◇中国からの陽性率8%は本当に多いのか、規制強化は妥当なのか?
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックに伴う水際対策で、中国に対する対応が次々に強化されています。この中で極めて異例なことに6日、即日で週間検体数が発表され、罹患率が8%であることが判明しました。
これは多いのか、中国からの入国者にだけ始まった規制強化が妥当なのか、考えてみます。
・機内全員濃厚接触となる3%と比べると?
6日に発表されたのは週間検体数と週間陽性者数です。中国からの入国者に限定して発表されました。
12月30日着〜1月5日着までの7日間で
・検体数4,895人、陽性者数は408人
と発表されたため、
・罹患率は8.34%
と計算できます。
日本では9月以降検体数の公表を止めています。加えて、これまでどんなに罹患率が悪くても三週間遅れでしか検体数が発表されなかったのに、今回は即日発表されています。極めて異様で異質で異例の事態です。
で、出てきた結果が「罹患率8.34%」でした。
機内の全員が濃厚接触となるのは3%ですので、それを軽く超えています。
しかも、この数値は抗原定性検査での結果とみられるため、実際には更に多くの陽性者がいると推定されます。
超異常状態であることは一目瞭然で、今すぐにでも陰性者も含めて強制隔離すべき水準と言えます。
・これまでの空港検疫対応と比べると?
罹患率8.34%は果たして高い数字なのでしょうか?
これまでの空港検疫対応からと比べてみると、実はこの数値、とても微妙な数値です。
空港検疫の特定国全員検査結果を見ると、オミクロン株より前は、空港検疫が最悪だったときでも1.2%です。しかし、オミクロン株以降は、全世界で平均すると、昨年1月に6%台を叩き出しています。
平均で6%ですので、特定国だけ見ると、8%になる国が出るのは、充分にあり得る数値です。
実際に国別で見ると、入国者数が少ないと1人陽性者が出ただけで10%を超えるので、そういう国を除いてみます。
入国者数が多い国に限ってみても、ずっと陽性者が出続けている米国は昨年1月に出た8%台が最悪。欧州の一部の国はポツポツ10%超を記録しています。南アジア3か国(インド、ネパール、パキスタン)は昨年1月に、数週間連続で20%〜30%超を記録したこともあるほど。
8%超は普通にあり得ます。
注意したいのは、そんな中でも、中国はこれまで1%強が最悪であったこと。
中国に限って見れば、ずいぶん爆増した印象です。
しかし、空港検疫全体で見ると「8%位出ることもあるね」という数値です。
今回の中国から入国者への対応は、
・ウイルスがそれほど危険ではないとされている(だからこそ入国規制が緩和されている)頃
・直前の陰性証明提出無し(明日からは必須に変更)
・全員検査
・強制隔離なし
・航空便就航規制あり/輸送人員規制なし
・規制実施開始まで短時間
です。
今回の中国と同じ8%台ですと、昨年1月の米国が最悪だった時期と同じですが、その時の米国からの入国者は、
・まだウイルスが危険とされていた頃
・直前の陰性証明提出有り
・全員検査
・3日間強制隔離
・航空便就航規制なし/輸送人員規制あり
・規制実施まで長時間経過
でした。最終的に実施された規制は今の中国よりきついものの、規制強化まではオミクロン株確認から1か月程度・空港検疫での陽性事例が目に見えて増えてから2〜3週間かかりました。
さらに、昨年1月南アジア3か国が最悪だった時期は30%超を記録しています。その時は、
・まだウイルスが危険とされていた頃
・直前の陰性証明提出有り
・全員検査
・途中から3日間強制隔離
・航空便就航規制なし/輸送人員規制あり
・規制実施まで長時間経過
でした。米国などと同じく、最終的に実施された規制は今の中国よりきついものの、こちらも米国同様になかなか水際強化がされていません。例えば、ネパールは10%を超えても3日間強制隔離がなかなか始まらず、オミクロン株確認から2か月程度遅れでの水際強化でした。
日本の空港検疫では8%「程度」は、素早く水際対策が強化されてこなかった過去があり、今回も、全員検査だけという柔々対策(航空会社に対しては就航規制という極めて厳しい対応)で終わっています。
