は、
「行ける買い物は、自宅等敷地内にある無人店舗だけ」
「行ける散歩は、自宅等敷地内にある他人がいない山川海や庭だけ」
(当然行き来するときに他人がいる公共空間は通れません)
ということになります。
こういう時、自宅に裏山や無人店舗を持っている人は、買い物も散歩もできて超羨ましいですね。
この、「他者との接触を行わないこと。」について、「外出禁止の特例的な部分(五輪の時の15分ルール)みたいな部分が認められているから、他者との接触も認められるはずだ」と主張する人も多いです。しかし、そういう論法は、そもそもおかしいことになります。
外出禁止は元々求められていないから特例でもなんでもない一方で、「他者との接触を行わないこと。」は自分で誓約した内容ですから当然守るべき事項だからです。
まあ、自宅等での待機を守れれば、他者と接触しなければ、要は誓約事項を守れるなら、基本的になんでもOKなわけですから、自由はそれほど棄損されていないという解釈をしているのでしょう。
隔離期間に守らねばならない最大のポイントは「どこの国からの入国でも、どの人種でも、どの国籍でも、どんな用事がある人でも、一律平等に全員が他者との接触を行わないこと。」です。
「同居の家族は同じ自宅等内にいるんだし、外出が仕方なく認められているのと同じように、接触しても仕方がない」と考えている人が多いのは、非常に危険です。
■議論の中心はなぜか検査方法
そして、さらに多くの人が勘違いしているのが、水際対策の方法で重視すべき点です。
国内でのオミクロン株感染が急拡大する中で、「水際対策が甘すぎたからだ」という批判が相次いでいます。
検索サイトのリアルタイム検索で「空港検疫」などと打ち込むと、水際対策の甘さを指摘する声が非常に多く上がるようになりました。一時期に比べると人々の関心が水際対策に向いていることが分かります。
ところが、その中で半分くらいは「検査方法が抗原検査だからすり抜けを許した」と言う意見です。しかし、この点は、いま議論すべきことではないです(強いて議論すべきと言うなら、それは1年半前の話)。
一方で、隔離に関して意見をしている人は、ポツポツとしかいません。人々の関心が感染拡大防止とは全然別の方向に向いてしまっています。
確かに、現在の入国時検査は抗原定量検査を採用しています。2020年7月以降順次PCR検査から変更され、当サイトでも検査結果が怪しい点は取り上げました(https://johokotu.seesaa.net/article/476960393.html)。
しかし、一応、厚労省では、PCR検査と抗原定量検査で結果に大きな差はないことを確認したことになっています。この年末年始の空港検疫の結果を見ると、かなりの人数の陽性事例を捉えたという実績も出ています。
強いて検査方法の問題を取り上げるのなら、抗原定性検査についてでしょう。
3日間や6日間強制隔離対象者でオミクロン株対象国でない場合で自宅等待機に切り替えができる特例を使う場合に用いられる3日目・6日目の検査は、抗原定性検査です(https://johokotu.seesaa.net/article/484876644.html)。
抗原定性検査は、無症状だと意味がない検査とされています。これについては批判があっても良いと思うのですが、そこを突っ込む人はなぜかほぼいないんですね。
水際対策を批判する人の指摘は本当に謎過ぎます。
で、そんな細かい話をする以前に、そもそも、「空港検疫で最も重要なのは検査ではない」という視点が多くの人から抜け落ちています。
検査は、その時一瞬の状況を確認するだけ。当然PCRでも抗原定量でも偽陰性はあり得ます。
機内で他人からウイルスをもらえば、PCRでも入国時検査で捉えることなどほぼ不可能です。
つまり、すり抜けは絶対に一定数出ます(現状は1割〜2割すり抜けているというデータが出ています(https://johokotu.seesaa.net/article/485092270.html))。
そもそも、研究結果などでも入国者が発症するのは入国3〜5日後がピークであることが示されています(https://johokotu.seesaa.net/article/483046592.html)。また、空港検疫の強制隔離後陽性の結果を分析すれば、入国後6日目あたりにこそ検査が必要であることが分かります。
(↓これまで記事にした関連する分析)
・2021/05/02 空港検疫全検(2)隔離重要明白
