※本旅行記は2023年12月に訪問したものを2024年6月に公開したものです。
■2023.12 東京国際・鹿児島・沖永良部・徳之島の旅行後
今回の旅では、沖永良部→徳之島間でアイランドホッピング便を利用しました。徳之島で降り立つと、多くの人が奄美へ乗り継いでいきました。
そこで、乗り継ぎ便について軽く取り上げてみます。
■離島だけではない乗り継ぎ路線
日本人は直行便思考が強く、乗り継ぎ便はあまり好まれません。乗り継ぎがあると、ツアーなども激減してしまいます。
例えば、鉄道で言えば、北陸新幹線があることから、東京から金沢までのツアーは結構たくさんありますが、福井までとなると激減してしまいます(3月に福井まで新幹線が延伸するので、福井ツアーが徐々に増えています)。
航空の場合、国際線などで乗り継ぎは当たり前(例えば、南米行やアフリカ行、ヨーロッパでスペインとかノルウェー行き、アジアならバリ島行き等)ですから、まだ認知度は高いですが、それでも国内線となると、乗り継ぐことへの抵抗感は大きいのでしょう。
しかし、乗り継ぎを活用すれば、直行便では行けないたくさん目的地へ行けるようになります。
今回のアイランドホッピング便のような乗り継ぎ便が設定されている便を見てみると、以下のような路線があります。
・奄美-沖永良部間(徳之島乗り継ぎ)←今回一部利用
・徳之島-那覇間(沖永良部乗り継ぎ)
・奄美←与論間(那覇乗り継ぎ)
また、直行便もあるけど、乗り継ぎ便が設定されている区間として、以下のような路線があります。
・札幌-奥尻間(函館乗り継ぎ)
・那覇-北大東間(南大東乗り継ぎ)
・那覇-与那国間(新石垣乗り継ぎ)
南西諸島に強いJALグループばかりですね。
大手航空会社では、路線数の多さを活用し、上記のような離島路線だけでなく、本土路線でもたくさんの乗り継ぎ路線を提供しています。東京国際(羽田)や大阪国際などにたくさんの路線、便を飛ばしていますから、非常に多くの乗り継ぎパターンがあります。乗り継ぎ便の設定なんて無限大でしょう。
ただ、乗り継ぎ路線一覧のようなものがなく、ひとつひとつ検索をかけて探していくしか、設定状況を知る方法がありません。なかなか一覧にするのは難しいのでしょうが、これでは、乗り継ぎ路線があることに気が付けませんから、乗り継ぎを使おうという発想にすら至らないでしょう。
そんな乗り継ぎ便があることをはっきり明示しているのが、フジドリームエアラインズとスカイマーク(SKY)です。どちらも、時刻表で乗り継ぎ便が設定されていることが書かれています。
特にSKYは、特定路線に格安の乗継運賃を設定し、予約できるようにしています。これが、非常に特徴的です。
大手の場合、乗り継ぎ便に関しては、二区間を一つの料金(乗継割引)で提供しています。一方SKYは、二区間で別々に料金を選ぶようになっており、一区間の運賃+乗継運賃という選び方になります。乗継運賃は、かなり格安に設定されているので、二区間の合計が、直行便が飛んでいたらその直行便一区間ぐらいの運賃になるようになっています。
乗継運賃は、神戸-長崎線、鹿児島-奄美線、那覇-下地島線などに設定されています。例えば、神戸-長崎線には、新千歳、仙台、百里(茨城)、羽田のそれぞれの神戸線から乗り継ぎ設定されており、4つの出発地のどこからでも神戸-長崎線で乗継運賃を使えます。大手のようにすべての区間でひとつひとつ運賃を設定せずに、4つもの出発地から利用者を集めることが出来ています。
こういう示され方をされると、ちょっと乗り継いで、もっと先の目的地に行ってみようか、という気になるのではないでしょうか。
沖永良部から群島の中心地である奄美に行こうとする場合、どこかで乗り継がないと行けません。このため、沖永良部-徳之島線に嫌でも乗ることになります。しかし、新千歳、仙台、茨城から長崎へは、SKYの神戸-長崎線を使わなくても、他にも乗り継ぎパターンがあります。
SKYのやり方は、神戸-長崎線へ誘導する点でかなり優れた設定と言えます。このおかげもあってか、同路線は毎日3往復も維持されています。
SKYの神戸-九州路線への乗り継ぎは、元々経由便として始まっており、設定された直後に利用したことがあります。直行便より時間はかかるものの、神戸空港に寄って神戸のスイーツも確保出来ましたし、悪くなかったですね。
→SKY経由便を使った時の旅行記(最後の広島西へ)
旅行前 http://johokotu.seesaa.net/article/162426194.html
1日目 http://johokotu.seesaa.net/article/162677463.html
■三角運航も乗り継ぎ便の一つの方法
今回利用したアイランドホッピング便は奄美-徳之島-沖永良部-那覇と発着する路線です。この路線は平成30年に新設されたもので、それまで奄美と沖永良部の間は、奄美-沖永良部-与論-奄美と三角運航する便で結ばれていました。
この三角運航も、乗り継ぎ便を設定する際の一つの方法です。
三角運航で最も有名なのは南大東と北大東で、北大東発着便は、那覇→北大東→南大東→那覇か、その逆経路のいずれかが毎日運航されています。前者の場合は北大東から那覇へ行く時に、後者の場合は那覇から北大東へ行く時に、南大東で乗り継ぎになります。
こういう運航にすることで、那覇-北大東間だけでなく、北大東-南大東間の需要も満たすことが出来ます。
自分も南北大東を訪問した際に使いましたが、当時は、乗り継ぎ便の場合でも、直行扱いされていたため、那覇→南大東→北大東と二区間乗っているのに、那覇→北大東と同額で購入できました。那覇→北大東と那覇→南大東は同じ値段なので、南大東→北大東は実質無料のような感じでした。