水際対策の遅々対応はもはや日本の十八番ですから、今まで通りと言えば今まで通りの通常対応と言えます。
今は、ウイルスはそれほど危険ではないとされている(だからこそ入国規制が緩和されている)ので、そう単純比較は出来ませんが、
・今の方が規制内容は甘い
・今の方が規制開始のスピードは早い
・今の方が規制対象が限定的
といった印象です。
このあたりの、規制設定の曖昧さや、今回だけ色々公表している点は、どうにも不公平感が漂います。
そもそも中国以外も全員検査したら普通に8%位陽性者出そうですし、、、。
なんだか大変だ〜と言わんばかりに異例な対応で数値を公表して、危機感煽りまくってますが、結局この程度の対応しかしないのなら、数値を慌てふためいて公表するのは逆効果な気がするのですが、、、。
今回、この8%という数字について、各メディアで大々的に報じられ、「今すぐ入国停止を!」といった意見も結構多い印象です。
でも、昨年1月の時など、空港検疫の罹患率を取り上げる人はほとんどいませんでしたし、「今すぐ入国停止を!」といった意見も今より少なかった印象です。
こういう点で、今回の規制は、感情論だけに走った人種差別的に見えてしまっています。
・日本国内と比較すると、、、
罹患率8.34%は果たして高い数字なのでしょうか?
続いて日本国内と比較してみましょう。
入国者は日々母数が変化し、日々新たな検体が送りこまれてきます。全員検査の最中は、出てくる罹患率はその集団の感染割合になります。つまり、比較する日本国内の数字は、日々の新規感染者数ではなく、ある日の感染者数(治療中の人数)になります。
そして入国者は日々母数が変化し、検査対象が全員検査になっています。これと比較する場合、母数は人口になります。
よく、新規感染者数/検体数で出した陽性率と比較する人が多いのですが、これでは比較としては誤りです。
で、その計算をすると、日本国内の場合、最も陽性者数が多かった最悪状態の昨年8月頃でも2%弱しかないんです。
つまり、8%という数字は、国内の最悪の時の4倍超という超異常状態であることが分かります。
超異常状態であることは一目瞭然で、今すぐにでも陰性者も含めて強制隔離すべき水準と言えます。
日本国内は未だに2類相当の危険なウイルスであると認定し、(意識して外出頻度を減らしている人がどれほど残っているのかは分かりませんが)不要不急の外出自粛が要請されています。しかし、単純比較で日本の最悪時の4倍超の陽性+自動的濃厚接触の集団は、観光でもウエルカムとなっています。
日本国内に住んでいる立場からすると、ただ検査するだけなのは、入国者優先に見える異常な対応です。
これが許容され、危惧する声がほとんど挙がらないのだから、本当に日本は不思議です。
中国は8日から往来の規制が大幅に緩和されます。第三国との往来も一気に増えるでしょう。香港との行き来も容易になるなど、中国以外の直行便から日本に入国する人も大幅に増えそうです。
中国から、あるいは中国直行便からの入国だけを規制しても抑えきれません。
少なくとも、香港、澳門、韓国等の東アジア路線、タイ、シンガポール、ベトナムといった東南アジア路線からの入国も規制しないとほぼ意味なしになる可能性が高いです。
可能であれば新しい変異株が猛威を振るっている米国なんかも入国規制が欲しいところですが、全然規制強化の動きはありません。
超異常状態であることは一目瞭然で、今すぐにでも陰性者も含めて強制隔離すべき水準と言えます。
しかし、なぜか極めて異例な対応で素早く数字公表して危険だと煽る割に、水際対策ではこれまでより対応が早過ぎる一方で中身は甘過ぎるといった印象でしょうか。
今回の規制に対する強烈な違和感は、慌てふためいている割に中身が甘過ぎることや、国内対応との違い、これまでの水際対策との違いなどから来てしまうのでしょう。もう少し一貫した対策が出来ると、この違和感も解消できるのかもしれません。
皆さんは罹患率8.34%が多いのか、規制を強化すべきか、強化内容が妥当かをどう捉えますでしょうか。
2023年01月07日
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