・2021/09/19 強制隔離止ですり抜け明らか1
・2021/09/20 強制隔離止ですり抜け明らか2
・2021/09/20 強制隔離止ですり抜け明らか3
・2021/09/23 強制隔離止ですり抜け明らか4
入国時の検査は万能ではありません。
そんなすり抜けた人たちが国内にウイルスをまき散らかさないようにするには、結局「他者と接触しない」しか方法はありません。
検査より重要なのは、結局、「隔離」です。
そもそも検疫と言う言葉自体、語源が「40日」で、これは40日間隔離した話から来ています。そう、検疫とは、そもそもが検査ではなく、「隔離」することです。
もちろん、ウイルスを持っているかいないかを判定するために入国時に検査するのは必要ですが、あくまで、そこである程度ふるいにかけられれば良いだけです。
そう考えると、検査について自体も、入国時に検査することよりも、10日間隔離後、隔離を卒業するために検査することの方が本当は大事なはずですが、それはいつまで経っても実現しません。重要度は、「隔離」>「検査時期」>>>>>>「PCRか抗原定量か」なのに、「PCRか抗原定量か」について批判する人は多いのに、「隔離」について指摘する人はほとんどいないという不思議なことになっています。
米軍基地に関しても、米国の飛び地である米軍基地に直接入った米軍人を隔離しろ!と声高に叫ぶのに、民間機で民間空港から入国した米軍人が指定された強制隔離をせずに、自宅等に当たる米軍基地へ即日入っていくことを批判する人は皆無に近いです。
水際対策を批判する人の指摘は本当に謎過ぎます。
本来議論すべきは検査方法ではなく、隔離方法なわけです。
水際対策最大のポイントは、「どこの国からの入国でも、どの人種でも、どの国籍でも、どんな用事がある人でも、一律平等に全員が他者との接触を行わないこと。」=「隔離」です。
「入国時に検査して陰性なんだから自由解放!隔離なんて適当で良いだろ」と考えている人が多いのは、非常に危険です。
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結局、ウイルスの国内持ち込みを防ぐには、
・「入国後10日間他者と接触しないこと」の徹底
をすることが、非常に大事であることが分かります。
よく、水際対策は蛇口の水道水に例えられます。
水道水は、川から採水後、すべての水を浄水場を通して上水に変化させます。薬品を入れてきれいにするところもありますが、地域によっては、ただ不純物を沈殿させるだけのところもあります。その際、例えば一般細菌や体に毒な化合物等はゼロになっているわけではありません(浄水場の基準の場合、大腸菌だけは「検出されないこと」ですけど、、、)。強制隔離を3日間に限定しているのは、沈殿途中の水を使っているといった感じでしょうか。
こういった水道水と同じように、水際対策についても「持ち込みコロナのゼロ(ゼロコロナ)」を目指した「持ち込みコロナの最少化(レスコロナとでも言うんでしょうか?)」ではダメなんでしょうか。
そして、水道水を今の水際対策に照らし合わせれば、検査時期一つ取っても、採水時の検査(入国時検査)だけ行い、水道水供給時に検査を行っていないという不思議な対応であることが分かります。
(ただし、水俣病やイタイイタイ病のようなこともあり得ますから、採水時検査や場合によっては採水の中止もかなり重要です。実際、水道水は、土砂が多い洪水時には採水を止めたりします。)
こうやって考えてみると、
持ち込みコロナの最少化にするのに必要なのは、
・そもそも採水を止める「入国禁止」or採水の厳選
・沈殿に当たる「入国後10日間他者と接触しないこと」を最後まで行うこと
・最適な水質検査は、供給時検査に当たる「隔離卒業検査」
といったところでしょうか。
1点目は72時間前の検査証明所持でクリアしていると捉えられており、空港検疫では2点目・3点目をするというわけです。
水道水と同じように、10日間隔離+隔離卒業検査をしても、完全にウイルス密輸を防げるものではありません。
それでも、入国時検査をPCR検査に変えるだけ、3日間だけ隔離するだけよりは、はるかにウイルス密輸を低減できます。
オミクロン株流行国なら隔離期間が10日間に短縮された、せっかくの機会ですので、もう一度入国後隔離を行っている意味とその重要性を考えてみませんか。
2022年01月16日
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