→南大東乗継した時の旅行記(夏の離島めぐり)
旅行前 http://johokotu.seesaa.net/article/126285865.html
6日目 http://johokotu.seesaa.net/article/127399737.html
このような運航のメリットは、
・A-B、B-Cの2便を運航するだけで、三つの目的(A-B、B-C、A-C)の搭乗者
・(三角運航の場合は)A-B、B-C、C-Aの3便の航空便を運航するだけで、五つの目的(A-B、B-C、C-A、A-C、B-A)の搭乗者
を集められることにあります。それぞれの区間利用者が少ないけれど、便数を維持したいという時にはかなり有効です。
一方で、各区間利用の利用者が多くなったり、偏ったりすると、満席になりやすいというデメリットがあります。
例えば南北大東の路線は、那覇-北大東間、那覇-南大東間は、それぞれそれなりの利用者がいますが、間の北大東-南大東間は単純往復するほどの需要はありません。三角運航することで、満席にはなりやすいものの、北大東-南大東間の移動にも対応できるようになっています。
■空港で乗り継ぎ便をPRするところも
航空会社が乗り継ぎを推進する便を設定するだけでなく、本来は乗り継ぎ便ではない航空便同士を活用して利用者を増やそうとしている空港もあります。
富山や但馬がその代表例です。
両空港とも、自空港から直行できる路線は少ないものの、富山は東京国際(羽田)まで、但馬は大阪国際(伊丹)まで直行便で飛んでいけば、そこから全国各地へ路線があります。そこで、まずは羽田や伊丹へ飛んで、そこでの乗り継ぎを提案しています。
富山は、実質的に日本各地へ旅行できるとPRしています。北陸新幹線の開業で、ドル箱の羽田線の利用者が激減することへの危機感から始まっており、羽田線の利用喚起・便数維持にも繋げています。
但馬は、羽田直行便が期待薄だったことから、特に羽田へ乗り継ぎで行けるとPRしています。
今回沖永良部で乗った乗り継ぎ便は、那覇→沖永良部→徳之島→奄美と、徐々に北に向かうホッピングでした。普通の乗り継ぎ便は、このような一方向の路線に目が行きがちです。
しかし、富山は、羽田へ南東方向に向かったあと、西や北に戻るような乗り継ぎ便を多数提案しているのが特徴です。例えば、富山から鹿児島へ行く場合、西に向かうので、電車で大阪へ出てそこから飛行機や新幹線、といった発想になりがちです。でも、富山から羽田へ出てしまえば、鹿児島へは多数の便が運航されています。一見遠回りですが、最も早く鹿児島へ行けます。
こういった具合に、空港が提案することによって、これまで気づきもしなかった乗り継ぎ先に気付けるというわけです。
富山のこの取り組みは、その後全国に波及し、全国の空港で乗り継ぎ利用のキャンペーンが行われるようになりました。
国内では、羽田や伊丹に多くの路線が集まります。小さな都市同士を結ぶ直行便を運航するよりも、大規模空港への路線を充実させた方が、メリットが増えます。利用者はまずはこれらの大規模空港へ飛べば様々な行き先へ向かうことが出来ますし、航空会社も利用者を集めやすくなります。
しかし、こういった乗り継ぎ便の提案は、まずはダイヤが結構重要です。
今回乗った沖永良部→徳之島線とその先の徳之島→奄美線は、一日一便のそれしか選択肢がないので、どちらかと言うと仕方なくその便に乗っている感じです。
また、10月に天草に行った旅行記で書きましたが、この乗り継ぎ便があまり機能していないように見えるのが天草エアラインの天草-熊本便。富山-羽田線や但馬-伊丹線のように使いやすいダイヤでないと、乗り継ぎ先とも繋げませんから、需要の喚起は限定的になってしまいます。
このあたりの工夫は、よく考えなければなりません。
→天草のダイヤを考えた旅行記(活きづらい天草・熊本)
旅行後 https://johokotu.seesaa.net/article/502381885.html
また、運賃が格安になるかどうかも重要です。
運賃にこだわらなければ、羽田や伊丹を経由すれば、乗り継ぎなんて、好きな便から好きな便に乗り継げば良いだけです。特に大手航空会社は多数の路線を飛ばしているので、乗り継ぎの組み合わせは無限でしょう。
しかし、そういう乗り継ぎ便は、単区間の航空便に連続で二区間乗るだけなので、二区間分の運賃を取られます。それでは、気軽に乗り継いでいこう、とはなりません。例えば、新千歳-福岡間は、直行便なら運賃が7万円弱程度ですが、羽田を経由すると、新千歳-羽田間で5万円弱程度、羽田-福岡間で5万円程度かかります(ちなみに同区間は、大手も乗り継ぎ運賃が設定されているようです)。どうしても経由便を使わざるを得ないならいざ知らず、これでは、乗り継いででも行こうという気は失せるでしょう。やはり需要の喚起は限定的になってしまいます。
先に挙げたSKYは、これを直行便一区間分ぐらいに抑えており、直行の路線を運航しなくても利用者確保に繋げています。こういった工夫も必要になってきます。
アイランドホッピングに限らず、直行便が飛んでいたらその一区間分位の値段になる乗り継ぎ便がもっと設定されることを期待したいところですね。
今回は、軽く乗り継ぎ便を考えてみました。
乗り継ぎをとっておきの選ぶと、もっとおトクの旅行が出来ます。
もっと使いやすい乗り継ぎ便がたくさん設定され、移動の幅を拡げられることを願いつつ、今回の旅を〆たいと思います。
2023年12月17日
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